みなさんは、できるか分からない難しい仕事について、上司から『任せてもよいか?』と言われたとき、どのように答えますか?
私は即答で『できます。』と言い切るようにしています。
なぜなら、そういった難しい仕事ほど、新しい発想、新しいビジネススキル、新しい人脈を身につけるチャンスだと感じているからです。
もし、今までのやり方が通用する仕事であれば、そのやり方をそのまま踏襲する、または少し改善するだけで達成できてしまいます。
たしかに、それでも一定のスキルは身につきますが、会社内で誰かが持っている発想、スキル、情報に収まってしまうので、突き抜けた存在になることは難しいです。
まずは、どんな小さな仕事でも一番になることが自分の会社での市場価値を高める第一歩です。
だからこそ、『できるかどうか分からない仕事』に積極的にチャレンジする価値があるわけです。
この記事では、『難しい仕事にこそチャレンジする』というマインドセットについて、もう少し深堀りしていきたいと思います。
リンカーンの名言:まずはやると決断し、あとで方法を見つける。

アメリカ大統領のリンカーンの残した名言「人民の、人民による、人民のための政治(Government of the people, by the people, for the people)」という言葉は知っている人も多いのではないでしょうか。
これ以外にも、リンカーンはとても多くの示唆に富む名言を残しています。その中の一つがこちらです。
Determine that the thing can and shall be done, and then we shall find the way.
そのことはできる、それをやる、と決断せよ。それからその方法を見つけるのだ。
エイブラハム・リンカーン (米国の第16代大統領、奴隷解放の父/1809〜1865)
実は、リンカーンの人生は順風満帆なものではなく、失敗ばかりだったことをご存知でしょうか。リンカーンは、事業に失敗したり、出馬した選挙で落選したりなどで、周りから評価されていなかった時期もあります。
そんなリンカーンの口癖が、上記の『それはできる、それをやる、と決断せよ。それからその方法を見つけるのだ』だったのです。
当時のリンカーンが置かれていた環境は決して楽なものではなかったと思います。もしかしたら、そんな時に、常に自分に言い聞かせるつもりで、その言葉を言っていたのかもしれません。
我々の仕事を引き受ける判断基準はなにか?
我々の日常のビジネスシーンを考えてみたとき、どんな基準で仕事を引き受けているでしょうか。
私の会社にも多いのですが、以下のような言葉、よく聞いたりしませんか?
- 「その仕事は我々の部署(または、私)では経験がないので、できかねます。」
- 「その仕事は今の人員構成(または、今の私の工数)ではできないので、今回はお断りさせてください」
たとえ、それが『誰かがやるべき大事な仕事』であったとしても、上記のような理由でたらい回しにされてしまう、というのはよくある光景です。
このように、多くの人は『この仕事をお願いしてもよいか?』と聞かれた場合、できる可能性をある程度見つけてから、やるかどうかの判断をする傾向があります。
しかし、リンカーンの考え方は全く違います。
その仕事は「やる必要があるか?」を考え、やる必要があると判断したら、そのまま「やる」と決断するわけです。そして、「どうやってやるのか?」という方法論を後から考えていくという順番です。
このリンカーンの考え方・マインドセットのポイントは、「やる必要があるかどうか?」が判断基準になっている点です。
決して、「どのようにしてできるのか、できないのか」という実現性の観点ではないのです。
事例: チャレンジ目標を達成し続けるリーダーの話
先日、とあるグローバルプロダクトリーダーと個人的に話す機会がありました。
そのプロダクトはエグゼクティブからも注目を集めており、本社からチャレンジングな要求やゴール設定を課せられています。
そして、そんな重たいプレッシャーを受けながら、そのリーダーは笑顔でこんなことを言っていました。
『俺はチャレンジングな要求や目標設定が来ても、それはできません、とは言わない。まず、やると言い切る。言い切ったあとに、あとはどうやってその目標を達成できるかを考える。それが、イノベーティブな発想や仕事に繋がるでしょ?』と。
さらに、このように続けました。
『しかも、チャレンジングな目標を、チームでどうやって達成するかを考えていく方が、チームとチームメンバーの成長にも繋がるでしょ? 目標は、難しいなと思うぐらいの方がいい。 プロダクトと一緒にチームは成長していくもんだ』と。
この言葉を聞いた時、私はこのプロダクトリーダーにリンカーンを重ねたのでした。
脳科学の観点:やると決断して、初めて前向きなアイデアが生まれる
できるかな? どうしようかな?と考えているときは、決して前向きなアイデアは出てきません。
決断を渋っている時に出てくるアイデアは、『やると決断した時のデメリット』ばかりです。そこには成長の機会もありません。
一方、一度決断して方向性を決めると、今度はその方向に向かって『どうやろうか?』と前向きに考えるようになります。(決断を渋っている時と全く逆の発想になるので、人間の脳は面白いものです)
これは、脳は空白を嫌うと言われていて、『分からない状態』を回避したがる傾向があるためです(以下記事にもう少し詳しく書いています)。
つまり、決断を迷っている時は、『その決断の理由探し』にエネルギーを使い続けるのですが、決断してしまえば、『どうやって実現するか?』にエネルギーを使い始めるというわけです。
どちらが、より生産的で、より成長に繋がるか明白ではないでしょうか。
まとめ:明日からの仕事に役立てるために
と、ここまで書いてきましたが、実際に我々が『この仕事を任せても大丈夫?』と言われたときの対応は、実にシンプルです。
あまり後先考えずに、『はい、大丈夫です。できます』と、とりあえず言い切ってしまえばよいのです。
そうすると、あとは脳が勝手に『言い切ってしまった。まずい、約束を守るために、どうやって実現しようか?』と必死で考えてくれるようになります。
一見、ちょっとしたマインドセットの違いのように見えますが、実は中長期的な観点で、我々の成長を大きく左右する要素だと思います。
もし、明日、できるかどうか分からないような難しい仕事を依頼されたとしたら、このリンカーンの名言を思い出してみてください。
大変かもしれませんが、仕事を終えたあとに、きっと面白い世界が見えるのではないでしょうか。
Determine that the thing can and shall be done, and then we shall find the way.
そのことはできる、それをやる、と決断せよ。それからその方法を見つけるのだ。
エイブラハム・リンカーン (米国の第16代大統領、奴隷解放の父/1809〜1865)