色々な部門の人やシニアマネジメントの方とビジネスメールをしていて、「あ、この人はやっぱり仕事ができる人だな」と思う瞬間があります。
その一つは、メールの往復数を少なくする工夫を見つけたときです。
メールの往復数が少ないとは、どういうことでしょうか。
私が昔、プロダクトマネジャーの元上司に言われた言葉にこんなものがあります。
「そのメールを送ったら、どんな返信がくると思う? それを想定した中身にして、なるべく少ないメール回数で終わらす方が効率的と思わないか?」
これを聞いた時に、『ああ、なるほど、仕事がデキる人はこういうことを考えて、一つ一つメールを作っているんだなあ』と、目からウロコの経験をした覚えがあります。
その元上司は最後にこんなことも付け加えていました。
「まあ、これは昔の上司の○○さんに言われた言葉で、それ以来、ずっと気をつけていることなんだけどな」と。
プロダクトマネジャーの中で、脈々と受け継がれてきた考え方だったわけです。
それを、この記事で紹介していきたいと思います。
そのメールを送ったら、どんな返信が来ると思う?
私たちは、なぜメールを送るのでしょうか。それはきっと、相手に何らかの行動を起こして欲しいからだと思います。
例えば、新しい提案書を通したい場合は、相手から【提案書の承認】という行動を起こして欲しいわけです。
つまり、メールを送った後には、必ず相手の反応があるわけです。そして、その反応を踏まえて、次のアクションに進んでいきます。
仕事ができる人というのは、単に自分の言いたいことを言って終わりではなく、その先の相手の反応まで計算した上で、メールを送っています。
例えば、わかりやすい例として、社外の取引先と会議を設定する場合を考えたいと思います。
「○○の件について、今度打ち合わせをしたいと思いますが、いかがでしょうか?」
よく見るメールですよね。そんなに違和感を感じないかもしれません。
でも、これだけの内容では、仕事ができる人とは言えないと思います。
なぜなら、
「はい、よろしくお願いします」という返信がきたら、どうしますか?
「それでは、xxとxxの日時でいかがでしょうか」という、候補日決定のメールを送ることになりますよね。
では、もし先方から「いえ、その日程は都合がつきませんので、xxの日程でお願いできませんか?」という返信が来て、
「生憎、その日程は私たちも都合がつかなく、、、」というやり取りになってしまったらどうでしょうか。
会議日程を決めるのに、いったいどれだけ時間をかけているんだ、ということになってしまいます。
一方、仕事ができる人は以下のような先回りしたメールを送っています。
「○○の件について、今度打ち合わせをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
こちらの希望候補日時は、xxとxxとxxです。
もし、こちらで難しい場合は、御社のご都合の良い日時を3つほどいただけますでしょうか。」
上記のように、相手の反応を計算した上で、以下の3つを一つのメールでやってしまうわけです。
- まず会議設定して良いかの確認
- 会議設定OKの場合の、こちらの希望日時の提示
- こちらの希望日時がダメな場合の、相手からの候補日時の提案要請
つまり、仕事がデキる人は、『先方との会議日時の決定がゴールとしたら、そこに行くまでの最短距離を行くには(=少ないメールのやり取りで日時を決めるには)、どんなメールが良いか』と考えているわけです。
こういったメールの構成は、会議設定に限らず、あらゆる場面で有効です。
例えば、先日、アメリカにいる私のグループヘッドからこんな連絡がありました。
メールで確認する時は、Yes/Noの返信で場合分けしたアクションも盛り込むと効率的
私の勤怠管理上の直属上司は日本人なのですが、実務のレポートラインはアメリカにいる上司です。
複雑なグローバル企業にいるからで、ややこしいのですが、その話はさておき、先日、そのアメリカの上司からこんな問い合わせがありました。
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こんにちは、一歩。
この前キミが報告してくれた、xxxカンパニーの請求書の費用だけれども、これは今年度に見込んでいた予算と、どれくらいの乖離があったのかな?
見込んでいた予算と実際の請求費用に乖離がなければ問題ないのだけれども。
もし、予算と実際の費用の乖離が大きければ(特に、想定よりも請求額が大きいようであれば)、その理由を知りたいから教えてくれないか?
