部下の現在のパフォーマンスに満足していますか? あなたの部下は成長していますか?
もし、Noという答えであれば、本記事があなたの助けになるかもしれません。
この記事を書いている筆者は、日本で数十人チームのプロダクトマネジャーなど経験し、今(執筆時: 2020年10月)はアメリカでグローバルリーダー/マネジャーの近くでファイナンスをしています。
今回は、これまでの日本・アメリカでの部下・上司経験から、部下の成長やパフォーマンスを最大化させる考え方・方法について、考察したいと思います。
この記事が、今現在、部下を持っているマネジャーや将来のマネジャー候補であるあなたの助けになれば幸いです。
敬意を持って部下に接している
うまくいくチーム・組織や上司・部下の関係を見ていると、そのリーダーや上司は必ず、メンバーに対して「一人の人間として」対等に接していることに気がつきます。
「一人の人間として」対等に接するというのは、「部下」というコマとして扱うのではなく、「人」として気にかけてくれるということです。
例えば、私が一緒に仕事をしているグローバルプロダクトリーダーは「こんにちは、Ippo. 調子はどう? この前のあなたの○○はとても助かったわ。これからもよろしくね」と、普段の会話から言ってくれますし、
現在の私のアメリカ人上司は、いつも「あなたは大事なチームの一員よ」とか、「I’m always behind you(私はあなたの味方だから)、何かあったらなんでも相談しなさい」という声かけをしてくれます。
上司が自分を一人の人間として認めてくれて、そして、何かあった時に味方になってくれるという安心感は、部下の成長やパフォーマンスに大きな影響を及ぼすのです。
一方で、伝統的な日本企業で働く友人からは、部下をコマとして扱うような風習が未だに残っていると聞きます。例えば、上司命令で、様々な雑務や、上司がやりたいイベントの幹事をやらせるのも、その一種といえます。(それも下積みの一貫と言う名目で)
他にも、部下だからと言って、名前を呼び捨てで読んだり(日本での話です)、部下の気持ちを考えずに、いじったり、笑いの対象にしたり、などなど。
2014年のエネルギープロジェクトとハーバードビジネスレビューのレポートによると、「敬意」は他のどのリーダーシップ行動よりも従業員の安全、信頼、集中力に大きな影響を与えると報告されています。
相手に敬意を払うというのは、部下の成長を促すことはもちろん、ビジネスパーソンとしての基本的なマインドセットであることは間違いありません。
私は忙しくなってくると、部下への配慮がおろそかになりがちなので、そういう時ほど自分に言い聞かせるように心がけています。
部下に透明性のあるコミュニケーションをする

2018年のエコノミストインテリジェンスユニットのレポートによると、職場でのコミュニケーションが不十分であると、次のようなさまざまなマイナスの結果が生じることがわかっています。
- プロジェクトが遅延または失敗する
- 士気が下がる
- ゴールが達成できない
- 営業成績が落ちる
では、どのようなコミュニケーションが必要なのかと言うと、それは
オープン(open)で、透明な(transparent)なコミュニケーションです。
私の現在の事業部のCFOは、『I’m always open.』が口癖で、何かあったら、なんでも意見や提案をあげてくれと部下たちに言っています。
また、私の直属の上司は、Transparency(透明性)がモットーで、部下たちを信頼していち早く情報を共有してくれます。
すると、部下の立場からすると、自分たちが信頼されていると感じ、仕事へのモチベーションや上司やチームへの帰属意識が高まるのです。
これは上司・部下の関係に限らず、私がこれまで関わった優秀なプロダクトマネジャーたちは、揃って、プロダクトメンバーへの情報共有・コミュニケーションの頻度・質ともにずば抜けていました。
一方で、「あの人は何をしているかわからない」とか「秘密主義だ」と言われている管理職の方とも仕事をしてきたこともあります。
その管理職は、圧倒的な情報を持っているにも関わらず、それを周りには渡さずに、自分で抱えていたのです。『情報は力だ』と考えるタイプでした。
本当に大事なのは、その『情報』を使って、部下たちと次の価値を生むことであるはずなのに。
秘密主義ではなく、オープンで透明性のあるコミュニケーションは、部下たちの信頼感を醸成し、長い目で見ると、それが部下の成長やパフォーマンス向上、ひいては素晴らしいチーム環境の構築に役立つのではないでしょうか。
適切に、部下に権限と業務を移譲する
「ポジションが人を育てる」や「責任が人を育てる」という言葉があるように、適切な権限移譲(デリゲーション)が部下を育てることはもう言うまでもないでしょう。
ただ、頭では分かっていても、実際にやるのはとても難しいものです。これまでも、きちんと部下に権限委譲ができていない上司をたくさん見てきました。
例えば、私の先輩の上司で、細部まで把握したがるマイクロマネジメントの上司(Kさん)がいたのですが、部下の成果物や仕事の進め方まで管理し、結局、Kさんに逐一お伺いを立てないと進まないという状況になっていることがありました。
これは作業だけ渡しているだけで、権限は渡していないのと同じです。これでは部下はパフォーマンスが上がらないし、育ちません。
でも、当事者のKさんは、うまく権限委譲できていると思い込んでいるので、たちが悪いのです。
また、俺は権限委譲が得意だと信じて疑わない私の最初の上司は、部下の知識・スキルや業務量に不釣り合いの仕事を渡したり、職責上、部下が追えない責任まで渡して放置していました。権限委譲という聞こえのよい事を言いながら、やってることは、単なる丸投げです。
また、権限委譲と言って、何か問題が出たら自分でケツを拭かずに部下の責任にする上司もいます。
結局のところ、適切に権限委譲するには、知識、スキル、および業務量などを総合的に考慮し、また何か起きたときの最後の責任を自分が引き受ける覚悟が必要です。
でも、それを部下には言わずに、部下には思いっきりやってもらう環境を作らないといけません。
加えて、任せっぱなしではなく、部下の状況をみながら、適切なコーチングを行うことも求められます。
部下を育てることが上手い上司は、部下の事をよく理解し、絶妙なバランス感覚で権限委譲をしているのです。
部下へのフィードバックは事実を軸に、そしてフェアに。

