今だから言えますが、私は極度のあがり症&緊張するタイプでした。
就職活動の面接では、緊張で頭が真っ白になり、話すべきことを忘れて、面接官の前で「えーと、あーと、、、」と吃りながら、大恥をかき、何度も面接に落ちました。
社会人になってからも、大勢の前でコメントを求められると『またスベるんじゃないか』みたいなトラウマができて、人前恐怖症にもなりました。
そんな私でも、今では、緊張&あがりながらも、人前で堂々とプレゼンもできますし、一人で外国人の中に混じってファシリテーションもしています。
そんな今の私の姿をみた人は、『Ippoくんは、大勢の前でも臆さずにモノを言うタイプだよね』といいます。(昔の真逆のようだった私の姿を知らずに。。)
今だからこそ冷静に話せますが、当時の私の焦りと絶望感は表現できません。それぐらい悩んでいました。だからこそ、この記事は、昔の私に対して書いています。
そして、私と同じような苦しい悩みを抱えている人に対して、そこから抜け出すためのヒントになればと思い、これまでの私の経験や勉強したことをまとめました。
この記事では、はじめに、当時の私のあがり症と人前緊張の悩みを打ち明けて、そこからの改善の経緯を話していきます。
どうやって改善したのか、という点を早く知りたい人は、前半は読み飛ばしてください。
では、始めます。
極度のあがり症としてパーフェクトな人材だった私
私が極度のあがり症だと思い知ったのは、就職活動の時です。
それまでも緊張するタイプではありましたが、どちらかと言うと、学生時代は、人前で何かを喋るというような機会がほとんどなかったので、気づくのが遅れたのだと思います。
冒頭で述べましたが、私の就職活動の初めての面接の時のことです。
リクルーターたちが私の大学に来て、同じ学年の学生たちを集団面接するというシチュエーションでした。
私の最初の集団面接は、同じ同期の学生5人でした。顔も知っています。
そんな彼らと一緒に、とあるメーカーの面接を受けた時のことです。
私の同期たちは、自分の自己紹介や志望動機をすらすらと流れるように喋っていきます。
そんな周りの様子を見ながら、ちょっと焦りを感じながら、自分の出番を待ちます。
そして、私のターン。
一斉に面接官が私の方を見てきます。つられて、私の同期たちも私を見てきます。
視線が一気に集まります、私に。
そして、その視線に耐えきれず、私は何を話すべきかを一切忘れてしまい、リカバリーしようと「えーと、あーと、、」と繰り返す始末。
見兼ねた面接官は、私のターンを途中で終了し、面接は終わりました。(内心、ホッとしました。まさに逃げですが)
数日後、同期の〇〇たちが次の面接に呼ばれたらしい、というニュースが学内を回りましたが、私は自分には関係ない話だと思うほど打ちひしがれていたのを覚えています。
こんなことが何度も、何社も続き、当時は、どこの会社にも就職できないのではないか、と焦りと不安の日々を過ごしていました。
最終的には、運良く第1志望の会社に行くことができたのですが、それは自分の本当の実力ではなく『演技と練習』でした。詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
日本の就職活動の面接は、10分から20分の切り取られた時間だけなので、徹底的なシミュレーション練習と『演技力』で相手も自分も誤魔化して、合格することは可能です。
でも、ワンシーンに特化した演技力はすぐにバレてしまうものです。
私は社会人になった後に、そのことを痛烈に実感するとともに、長いどん底を味わうことになるのでした。
新社会人になっても悩み続けたあがり症と人前での過度な緊張