メールだけの説明が難しい場合は、会議をするのも大賛成だから、その場合は気軽に言って欲しい。
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いかがでしょうか。
私はこのメールを受け取った時に、正直シビれました。
このアメリカのグループヘッドは、とてもビジネス感覚があるジェントルマンで、こちらの返信を想定したうえで、それに合わせたメールを送ってくれています。
まず、1つ目のセンテンスで、「予算と実際の請求で乖離があったのか、という事実を確認しています。」
そして、私の返信を想定したセンテンスが2つ目と3つ目です。
もし、乖離が小さければ、問題なし(2つ目)。もし、乖離が大きければ、問題があるので理由を知りたいというリクエストです(3つ目)。
そして、さらに配慮されているのが、もう一歩踏み込んだ4つ目のセンテンスです。
乖離が大きい理由を説明する手段として、メール返信だけでなく、会議でもOKだ、という、私の選択肢をあらかじめ増やしてくれている点です。
ここまで、先回りしてくれたメールだったので、私の返信はとても楽でした。
簡単にメールでも状況を説明した上で、「もう少し詳細を話したいから会議設定するよ」と言って、すぐに打ち合わせを設定しました。
このように、何かを確認する時は、確認結果がYesの場合、Noの場合の次のアクションまでメールに書いてあげるのが、仕事ができる人の特徴です。
仕事柄、グローバルや日本のパートナーと連絡を取り合うのですが、そこで感じるのは、国や言語は関係なく、重要な仕事を任されている人やシニアマネジメントに出世している人ほど、こういったメール1つのやり取りに、仕事を効果的・効率的に完了させる工夫を凝らしているということです。
(年功序列が強い内資系会社の場合は、役職が高くても非効率なメールを送っている場合も見られますが)
私たちも、こういったシニアマネジメントの方の、先の先を見越したメールを心掛けたいものです。
メールで、複数のメンバーに同時に指示を出す
これまで、主に1対1のメールコミュニケーションを想定して話してきました。
しかし、複雑なプロジェクトになるほど、登場人物が多く、メール宛先にもたくさんのメンバーが入ることになります。
そんなときに、メールの往復数を減らし、業務を効率的に進める方法の一つとして、「メールで同時に複数の人にお願いをする」という方法があります。
例えば、開発部門で問題が発生したことで、プロジェクトタイムライン全体をアップデートする必要が生じたとします。
あなたはプロダクトマネジャーで、研究部門、開発部門、製造部門、販売部門に、それぞれタイムラインへの影響を考えてもらって、それをまとめた後、シニアマネジメントに報告する義務があるとします。
そんな時に、それぞれの部門に個別にコミュニケーションしていては、何回もメールを往復しないといけなく、時間がかかってしまいます。
そこで、1つのメールで、各部門の役割と動き方を同時に連絡することで、全部門が同じゴールに向かって効率良く動くことができます。
例えば、以下のように。
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プロダクトメンバー各位
今回の問題によるプロダクトのリリース時期への影響を、私からシニアマネジメントの会議体に報告したいと考えています。会議体の開催日は○月○日で、資料の提出締切は○月○日です。
そこで、以下のようにご対応いただけますでしょうか。
>開発部門のAさん
今回の開発部門の問題によって、開発チームのタイムラインの遅れが何日になるのか早急に調査いただき、プロダクトチームに報告をお願いします。
>製造部門のCさん
開発部門のタイムラインの遅れの報告後に、貴部門のタイムラインにどこまで影響があるか(特に、遅れを吸収できるかどうか)を確認お願いします。
>販売部門のDさん
製造部門Cさんの確認を踏まえて、プロダクトのリリース時期への影響を確認してください。会社の意向として、可能な限り、今のリリース時期を死守するという目標があるので、リリース時期に大幅な影響がでそうな場合は、改めて相談させてください。
>研究部門のBさん
今回の問題による影響は少ないと思いますが、念のため、何かイシュー・リスクがあるかどうか確認してください。
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いかがでしょうか。もちろん、こんなに大勢のプロジェクトだけでなくても、小さい4人のチームでも同じです。
例えば、プレゼン資料のレビューをしているとして、
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Aさん、プレゼン資料のP.2-10までをご確認ください。
Bさん、プレゼン資料のP.11-20までをご確認ください。
Cさん、2人の(Aさん、Bさんの)確認結果を随時プレゼン資料に反映して、まとめてください。まとめた後に、私に連絡していただけますか?
それを踏まえて、全員で最終レビューの打ち合わせをしましょう。
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というように。
まとめ: 先回りの思考でメールの往復数を減らす
ここまでの内容を簡単に3つにまとめます。
- 仕事ができる人はメールの往復数を減らす工夫をしている
- メールの往復数を減らすには、メールの受け手の行動まで想定した上でメールを送る必要がある
- メールの受け手の行動を想定することで、最短距離でゴールに辿り着くことができる
いかがでしょうか。
仕事ができる人は、その仕事のゴールに早く辿り着きたいと思っているので、相手の反応を想像してから、メールを送っています。
これが、メールの往復数が少なくて済んだり、受け手が理解して行動しやすいという結果に繋がっているというわけです。
明日からの仕事で、ビジネスメールを送信する前に、
「このメールにどんな返信がくるだろうか?」
と色々な可能性に思いを巡らせて見てはいかがでしょうか。
急がば回れ、と言うように、結果的に仕事が早く進むと思います。