部下の能力を最大限まで引き出せるかどうかは、上司からのフィードバックにかかっています。
フィードバックは客観的事実に基づくべきであり、そして、公平な目線であるべきです。
さもなければ、部下の能力を十分に引き出せないばかりか、モチベーションを下げてしまいます。
実際に、以下のような上司をこれまでみてきました。
- その人への先入観、個人的な感情をもとにフィードバックをしてしまう
- 少数の偏った悪い評価をそのまま鵜呑みにしてしてしまう
- その人の同僚たちの評価を聞かずに、発言力を持った人の意見を信じてしまう
- 目についた改善点のみを指摘してしまう
日本の古い体質が残る会社では、例えば、部下の新入社員の時のミスを引き合いに出して「あいつは抜けているところがあるからな」というような先入観を持ち続けている上司がいたりします。
たしかに、一度持ってしまった印象や感情は残りやすいことは事実なのですが、だからこそ、上司やマネジャーは、常に、自分の先入観を取り除いたフラットな目線で、部下のことをみてあげる必要があります。
他にも、プレゼンテーションや部下からの報告書をみて、すぐに気になった点をダメ出しをしてしまう上司を見かけますが、大体のケースで、その組織はうまくいっていないことが多いです。
ダメ出しは必要なことですが、その前に、プレゼンや報告書の「全体」としての出来栄えをフィードバックするべきなのです。
例えば、私の今のアメリカの上司は、「全体として素晴らしい出来ね。これでほぼ完成に近いけれど、○○の点と○○の点は確認した? ここも含めて、最終化に持って行こう」というような感じで、全体から細部という流れで必ずコメントをします。
こうすると、自分の仕事の何割がうまくいっていて、何割が改善点なのかわかりますし、感情面でも特にストレスを感じることなく、次の仕事に取りかかることができます。
一方で、以前、鬼軍曹のような日本の上司についていた時は、険しい顔をしながら「○○の点と○○の点はちゃんと確認したの?」というようなダメ出しのみのコメントばかりでした。
こうなると、成果物の全部がダメなのではないかと受け取ってしまいますし、自分の仕事は全然ダメだったのか、という不要な負のループに陥ってしまいます。
以下の記事でも書きましたが、フィードバックをする時は、良い点・改善点の「偏り」がないように公平に評価することが大事なのです。
人間は放っておくと、無意識のうちに自分の主観(感情や先入観)が入り込んでしまう生き物なので、常に意識して、事実に基づく公平なフィードバックを心がける必要があります。
部下の努力や成果を認識し、賞賛する

会社の人事部から、レコグニション(recognition)という言葉を聞いたことはないでしょうか?
レコグニションとは、個々の努力や実績を認めてあげることを言います。特に新しい概念ではなく、単に外資系から言葉として入ってきただけで、どこの会社でも何かしら制度化しているものと思います。
例えば、社員表彰制度や資格取得の奨励制度がそうですし、制度化されていなくとも、社員同士で称賛・承認しあうような社内文化のようなものもあります。
私の今の上司が凄いなと思う点は、このレコグニションが非常にうまく、部下のモチベーションと能力を引き出すことに長けているのです。
例えば、私が作成した報告書を元に、事業部CFOにプレゼンする際には、「これはIppoが多くの時間と労力をかけて作ってくれたもので・・・」というようなフレーズをどこかに混ぜてくれるのです。
こうすることで、私の仕事への労いと、事業部CFOに対する私のアピールを同時に行なっているという一石二鳥なレコグニションです。こういうのを日常的に各所で織り交ぜてくれるので、それならば上司のためにも頑張ろう!という気持ちにもなるものです。
一方で、昔、一緒に仕事をしていた先輩は真逆のタイプでした。自分はほぼ何もやっていない成果物にも関わらず、「何で俺の名前を入れておかないんだ。こういう時はちゃんと先輩のことを立てておくべきだぞ」と真顔で指導してきたのです。
なんて理不尽な世界なんだ、、と当時は思いました。ただ、反面教師として、レコグニションはあらゆる人との良好な関係構築にとても重要な要素だと学べた良い機会だったと今では思います(笑)。
話を戻しますが、つまり、一生懸命に汗を書いてくれた部下には、まずは感謝と承認の言葉を心から送るということが、部下の成長とパフォーマンスを促すためにとても大事だということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか、長くなってしまったので、まとめます。
部下の成長とパフォーマンスを最大限に引き出すために重要な5つの行動です。
- 部下に対して、「駒」ではなく、対等な人として接する
- 部下に対して、秘密主義ではなく、オープンで透明性のあるコミュニケーションをする
- 部下に権限と業務を移譲する
- 部下へのフィードバックは、事実に基づいた公平な目線を心がける
- 部下が一生懸命書いた汗について、感謝と賞賛の言葉を心から送る
この記事が、今現在、部下を持っているマネジャーや将来のマネジャー候補であるあなたの助けになれば幸いです。