今でも、新社会人になった時の苦い思い出は忘れません。
新社会人になると、避けて通れないのが人前でのコメントです。たとえば、新人配属の時に大勢の前でやる自己紹介。
『新しく配属された〇〇です。学生時代は△△をやっていまして、、、』などの、それぞれの経歴や仕事への意気込みを語るシーンは、もうどこの会社でも恒例のことです。
そんな中、私の同期たちは、これまた聞き手の笑いを誘いながら、流れるスピーチをしていきます。
ところが、就職活動の面接に特化した演技しかできない私は、新入社員用の挨拶という演技経験がありません。
当然うまく喋れずに、緊張のあまり早口になったり、どもったりしてしまい、先輩や上司たちからの『大丈夫かいな、コイツ』という目線を受けてしまいます。
ここまでは、まだ序の口です。恥をかくとしても、社内のことなので、損害はありません。
しかし、いよいよ、取引先でのプレゼンテーションの場面。
私は、自分への自信のなさと、後で先輩や上司たちに怒られるのではないか、という恐怖で、相手に全く伝わらないプレゼンを繰り返し続けました。
そして、先輩や上司たちから、プレゼンのリハーサルを何度も受ける日々。
私のメンタルはすっかり萎縮してしまい、早くプレゼンを終わらせたいという焦りから、早口で喋るのが習慣になり、また声も小さくなってしまい、『声が小さくて、何を言っているか分からない。もっと腹から声を出せ!』と言われる始末でした。
そんな私は、なんとかしないと何もできないお荷物社員になってしまう、という焦りと悩みから、インターネットで検索して、
あがり症を治す目的と、腹から大きな声を出す訓練を目的に、ボイストレーニングに通うことにしました。
『えっ、ボイストレーニング??』
と、きっと目を疑っている人は多いかもしれません(笑)
でも、本当です。いまだから笑って記事にしていますが、当時は本気で悩んでいたので、かなり高いお月謝を払って、周りにも誰にも言わずに、こっそり通い続けました。
ここまででも、『あ、この人、本気であがり症の人だ。しかも、ヤバ目の人』とご理解いただけたのではないでしょうか。
あがり症(対人恐怖症)の主な症状
今思えば、ボイストレーニングに飛びつく前に、もっと自分の状態をじっくり分析すべきだったと思います。
- あがり症や人前での緊張は、どういう状態を指すのか?
- なぜ、あがり症や緊張が起きるのか?
- 自分の場合は、どこにあがり症や人前緊張を引き起こすトリガーがあるのか?
などです。
ということで、まずは、あがり症の主な症状を以下で紹介します。
- 赤面症(赤面恐怖症): 人前で顔が赤くなる。または赤くなっているのではないかと思ってしまう.
- 視線恐怖症: 他人の視線を必要以上に気にする。自分の視線が相手に不快感を与えてしまうことを恐れるケースもある。
- 書痙(振戦恐怖症): 人前で字を書くときに手が震えてしまう。
- 電話恐怖症: 周囲の人に聞かれていると意識すると、うまく話せない。かかってきた電話に出られない。
- 会食恐怖症: 大勢の場や1対1などでも、人と食事をすることができない。
- 吃音症: 人前に出るとどもってしまい、うまく話せない。
- 多汗症: 人前に出ると、顔、脇、手などに異常に汗をかいてしまう。
(引用元:一般社団法人あがり症克服協会|あがり症(対人恐怖症)とは?)
私の場合は、1. 赤面恐怖症、2. 視線恐怖症、4. 電話恐怖症、6. 吃音症の4つが重たいレベルで発症していました。
いずれも、周りの目を気にするあまり、普段の自分でいられなくなるという症状です。
あがり症の原因とは?
