なぜ、コミュニケーションは大事なのでしょうか? そもそも、コミュニケーションの定義って何なのでしょうか?
就職活動や社内の評価面談時に、必ずと言っていいほど論点になるのが「コミュニケーション能力が高い人材」。
でも、そもそも「コミュニケーションって何を指しているの?」「コミュニケーション能力が高いってどういうこと?」と疑問に思った方は私だけじゃないはずです 。
コミュニケーションが非常に重要なことは、みんな理解しています。しかし、コミュニケーションという言葉の解釈が人によってマチマチなことで、よくよく話してみると、話が噛み合っていなかったということがよく起こります。

ということで、この記事では、
- コミュニケーションの定義とは?
- そもそも、なぜコミュニケーションが必要なのか?
- コミュニケーション能力が高いとはどういうことか?
- ビジネスで使えるコミュニケーション戦略
という内容について考察していきたいと思います。
【図解】コミュニケーションの定義

人によって解釈が違う言葉は、定義を明らかにすることが先決です。お互いに同じ言葉を使っているのに、意図している意味が違うということはよくあることですから。
ということで、いくつかの辞書でコミュニケーションの定義を比較してみます。
<広辞苑:コミュニケーション>
社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達であり、言語・文字、その他の視覚・聴覚に訴える各種のものを媒介とする。
では、 communication の英語での定義はどうなっているかというと
<オックスフォード英語辞典: communication>
The imparting or exchanging of information by speaking, writing, or using some other medium.
(筆者訳:会話、書体、その他媒体を用いて、情報を伝達または交換すること)
要するに、コミュニケーションとは、「人間同士で、何らかの媒体を用いて、知覚・感情・思考を伝達し合うこと」といえます。(オックスフォード英語辞典の方は、単に「情報」と割り切っていますが)
図解すると以下のイメージです。

これが辞書での定義ですが、結構あっさりしたように思った方が多いのではないでしょうか?
実際に日常や会社で使われる「コミュニケーション」という言葉は、もっと広範囲のことを指しているように思います。だからこそ、人によって解釈がずれがちで、話が噛み合わないということが頻発するのですが。。(なので、私はあんまりコミュニケーションという言葉を使うのを避けています。こちらの意図が間違って伝わる可能性が高いので)
以下のデジタル大辞泉の方では、先ほどの「伝達」という手続きよリも、もう一歩踏み込んで「意思の疎通」や「心の通い合い」という「コミュニケーションを行った結果」まで定義に含んでいます。
私個人の考えとしては、この定義にあまり賛同しません。心の通い合いという情報伝達による「結果」まで一緒にすると、コミュニケーションを「手段」としか解釈していない人と話が噛み合わなくなるためです。
<デジタル大辞泉:コミュニケーション>
「コミュニケーション」は、情報の伝達、連絡、通信の意だけではなく、意思の疎通、心の通い合いという意でも使われる。
【図解】そもそも、なぜコニュニケーションが必要なのか? 目的は?
我々は、なぜコミュニケーションをするのでしょうか?
この問いに対する私の考えは以下です。
「誰かに何らかの行動を起こして欲しいから」
これがコミュニケーションの目的だと私は考えます。
たとえば、あなたが無人島に一人取り残されたとします。

危機的状況ですよね。食べ物もなく、飲み物もなく、生きるか死ぬかの瀬戸際な状況です。
そんな時に、遠くの沖の方で、船が通りかかったとします。
あなたならどうしますか? 私なら、力いっぱい叫びます。その船の誰かに向かって。

救助要請です。全力で助けを求めます、船の上の誰かに。もう声だけではなくて、あらゆる手段で助けを求めるかもしれません。
たとえば、SOSと砂浜に大きく書いたり、狼煙をあげてみたり、夜だったら懐中電灯で光を点滅させてみたり、と。
でも、これ、もし船が通らなかったら、何のアクションもしていませんよね。独り言をいうのは無駄ですから。
つまり、
- コミュニケーションの目的は、誰かに行動してもらうこと(この場合は、船員に “船に乗せてもらう” こと)
- コミュニケーションは、その手段 (この場合は、大声で叫んだり、SOSを砂浜に書いたり、狼煙をあげたり等)

ということです。
他の例でいうと、わかりやすいのが、まだ言葉が話せない赤ちゃんです。
母親に対して、色々な泣き方をすることで、ご飯を要求して空腹を満たしたり、オムツを替えてもらって快適な環境を手に入れたり、抱っこしてもらって精神的安定を得ようとします。
これらも泣くという手段を使って自分の要求を通している点で、間違いなくコミュニケーションです。


【図解】「コミュニケーション能力が高い」とはどういうことか?

さて、やっと準備が整ったので、本題に入っていきたいと思います。
「コミュニケーション能力が高い人」とは、どういうことを指すのでしょうか?
これまた書籍や社内のご意見番の方々、ネット記事などを見ていると、色々と出てきます。具体的なものから抽象的なものまで。例えば、こんなものです。
- わかりやすく伝えることができる人
- 人のやる気(モチベーション)を高めることができる人
- 聞き上手で、相手がどんどん自分のことを話したくなってしまう人
- もっと聞きたい!と思わせる魅力的な話ができる人
- 相手に共感することができる人
- 的確な質問ができる人
- 話をまとめることができる人
- 人に好感を与えることができる人
この中には、コミュニケーション以外の話(リスニング能力)なども入っていたりするので、結局モヤモヤするわけです。
なので、私は敢えて一言で定義しようと思います。シンプルです。
コミュニケーション能力が高い人とは、
自分の望む結果を相手から引き出せる人。
以上です。
先ほどの無人島の事例でいえば、砂浜にSOSと大きく書いたり、狼煙を焚いて存在を気づかせようとしたり、とにかくあの手この手で、船に乗せてもらおうと試みる人はコミュニケーション能力が高いと言えます。

