飲食店でご飯を食べているとき、「この店員さん、とても気がきくなあ」と思ったことはないでしょうか?
なぜ、他の店員さんは気づかないのに、この店員さんは気づいたのだろう?と考えていくと、私たちの普段のビジネスにも繋げられる学びがあるものです。
ということで、以前の記事 ニーズとウォンツの違いをビジネスマンが知っておくべき理由で話した “ニーズ” の一つの事例として、この前、私の家族がお世話になったお好み焼き屋の店員さんのお話をしたいと思います。
子供の火傷を冷やすためのウォンツ(水)

先日、妻と子供と、近くのショッピングモールに店舗を構える、某お好み焼き屋に行った時の話です。
そのお好み焼き屋は、各テーブルに鉄板が設置されており、キッチンで作ってくれたお好み焼きやモダン焼を自分のテーブルの熱々の鉄板で温めながら食べることができる、というお店です。
顧客層はファミリー層というよりは、大人向けのようで、シックで落ち着いた内装と少し暗めの照明でコーディネートされたお店です。
テーブルもファミリーレストランのような大きいものではなく、鉄板がテーブルの半分を占めていて、あまり子供がご飯を食べるようなお店ではない印象でした。
そんなお店に入った、私の家族にちょっとした事件が起きました。
まだ2歳弱の娘が、何気なく、熱くなっている鉄板を触ってしまったのです。
熱かったため、鉄板を触っている時間は一瞬だったのですが、娘の指を触ってみるとかなり熱くなっており、確実に火傷をしたことが分かりました。
そこで、まずは火傷部分を冷やすべく、ちょうど手元に氷水が入ったグラスがあったので、そのグラスを娘の指に当てて冷やしていました。
氷水で冷やしている間は火傷の痛みも抑えられるようで、娘も少しは落ち着いていました。(それでも、グスングスンと泣いていましたが)
そんな娘の手を冷やし続けること約15分、手元のグラスの水がぬるくなってきたので、店員さんにグラスのお水を変えてもらえるように、お願いしました。
すると、すぐに新しい冷たい “水” に入れ替えてもらえたので、そのまま娘の指を冷やし続けることにしました。
そして、その水もぬるくなってきたので、もう一度、店員さんに声をかけて「このグラスにお水をもらえませんか?」と聞いたところ、こんな答えがかえってきました。
「もしかして火傷をされていますか? ”氷”を持ってきましょうか?」と。
顧客の本当のニーズを確認し、より良いウォンツ(氷)を提案する
その素晴らしい提案をしてくれた店員さんは、私たちがお店に入ってから一度も接したことがなかったのですが、なんとなく、私たちが困っているような雰囲気を感じ取ったのかもしれません。
もしくは、グラスの中に中途半端に残っている水の量を見ながら、”普通に水を飲みたいわけではないのかも?”という疑問を持って、「火傷をされていますか?」という確認をしたのかもしれません。
いずれにしても、店員さんは、水を欲しがっているというウォンツから、火傷をした箇所を冷やしたいという本当の “ニーズ” を感じとってくれたわけです。
その後、その店員さんは、いくつかの氷を入れた白いビニール袋を持ってきてくれました。
お店の中だけで冷やすだけではなく、お店から自宅に帰るまでの間も、火傷部分を冷やすことができるように、という配慮だったと思います。
このお好み焼き屋の店員さんは、私たちがお店から出て家に帰るまでの道のりまで考えたうえで、その解決策(ソリューション)を提供してくれたわけです。
おかげで、私の娘の火傷も大事には至らず、元気になりました。
クライアントのウォンツは本当のニーズを満たしていない場合がある
さて、このお好み焼き屋での火傷の事例から学べることは何でしょうか?
その一つとして、『お客さんからのリクエストは、そのお客さんの本当のニーズを完全には満たしていない場合がある』ということです。
今回の事例でいえば、私の「このグラスにお水をもらえませんか?」というリクエストは、”火傷した部分を冷やしたい”という本当のニーズを完全には満たしていなかったと言えます。
そもそも私のリクエストが悪く、初めから「娘が火傷をしてしまったので、氷をいただけませんか?」と店員さんに言えばよかったのですが、、手元のグラスの氷水で対処できると思ってしまったのが失敗でした。
ただ、そんな私のリクエスト(ウォンツ)に対し、先ほどの店員さんは、本当のニーズを確認し、”ビニール袋に入った氷” という、よりニーズを満たせる解決策を提案してくれたわけです。
こういう場面、よくよく考えてみると、私たちの日常のビジネスでもよくあると思いませんか。
「○○のデータを提供いただけませんか?」という依頼があったとき、○○のデータも提供しつつ、追加で、「もしかして、こういうことをされたいのではありませんか?(本当のニーズの確認)。もしそうであれば、xxというデータも参考になるかと思うので、ご提供しましょうか?」」
という、一歩踏み込んだ提案ができるか、どうか。
相手がクライアントでも、上司でも、同僚でも後輩でも、意識することは同じです。
相手が自分でも “本当のニーズ” を知らない場合があったり、遠慮して言わなかったりすることにより、”ウォンツ” が適切ではない場合があります。
そんな時に、”本当のニーズ” と一緒に、より良い提案ができると、とても良い仕事ができるのではないでしょうか。
「この人はそもそも何も困っているのだろう? その困り事を解決するもっといい提案はないだろうか?」
何かを依頼された時、一瞬でいいのでこんなことを考えてみてはいかがでしょうか。
この記事があなたの明日からの仕事に役立てば、これ幸いです。