驚くかもしれませんが、実は、あがりの原因は医学的に明らかになっていません。
あがり症に限らず、精神系の症状は医学的な原因の特定が難しいのです。
もちろん、「あがり・緊張状態になると、ノルアドレナリンが上昇して、交感神経が活発化し、血圧上昇や不安感などが誘発されてくる。」という身体的な関連メカニズムは特定されています。
しかし、『なぜ、あがってしまうのか?』という理由については、学術的な特定はまだのようです。
一方で、心理学者やあがり症専門の心理カウンセラーは、あがり症を引き起こす主な原因として、以下を挙げています。
- 完璧主義やプライドの高さからの自己否定
- 他人からの評価を気にしすぎる特徴
- どうしていいか分からないパニック
- 失敗体験からくる負の条件反射
順番に説明していきます。
あがり症の原因1: 完璧主義やプライドの高さからの自己否定
生真面目な人は、あがり症になりやすい傾向があります。生真面目というのは、自分への要求レベルが高く、自分に妥協ができない人です。
物事は一長一短があるように、こういった特徴は時にマイナスに働くこともあります。
例えば、自分が求めるイメージが高いのに現実にはできない場合などです。要するに、理想と現実のギャップにショックを受ける場合です。
私自身、取引先でのプレゼンテーションを完璧にこなすという目標があったのに、現実は全くうまくいかなかったとき、『自分はなんてできない人間なんだ』と自己否定してしまったり、そんなできない自分へのショックから一気に自信を無くしてしまったことがあります。
ある上司からは『キミはプライドが高くて、それが邪魔をしている。プライドなんて捨てなさい』と言われたこともあります。
ただ、完璧主義やプライドが高いというのは、『より良いものを創り上げる』という点ではポジティブに働くこともあるので、私は決して悪いことではないと思っています。
世の中、表があれば裏がある。 そんなに単純なものではなく、要はバランスなのだと思います。
あがり症の原因2: 準備不足 or アドリブができなくパニック状態
以前、仲の良い友人の結婚式に呼ばれたときです。事前にコメントをお願いするかもと言われていたのですが、私はなんとかなるだろう、という楽観的な気持ちで、ほとんど準備をせずに当日を迎えました(今思えば、戦場に素手で行くような愚行でした)。
そして、当日は結構大事な局面で、親友からのスピーチという前振りで、マイクの前に立つことになりました。
その瞬間、私の頭は真っ白になりました。何を言えばいいのか事前に考えてきておらず、そして、大勢の視線を浴びて、その場でアドリブも出すことができず、よく分からないギャグのようなものを繰り出して、ダダすべりになり、場は凍りつき、私は退場を余儀なくされたのでした(今書いていても、我ながらアホだったと思います)
要するに、『準備不足』という点もあがり症や緊張の大きな要素といえます。
一方で、準備をする時間もなく、当然、人前でコメントを求められるケースもあります。
たとえば、上司からの無茶振りだったり、急に人前に出てコメントを求められるなどのケースです。
そんな場面で、私が陥っていた負のループです。
- 自分のコメントで、喜んでもらったり、笑ってもらわないといけない。(あがり症の原因1: 自分でハードルを上げてしまう)
- でも、聞き手のニーズが分からないし、どんなコメントをすれば笑ってもらえるのか分からない。正解ルートが見えず、頭が真っ白になってパニックになる。(あがり症の原因2: パニック)
- 『別にウケなくてもいい、スベってもいい。失敗してもいい』と開き直れず、人の評価を気にしすぎる(あがり症の原因3: 人からよくみられたい)
そして、自分のコメントがまったくウケずに、真顔のままの大勢の視線を浴びると、『ああ、だめだ、みんな全然笑ってくれない。何か面白いことを言わなきゃ、何か面白いことを、、、』と思い、あがり症の原因1「 自分でハードルを上げる」に戻り、ループが繰り返し&加速していきます。
緊張しない人は、そもそもウケなくていいと思っていて、自分が感じたことをそのままコメントしているだけです。だから、パニックになることもありません。人の評価なんて気にしていないのです。
あがり症の原因3: 他人からの評価を気にしすぎる(人からよくみられたい)
あがり症の人は、他人からよくみられたいと思いがちです。できることなら、等身大の自分ではなく、もっとよく見せたいと思います。
私の場合は、等身大の自分に自信がなかったので、作られた姿(より理想の自分の姿)を見せたがっていました。
正直に言うと『そんなの無理』なのですけどね。実際には作られた姿なんてすぐに見抜かれます。
にも関わらず、本人も気づかないうちにやってしまっているケースがあるので、とても厄介です。
緊張しない人は、等身大の自分でいることを自然にできています。
緊張する人と決定的に違うのは、ダメな自分(という現実)も受け入れていることです。だからこそ、無理に取り繕わないし、他人の評価も気にしないのです。