一方で、「助けてくれー」と力任せに大声をあげているだけの人は、コミュニケーション能力は高くないです。もし、もの凄い声量を持っていて、声だけで助けられてしまったのなら、話は別ですが。
これを仕事で置き換えてみると、
- 取引先に対して、とにかく頭を下げ続けて「買ってくださあい!!!」というゴリ押し営業を続ける人と(時と場合によっては、たまたまゴリ押しで買ってくれるかもしれないですが)、
- 取引先に対して、相手が買いたくなるようなストーリーを複数考えて、それらを上手くミックスしたり、取捨選択しながら、相手にアプローチする人、
とも言い換えられます。
どちらが、コミュニケーション能力が高い人かは、もう言わずもがなですよね。
要するに、コミュニケーションの「目的」を高い確率で達成できる人こそが、コミュニケーション能力の高い人だと言えます。(無人島の例では、助かること。営業の例では、売上をあげること。)
よく誤解されがちなのは、「目立ちたがりな人」とか「おしゃべりな人」がコミュニケーション能力が高く、「控えめな人」とか「物静かな人」はコミュニケーション能力が低いと思われている点です。
実際には、「物静かな人」でも、相手に合わせた様々なストーリー展開で、相手に行動を促せる高い能力を持った人はたくさんいるので、その人の「雰囲気」で判断するのは愚策と思っています。

余談になりますが、プロジェクト・マネジャーの仕事は、「9割がコミュニケーションである」と言われているのですが、これはプロジェクトゴールを達成するには、多くの人を動かす必要があり、そのために「コミュニケーション」という手段が日々必要、ということを意味しています。
それは、プロジェクトメンバーに限らず、プロジェクトに関わるキーパーソンたち(マネジメント層含む)を動かしてナンボの世界です。彼らを動かして、プロジェクトを成功に導くことがプロジェクトマネジャーの仕事です。
つまり、
- 目的:プロジェクトの成功
- 手段:メンバーとキーパーソンをうまく動かす
ということです。以下と同じですね。
- 目的:船に乗って無人島から脱出
- 手段:船の乗組員に存在を気づいてもらって、船に乗せてもらう
コミュニケーションがうまくいかない時は、目的がない時
コミュニケーションに関する悩みでよく聞くのが『何を話していいのか分からない』というものです。
たとえば、出張で、普段仕事で関わりがない人と二人きりになった時などで、すぐに仲良くなる人と、気まずい雰囲気になる人がいます。
なぜ、違いが生まれるのでしょうか?
その違いは、コミュニケーションの目的を持っているかどうかだと思います。
先ほどの気まずい雰囲気になるタイプの人は、たとえば、『気まずい雰囲気になってしまった、なんとかして会話を繋いで、この場を凌ぎたい』といように考えている人です。
コミュニケーションの目的が、『とにかくこの場を取り繕う』になっているので、表面的な会話になりますし、相手もぎこちなさを感じてしまいます。
一方で、目的が『相手のことをもっと知って仲良くなりたい』とか、『相手のことを知って、いろいろ学びたい』という人は、すぐに相手と打ち解けます。いずれの目的も、相手のことを知ろうとする前向きな姿勢に繋がるためです。
私のケースでは、後者の『相手から学びたい』という点がコミュニケーションの軸になっています。たとえば、こんなことをよく聞いています。
- 何を専門分野にされているのですか?
- その分野での最新のトピックって何ですか?
- なぜ、その分野を専門にしようと思われたのですか?
- 昔はどんなことに興味があったんですか?
- いつから、今の分野に興味を持たれたんですか?
- 今の専門分野はどういった所に活かせますか?
- 仕事で大事にしている点は何ですか?
- 普段、どんなことを意識して仕事をされていますか?
などなど。
挙げだすとキリがありませんが、私が人に対して興味を持っている点は、『その人がどんなことを考えて人生を生きてきたのか? また、これから生きていこうとしているのか?』ということなので、気づくとだいたいこんなテーマになっています。
自分でもちょっと真面目系に寄ってしまっているかな、とは思いますがビジネスライクな付き合いであれば、むしろ快適に感じています。
ということで、まとめると、『コミュニケーションがうまくいかないなあ』と思ったら、一度、自分が相手とコミュニケーションする目的を振り返ってみるとよいです。
そこで、後ろ向きな目的があったなら、もっと前向きな目的に切り替えれば、自然にうまく話せるようになります。
まあ、実際には、生理的に受け付けない人や性格的に合わない人がいて、どうにもこうにも、前向きな目的を作れない場面もありますが。(人間ですからね)
そういった例外はさておき、コミュニケーションをする時は、まず最初にその目的をしっかり意識し、次にその目的を達成するにはどんな質問やお願いをすればいいか、という順序で考えていけば、きっと有意義な関係を築けるようになると思います。
まとめ: 明日からの仕事でのコミュニケーションに向けて
いかがでしたでしょうか? ここまでの内容をまとめます。
- コミュニケーションとは、「人間同士が、何らかの媒体を使って、知覚、感情、思考などを伝達すること」
- コミュニケーションの目的は「相手に行動してもらうこと」
- コミュニケーションは、目的達成のための手段
- コミュニケーション能力が高い人は、「自分の望む結果を相手から引き出せる人」
- コミュニケーションがうまく行かない時は、目的(望む結果)がない時。
- まず最初に、コミュニケーションの目的(望む結果)を確認する
以上です。
あなたは明日に、誰と、どんなコミュニケーションをする予定ですか?
その時のコミュニケーションの目的は何ですか? どんな結果を得たいですか?
この記事が明日からのあなたのコミュニケーションに役立てば幸いです。