みなさんは、単純なミスをしやすいタイプでしょうか?
私はミスをしやすいタイプです。特に、Excelのデータ入力などの単純作業は得意ではないので、よく入力ミスをします。
にも関わらず、ファイナンスとして「ミスが少ない人」、「ミスに気づきやすい人」と周りから言われます。(時には、細かい人、とも・・・)
その理由は、”一人クロスチェック” を心がけているからです。
誰かとダブルチェックをするよりも、一人クロスチェックの方がミスの確率を減らせるというのが私の実感です。
ミスをしやすい傾向がある方は、この “クロスチェック” という考え方をこの記事で覚えてもらうと、明日からの仕事に活かせると思います。
ダブルチェックとクロスチェックの定義と意味
まずは、ダブルチェックとクロスチェックの定義の違いを確認していきたいと思います。
なお、Googleで日本語検索しても、正確な意味が出て来ないので、英英辞典の定義を載せて、私の意訳を添えています。(英語の場合は、英英辞典の方がわかりやすいです)。
ダブルチェック(double-check)の意味・定義
check (something) for a second time to ensure that it is accurate or safe.
[意訳] 正確かどうか(安全かどうか)を確かめるために、2回確認する。
ダブルチェックは同じ方法で、もう一度やることで、ヒューマンエラーを回避しようとします。
例えば、ウェブサイトのパスワード登録の際に、2回入力させられるのも、このダブルチェックに該当します。
他にも、医療や看護の世界でも、同じ作業を誰かにもう一度やってもらったりする等、ダブルチェックはあらゆる場所で日常的に行われています。
クロスチェック(cross-check)の意味・定義
verify (figures or information) by using an alternative source or method.
[意訳] 別のデータソースまたは方法で、数字や情報を確認する。
その文字の通り、縦方向のチェックに対して、横方法のチェックをかけて、格子状に確認する方法です。
クロスチェックで大事なポイントは、この横方向のチェック、すなわち、”別の方法” で確認するという点です。
例えるなら、クロスチェックは、セカンドオピニオンみたいなもの

わかりやすい例でいうと、医療で言う所の、”セカンドオピニオン” (別のお医者さんに診てもらうこと)みたいなものです。
お医者さんから、「あなたは重病にかかっています。今すぐ手術が必要です」と言われたとします。
いくら説明されても、「本当なのだろうか?」と思いますよね。その時に、そのお医者さんに「もう一度、ちゃんと診断してください」と訴えても、診断内容はおそらく覆りません。
ところが、別の病院で、別のお医者さんに診てもらったとします。(できれば、最初のお医者さんとは異なる考え方やアプローチをする方が良いです)
すると、「たしかに重病ですが、手術までは不要ですね」と診断されることもあります。
もちろん、場合によっては、同じ診断結果になるかもしれませんが、
- 一人の医師に、2回診断してもらうこと
- 2人の医師に、それぞれ診断してもらうこと
を比べると、後者の方が圧倒的に、結果の信頼度が高いわけです。
クロスチェックとは、この2つ目のように、別々の方法で同じ結果を導く確認方法のことを言います。
具体例:ダブルチェックとクロスチェックの違い
例えば、100個の商品を売りに出した場合、商売を終えて、在庫を数えたら45個だったとします。
その時に、もう一度、在庫を数えて行くのがダブルチェックです。(縦方向のチェックを2回行う)。たとえ、別の人が数えても、確認方法が同じである限り、ダブルチェックのままです。
一方、販売記録を1つずつ数えていって、販売数が55個であることを確認するのがクロスチェックです。(横方向のチェック)。
『販売数が55個ということは、100から55を引いて、残りが45だ。よし! 在庫45とぴったり合うな。計算結果OKだ』と安心するわけです。
ここで、なぜクロスチェックが重要かというと、よりエラーを検出しやすいからです。
例えば、販売数が54個だった場合はどうなるでしょうか?
販売数54個、在庫45個で、1個どこかに行ってしまったことに気づきます。
そこで、その1個について調査して行くと「1個は品質不良で破棄した」ということが判明する、というケースです。
このように、クロスチェックを行うと、ダブルチェックでは気づけない特殊ケースや盲点なども洗い出せることがメリットです。
その名前の通り、格子状の細かい網目でチェックし、ミスを見逃さない方法なのです。
一人クロスチェックで、仕事のミスを減らせ

では、我々の日々のビジネスシーンに、どのようにクロスチェックを取り入れて行けばよいのでしょうか?
実は、やり方は本当に色々とあります。先ほどのクロスチェックの定義にもある通り、“別のデータソース” または、”別の方法” を使っていきます。
例えば、社内のデータソースを使ったら、クロスチェックでは敢えて社外のベンチマークや政府の統計数字を使う、などです。
私の場合は、職業柄、事業部の実績や予算を分析することが多いのですが、ボトムアップ計算で、緻密に事業部予算を算出したあと、敢えてラフな「フェルミ推定」を使ってクロスチェックをしたりしています。
たしかに、ボトムアップ見積もりは、1つずつのアイテムの数字を足し合わせて合計の数字を作るので数字の信頼性は非常に高いのですが、一方で、細部に目が行きすぎるあまり、致命的なアイテムを入れ忘れるというヒューマンエラーのリスクがあります。
そこで、精度は落ちますが、抜け漏れミスが少ないフェルミ推定で、ざっくりと数字の規模感を算出して、数字の桁数に違和感がないかをチェックします。
例えば、事業部の人員が100人前後であれば、一人あたりの人件費を約1,000万円と設定して、人件費は約10億円と算出できます。
そこで、ボトムアップ計算の結果が、もし、6億円などになっていると、何か致命的なミスをしていると気づくことができます。一方で、9〜11億円の範囲であれば、致命的なミスはなさそうだ、という信頼感に繋がります。
実は、このようなクロスチェックの事例は以前の記事でも紹介したように、仕事ができる人や重役についている方は、頭の中でやっているものです。
マネジメントレベルが上がっていくにつれて、数字が求められるようになるので、自然な流れなのだと思います。
我々も日々の業務で数字を扱う時は、クロスチェックを心がけてみてはいかがでしょうか。