そして、もし他人からマイナスの評価を受けたとしても、それを事実として取り込んで、消化し、次に繋げていこうとする度量があります。
我々は必要以上に自己否定するのではなく、また無理に理想の姿を見せようとするのではなく、ありのままの自分の姿でいればいいのです。
たとえ、ありのままの姿の自分がダメだったとしても、【今】はそれでいいです。これから【成長】すればいいだけですから。
この点に心から気づいて、自分を変な呪縛から解放してあげると、一気に成長していくことができると思います。
なぜなら、もともとの性格が高みを目指すタイプなので、自分を縛る鎖を外せれば、そこからの成長は早いはずですから。
あがり症の原因4: 失敗体験からくる負の条件反射
ある時期、私は極端に自分の意見を押し殺すような人間になったことがあります。その原因は、周りから軍曹と呼ばれる上司にありました。
その上司は、私が発言した内容や書いたメールについて、一言一句チェックをして指摘をしました。そこには教育的観点もあったのですが、緩急や重み付けというものはなく、全てを評価されているようでした。
他の部門へのプレゼンテーションのときも、私のやり方をずっと見ていて、プレゼン中に『それは違う』と言い出し、私の話し方やプレゼンを遮っていました。
こんな毎日を過ごしていると人は萎縮してしまうようで、私はもう何をやろうにも『また指摘を受けて、やり直しになるんだろうな』という超ネガティブシンキングになっていました。
これは脳科学の領域では『恐怖条件づけ』と呼ばれる立派な学習反応です。
恐怖条件づけ (Wikipedia)
通常、恐怖を引き起こすことがないレベルの光や音(条件刺激)と恐怖を起こす電気刺激や痛みなど(非条件あるいは無条件刺激)を組み合わせることにより、条件刺激のみの提示で恐怖反応(すくみなど)を引き起こす学習反応を言う。 様々な生物で知られており、危険を避けるための学習行動の一つである。
つまり、私は上司によって、負の条件反射をするようになっていたのです。
過去に何度か失敗体験をしていると、無意識のうちに、これと似たような負の条件反射ができてしまうことがあります。
あがり症の人は、特にこの負の条件反射がついてしまっているケースが多いように思います。
その場合の解決方法は、コツコツと小さい成功体験を積み上げていって、その「恐怖条件づけ」を外すことです。地道な作業ですが、これに勝る方法はありません。
例えば、大勢の前でのスピーチに恐怖心があれば、まず2人で話すことに慣れていき、次は3人、4人、5人と少しずつ人数を増やしていくようにです。
あがり症の根本的な克服方法
私自身があがり症だったので分かるのですが、上記のあがり症の原因1から3までは、実は1つの原因にまとめることができると思います。
それは、『自分に意識を向けすぎていること』です。
言い換えれば、『自意識過剰』でしょうか。
こんな書かれ方をすると、ネガティブな印象にみえますが、自分に意識を向けること自体は悪いことではないと思います。
自分にプライドを持ったり、自分のあるべき姿を目指すのは、自己成長にとって、とても大切な要素です。将来のポテンシャルを秘めていると言っていいと思います。
ただし、同じように、他のコトに意識を向ける力も強めていき、バランスのとれたマインドを持てるようになる必要があります。
具体的には、自分のことは一旦忘れて、誰かのコトに100%の意識を傾けるのです。たとえば、
- 〇〇部署の〇〇さんの△△の仕事がもっと楽になるように。
- この製品を購入して毎日使ってくれるユーザーさんが喜んでくれるように。
- 〇〇というイベントが成功して、参加してくれた人が笑顔で帰ってくれるように。
- この会社のために、そして、私たちが生きるこの社会のために。家族のために。
「自分が周りからどう見られているか?」ということは、綺麗サッパリ忘れて、
相手のために、誠心誠意を持って、
- 自分は相手に何ができるのか、
- 今、どんなことを伝えればいいのか、
このことだけを深く考えて、自分の心の奥底にあるその想いを拾い上げるのです。
下手な小細工なんて不要です。
あなたの、その心の奥底にある『誰かのために』さえ見つければ、確実にあがり症は克服できます。私がそうでしたから。
次の項からは、具体的なエピソードを2つ紹介したいと思います。
Ippoの事例: その仕事を成功させることだけに心血を注ぐ
私がプロジェクトマネジャーとして働いていた時の話です。
当時は入社数年目くらいで、会社の中では若手の立ち位置でした。
そんな中、一緒に仕事をする相手は各部門・事業部のリーダークラスです。だいたい40代で場合によっては50代の部門長が出てくる場合も多々ありました。
当然、私はプロジェクトチームの最年少で、もっと言うと、職位は何もなしの平社員でした。
そんな平社員がそれらのベテランの猛者たちをファシリテートし、プロジェクトを前に進めないといけない状況だったので、普通だったら、萎縮したり、緊張してしまう環境だったと思います。
