『自分は仕事がデキない社員です。』
こんなことを自ら発表する人は、そうそういないと思います。もし、いたとしたら、単なる変人か、逆にかなり自分に自信がある社員でしょう。
つまり、大抵の人は、自分は仕事がデキない社員だと思われたくないし、仮に仕事がデキない場合でもそれが分からないように無意識の行動をとるものです。
なぜ、こんな記事を書いているかというと、何を隠そう、私自身が『自分が仕事がデキない社員だと思われないような防衛行動』をとっていたことがあり、それが今思えば、自分の成長を止めていたな、と反省しているからです。
この記事を読んで、今、自分の成長を止めてしまっている人が、勇気ある一歩を踏み出してもらえれば幸いです。
仕事がデキないことを隠す自己印象操作
『あの人、またあんな大勢がいる場で意見を言っていたね。あれじゃあ、目をつけられるね。』
『あの人、また奇抜なアイデアを提案していたね。あんな企画通るはずがないのにね。』
会社にいると、本人がいない場でこんな声を聞くことがあるかもしれません。そんな声の主からすれば、『公の場で醜態を晒すなんて、脇の甘いやつだなあ、あいつは』というような感じでしょうか。
皆さんの会社でもこんな声や雰囲気があるのではないでしょうか?
どこの会社でも、どこの国でも、何かしらの発言をすれば、それに賛同する人と賛同しない人が出てきます。
そんな賛同しない人の声を気にするあまり、無意識のうちに、発言を控える行動を取る人もいます。(以前の私のように)
そんな状況は日本企業だけに限らず、グローバルでも同じようです。
世界的な経営学者のAmy Edmondson教授は、TEDで、自分を無知で無能な人に見せないための以下の4つの方法を紹介しています。


- 自分は無知だと思われないために「質問しない」
- 無能だと思われないために「間違いや弱点を認めない」
- 押しつけがましいと思われないために「アイデアを出さない」
- ネガディブだと思われないために「現状を批判しない」
の4つです。では、順番に見て行きましょう。
自分が無知だと思われないために質問しない
何を隠そう、これが以前の私にぴったりと当てはまっていました。
自分がデキない人間と思われたくなかったために、上司の指示がよく分からなかった時でも、あえて確認の質問をせずに分かったフリをしていたのです。
質問をすることで、上司から『なんだ、お前は。こんなことも分からないのか?』とチームメンバーの前で醜態を晒されるのを恐れていたからです。
実は、会議が終わってみたら私以外のチームメンバーも分からなかった、、という状況も多々あったのですが、敢えて自分が先陣を切って質問するのは『世渡りが下手』という烙印を押される雰囲気があったのも事実です。
みなさんの会社でも、怖い上司がいる組織はこの状況になっていませんか?
確かに、質問をしなければその場はしのげるかもしれません。でも、その行動が最終的な仕事の成果物に結びつくか?というと『否』です。
質問をしないというのは、単に、プラスもマイナスもないゼロである、ということです。
むしろ、質問をしないことで仕事の成果物に影響があるのであれば、マイナスかもしれません。
無知だと思われてもいいんです。無能だと思われてもいいんです。
知らないことがあれば、『知りません。だから、教えてください。』と言う。
理解できないことがあれば、『理解できませんでした。もう少し教えていただけませんか?』とお願いする。
自分が無知で無能であれば、それを改善して、最終成果物をより良いものにする。
できないことを、できるようにする。できるようになって、付加価値を生み出すことが重要ではないか、と今では実感しています。
そのためには、自分ができないことをまず認めて、それをオープンにする。そして、周りのサポートを引き出して、できるようにする。
これこそが、本当の意味での『仕事がデキる人』なのだと思います。
質問を遠慮するのは、その場しのぎにはなりますが、それだけです。
無知だと思われようが、勇気を持って積極的に質問していく、という行動こそが、自分の成長の一歩ではないでしょうか。
無能だと思われないために「間違いや弱点を認めない」
これは私の元上司に見られた傾向でした。
人の目を気にするあまり、とにかくミスをした時に言い訳がとても長く多かったです。
言い訳をするあまり、他部門の人との関係もあまり良くならずに、結局、私がいた組織は段々と縮小していったという経緯があります。
一方で、仕事がデキる人や自分に自信を持っている人は、ミスをしたらすぐに謝るんです。それも、とても潔く。
『私が間違っていました。すみませんでした。』と。
でも、それだけで終わるのではなくて、自分のミスを認めた上で、すぐにその次のアクションを取ろうとするのです。
仕事がデキる人は、軌道修正が早いです。自分のミスを気にする間もなく、それを踏まえて、物事をもっとより良い方向に持って行こうとします。
一方で、言い訳が多い人は、行動が遅いです。いつまでも、自分のミスを隠したり、誰かのせいにしたりすることに注力するので、仕事がなかなか前に進みません。人間関係も良くなりません。
無能だと思われないためにやっている『言い訳』が、結局は自分を無能にしていっている、という事実に気づきません。
間違いがあれば、すぐに間違いを認めて謝って、次のアクションにすぐに移れるようにすること。
これも勇気がいる一歩ですが、間違いなく、自分を成長させてくれる行動ではないでしょうか?
押しつけがましいと思われないために「アイデアを出さない」
アイデアの押し売りは、時に迷惑だと思われるかもしれません。でも、アイデアを出さないことよりは何十倍も価値があると思います。
ヒットやホームランはベンチにいても打てないですよね?
三振するかもしれない覚悟で、バカにされるかもしれない覚悟で、打席に立たないとヒットもホームランも出すことはできません。
いくらベンチでアイデアを温めていても、それは価値ゼロです。質問をしないのと同じように、何も行動を起こさなければ何も生まれません。
会社にとって価値が生まれる可能性を生み出すのは、アイデアを口に出すことを遠慮することではない、ということです。
ネガティブだと思われないために「現状を批判しない」
現状の問題点を批判していると、『あの人はネガティブだよね』とか『いつも口だけだよね』というような悪い噂が経つこともあるかもしれません。
でも、それは自分の利益だけを考えての自己中心的な批判ばっかりしていた場合、、ではないでしょうか?
会社のことを本当に考えて批判した場合は、そんな風には捉えられないと思います。
もちろん、批判ばかりしているだけではダメかもしれませんが、自分ができる範囲で、改善策を提案していったり、自らが中心となって問題改善をしていったりすれば、それは立派な付加価値を生み出していると言えます。
現状を批判すること自体はとても良いことです。
ビジネスとは、”不” の解消と言われています。”不” というのは、世の中の不満、不便、不都合、不平、不幸などです。こういった困ったことを解決してあげると、それが価値提供になり、ビジネスになるわけです。
そういう意味で、現状を批判するということは、そこにビジネスチャンスがある、と言ってくれていることなので、とても価値があることなわけです。
そして、そこに行動を結びつけることができれば、もっと良い結果になると思います。
人の目を気にせずに、もっと現状を批判していきましょう。
仕事ができないことを隠す4つの方法は反面教師だった
いかがでしたでしょうか。
自分の意見を言うのを遠慮することで、目立たないようにする『4つの自己印象操作』を紹介してきました。
でも、これは何も価値を生まない行動であると断言できます。
自分の成長のため、会社の成長のためを考えれば、積極的に自分の意見を打ち出して行くことこそが、本当に大事なことなのだと私は思います。
ミスをしない人間は、何もしない人間だけだ。
- セオドア・ルーズベルト –(米国の第26代大統領 / 1858~1919)