昔の自分だったら、確実に萎縮して力を発揮できなかったと思いますが、その時に私が考えていたのは、『どうしたら、このプロジェクトを成功させられるか?、今、どこにイシューがあって、どこにリスクがあるのか? イシューやリスクを解決するためには、誰の協力を取り付けないといけないか?』などの、自分以外のヒトや仕事のことだけでした。
そして、プロジェクトの成功のためなら、どれだけ偉い人だろうが、どれだけ厚かましいお願いだろうが、足を運んで協力をとりつけに行きました。
ここまでできたのは、プロジェクトに何かあったら自分が責任を持ってシニアマネジメント層に説明しなきゃいけないという覚悟を持っていたからだと思います。
それぐらい前のめりでやっていると、不思議なことに、自分が平社員とか、自分が人からどう思われているかとか、そんなことは気にならなくなり、50人から100人規模の会議でも、問題なくファシリテートできるようになりました。
これは、心の奥底から湧き上がってくる使命感みたいなものが、あがり症を抑え込んでくれらからです。
ちなみに、私はもともと滑舌がよくないので、今でも普通に噛んだりしますが、自分の仕事の使命感からすれば、そんなのは関係ないと思えるようになりました。
私の経験から言えることは、あがり症や緊張タイプの方は、特に、自分の仕事に没頭して、それ以外考えられない状況に持っていくことがポイントだと思います。
心の底から『これが自分の仕事であり、使命だ!』と思えるまでじっくり内省して、忘れかけていた熱意を思い出させるのが一番の解決方法だと私は思います。
そうすれば、自意識過剰は解消されて、ありのままの自分で勝負できるようになり、それがまた一段の成長を促すはずです。私がそうでした。
DeNA社長 南場智子の事例: コトを成すことに精一杯取り組む
DeNA創設者の南場さんも、『自意識過剰』が原因で、マッキンゼーに入った当初は仕事ができなかったそうです。(想像がつかないので驚きですが)
南場さんの講演内容から引用していきます。
私自身、自分がこうやって言っていますけど、最初からこれができたわけではなくて、随分、苦労しているんです。マッキンゼーの最初、入ったばっかりのときは仕事が大変できなかったんです。それで自分でできなさ加減がわかって悔しくて。
マッキンゼーでは「バリューを出せ、バリューを出せ。あなたのバリューは何なの?」とずっと言われるんです。それで自分のバリューは何だろう。私は本当にバリューが出ていない。何も付加価値が出ていない。仕事ができない。
どんどん自分に意識がいっちゃって、肩がすごく凝るような感じ。それでなおさら固まってしまって、のびのび仕事ができない。できないともっともっと成果が出ない。成果が出ない自分が本当に嫌になってしまうという状態でした。それでマッキンゼーを辞めようということで、自分の履歴書を会社のFAXからヘッドハンターに送りまくって(笑)
(引用元:NAVERまとめ|DeNA南場智子さんの講演「ことに向かう力」がいい話だった【全文】)
南場さんがあがり症だったかどうかは分かりませんが、ここで参考にしたいのは、『自分への意識過剰』が、自分を縛ってしまうことです。
たとえ素晴らしいポテンシャルを持っていたとしても、『自意識過剰』に縛られてしまうと、本来のパフォーマンスが出せないという分かりやすい事例ではないでしょうか。
そして、お話は続きます。
そして転職先も決めて、「ああ、捨てる神あれば、拾う神ありだなあ」なんて思って、随分と精神的に安定してきたときに、「すごいプロジェクトが通ったからぜひ入ってくれ」と言われて。それはすごくお世話になったパートナー、上司から言われたことなんですね。
そのとき私はその上司に言いました。「まったく仕事ができなくて、役に立たなくて。何のバリューも出せなかった。もう私はコンサルタントには向かないので辞めます」と伝えました。(中略)
これを最後に辞めようと思って仕事に取り組みました。そしたら、すごくうまくいくんですよ。
なぜかっていうのは、はっきりしているんですけど、全然肩の力が抜けてるんです。自分のバリューとか、自分ができる、できないはまったくどうでもよくて、本当にクライアントさんにも、チームのメンバーにも、自分ができないことをさらけ出して、「助けて」って言って、みんなの力を借りて、チームがとても良い成果を出したんです。
それで、あっと思ったのが、自分のことすっかり忘れて、自分のバリューとかすっかり忘れて、仕事にだけ集中して。そしたらこんなにのびのび仕事ができます。楽しいんです。そして成果もついてきます。これを私は感じて、それからもう解放された人になりました。どんどんトントン拍子で図々しく活躍する人になっていきました。最後はもう、私がいないマッキンゼーなんてつまんないんじゃない?ってくらいに(笑) ビュービューでやってたと。そういう状態になりまして。
これこそまさに、ありのままの自分をさらけ出して仕事をしている事例だと思いませんか?
私も昔は、人に教えてもらったり、ヘルプをお願いできなかったです。それは『なんだこんなこともできないのか』と思われたくなかったからです。周りによく思われたかったんですね。
でも、仕事を成功させることだけを考えると、なりふり構わず(自分がどうとかは考えず)、周りにヘルプをお願いしまくりました。そうすると、南場さんのように、物事が爆発的に好転していきました。
私はその時から、あまり自分に意識がいかない方がいいなと思いました。
それと同時に、あまり誰についていくとか、アイデアの帰属とか、あるいは評価だとか、ポジションとか、マネージメントとか。そういったことをすっかり忘れて仕事に打ち込むと、本当に良い結果がついてくるなと感じました。(中略)
私が今日、みなさんに言うとしたら、とにかく「コトに向かってくれ」ということじゃないかと思います。
人とか、それから自分に向いすぎずに、仕事に向かう。コトに向かう。コトを成すことに精一杯取り組む。そうするといろいろなものがついてくるのかな、と感じたりします。
南場さんは、自意識が強くならないように、『コトを成すことに精一杯取り組むべき』と言われております。
もちろん、自分に向かうことは悪いわけではなく、『向かいすぎる』と自分を縛ってしまうのでよくないということです。
キーワードは、よい仕事をすることだけ考える、です。それも、自分だけじゃなくて、周りに積極的にヘルプをもらいながら。仕事は自分一人ではできませんからね。
そうすれば、ありのままの自分を出せるようになって、今までにないパフォーマンスを出せると思います。
あがり症に打ち勝つために: 捨て身で、仕事だけに集中する。これだけ。
長くなったので、まとめたいと思います。
- あがり症の原因として、1)完璧主義やプライドの高さからくる自己否定、2)準備不足やアドリブからのパニック、3)他人からの評価を気にしすぎること、4)失敗体験からの負の条件反射、などが挙げられる。
- 1)から3)までをまとめると、自意識過剰になっていることが原因と考えられる。
- あがり症を根本的に解決するには、ありのままの自分(等身大の自分)をさらけ出すこと。
- ありのままの自分をさらけ出すには、『自分がどう思われるか』ではなく、『どれだけ良い仕事をするか』だけに集中する。仕事にのめり込む。
- そして、仕事が成功するならば、『自分がどう思われようが関係ない!』という自己犠牲の精神で、仕事に打ち込むこと。そのためには、泥臭く、なんでもやること。
- こうやって成功体験を積み重ねると、いつの間にか、4)の条件反射も解けて、あがり症が治る。
以上です。
私自身もそうでしたが、自分に自信がなくて、自分をよく見せようとして、自意識過剰に陥って、あがり症になっていたのだと思います。
でも、自分をよく見せようとしている限り、いつまでたっても自信はつきません。
今振り返って思うのは、自信というのは、自分のことを投げ出してでも、恥ずかしい思いをしてでも、なりふり構わず泥臭くやって、仕事のために/誰かのために行動することで、初めて心の底から湧き上がってくるものだと思います。
だからこそ、今、あがり症で悩んでいる人は、人から笑われてもいいので、目の前の仕事に体当たりで取り組んでみてください。
あがり症の方は、もともと求めるレベルが高く、ポテンシャルを持っているので、自分を縛っている自己意識から解き放たれれば、そのあとは劇的に成長するはずです。
Keywordは、『コトに向かう』、『仕事の成功だけを考える』、『なりふり構わない』、『捨て身』です。
笑われてもいいです、泥臭くてもいいです、最初の殻を破りましょう!