【フェルミ推定】私の会社の活用事例:日本事業部ヘッドの数値チェック、新規事業評価

【フェルミ推定のビジネス事例】新規事業評価、日本事業部ヘッドのチェック

フェルミ推定という考え方をご存じでしょうか?

外資系コンサルの面接でよく聞かれる考え方で、一時期、色々な書籍も出回ったので知っている方も多いかもしれません。

実は、このフェルミ推定、コンサルに限らずビジネスの現場でも普通に使われています。

先日、日本の事業部ヘッドに日本事業の年間計画と実績を報告をしていた時も、そのヘッドからの質問内容に、フェルミ推定の思考プロセスを感じました。

ということで、この記事では、フェルミ推定の考え方を簡単にふれつつ、ビジネス現場での実際のフェルミ推定の使われ方・事例を紹介したいと思います。

フェルミ推定とは

まず、フェルミ推定の定義について確認したいと思います。Wikipediaでは以下のように定義されています。

フェルミ推定とは、実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することを指す。

(引用: Wikipedia)

簡単にいうと、自社のデータベースに欲しいデータがなかったときに、今ある手持ちデータからざっくりとした概算の数値をつくりだす、という考え方です。

例えば、外資系コンサルの面接では、フェルミ推定を使った以下のような例題が出されるそうです。

  • 日本にあるマンホールの数は?
  • 日本のある電柱の数は?
  • 日本で使用されているテレビ台数は?
  • スクールバスにゴルフボールはいくつ入るか?
  • 地球上にアリは何匹いるのか?

どれも、一般に生活している中では、正確な数字はパッと出てこないと思います。こういったわからない数字を、簡単に入手できるデータからある程度ざっくり算出するというのが「フェルミ推定」です。

なお、ここでのざっくりとは、桁数があっていれば良い程度のことを意味しています。例えば、実際の数値の1/10~10倍の範囲に収まっていればよいという程度です。

なぜ、フェルミ推定の考え方が大事なのか?

さて、実際のビジネスシーンでも、欲しい統計データがなかったり、定量的な調査をするお金や時間がなかったりすることが多々あります。(むしろ、欲しいデータがドンピシャリで見つかることの方が少ないかもしれません)。

それでも、ビジネスの意思決定に必要な根拠データを作らないといけないケースというのは往々にしてあります。

そこで、手元にある数字を使って、欲しい数字のBest estimateを作るということが非常に重要になってきます。

この場合の手元の数字というのは、自社の過去データだったり、データベース会社から購入した数字だったり、国や政府が出している公的な調査データだったりするわけです。

フェルミ推定の事例①:新規プロジェクトの事業評価

例えば、私の会社では、新規プロジェクトの事業評価をするときなどに、このフェルミ推定の考え方が使われています(おそらく、無意識に使っている社員が多いと思います)。

新規プロジェクトの事業評価を行う場合、大きく3つのデータが必要になります。(細かくは販促費や税金、割引率などの色々な要素も必要ですが、この記事では割愛します)。

  1. その商品が販売されたときの、売上予測
  2. その商品を作るために必要な製造コスト(予測)
  3. その商品を販売するまでにかかる、研究・開発コスト(予測)

この3つのデータは、未来の予測データなので正確なデータがあるはずがありません。それでも、会社の重要な意思決定をサポートするためには、今ある手元のデータでその事業が会社に利益をもたらすのかどうかを数値ではじき出さないといけません。

そのときに使うのがフェルミ推定の考え方です。

具体的には、売上予測であれば、その商品がターゲットとする顧客層の人数を割り出し、そこから何パーセントの人数が商品を使うか? どれくらいの期間、どれくらいの数量を使うか? などを割り出し、年間の売上予測を作っていきます。

製造コストや研究・開発コストの予測であれば、過去の似たような自社事例のデータを元にして、大体の予測の数値を作っていきます。

そして、それらのデータを組み合わせて、その商品を自社で販売したときのキャッシュフローを評価していくというプロセスです。

フェルミ推定は、就職や転職活動に必要なだけではなく、あらゆるビジネスにおいて、先が見えない将来を予測するための重要な思考プロセスと言えます。

フェルミ推定の事例②:レポートされた数値をクロスチェックする

さて、冒頭の話に戻りたいと思います。

私の現在(記事執筆時:2018年1月)の職種は、ビジネスプランニング&アナリシスといって、事業部門の年間計画と実績をコントロールしていき、トップマネジメントに分析結果を報告・相談しながら、その事業部門をファイナンス・アカウンティングの観点でサポートしていくことです。

そのため、今年度の年間計画と実績、また次年度の年間計画を日本の事業部ヘッドに提案・報告し、その結果をアメリカ本社に説明する必要があります。

そして、その報告を日本事業部ヘッドにしていた時に、こんなQAセッションがありました。

(事業部ヘッド)『今年度の年間予算は◯◯億円で、ここまでの実績が◯◯億円。そして、残りの予算が◯◯億円か。なるほど。ところで、1人あたりの残り予算はいくらぐらいになる計算だね?』

(私)『1人あたり◯◯万円です』

(事業部ヘッド)『ふむ、ちょっと数字が小さい気がするな。ちなみに、最新の従業員のヘッドカウント(人数)は何人だったかな?』

(私)『◯◯人です。ここには契約社員の数も含んでいます。』

(事業部ヘッド)『ああ、そういうことか。契約社員含めた数で考えて、従業員数 X 一人あたりの予算=◯◯ 億円、ということか。ふむ、これならまあなんとかなるだろう。よし、これで行こう。』

(私)『承知しました』

このやりとりをしている時に、『ああ、事業部ヘッドは自分なりにフェルミ推定でクロスチェックしているんだな』と私は感じました。

どういうことかと言うと、以下の2つの数字が大きく外れていないかどうかをチェックしていた、ということです。

  • 私が実務担当者として、一つ一つの実際の数値に基づきボトムアップで算出した数字
  • 事業部ヘッドが、自分の知っているデータに基づいて、フェルミ推定を使いながらざっくりと出した数値

もし、上記の2つの間に大きな数字の乖離があった場合には、どちらかの前提条件が間違っている可能性が出てくるので、それを突き止めて、ミスや抜け漏れを防げるという目的もあります。

また、事業部ヘッドも、単に報告された数字を鵜呑みにせず、自分の頭である程度ざっくりでいいので、金額の規模感を掴んでおきたかったという意図もあったと思います。

このように、フェルミ推定は、自分以外の誰かが作成した数値について、『本当にその数値が妥当なものなのか? 前提条件がおかしかったりしないか?』ということを、大枠で短時間でチェックする、という使い方もできます。

むしろ、マネジメントレベルが上がっていくにつれて、このようなクロスチェック&自分の理解に使う方が増えてくるかもしれません。

まとめ: フェルミ推定を日々のビジネスで使ってみる

ここまでの内容を簡単にまとめます。

  • フェルミ推定とは、今ある手持ちデータから、欲しい数値の概算をつくりだす思考方法。
  • 例えば、新規プロジェクトの事業評価など、誰も知らない将来の数値を予測する時に必要な思考方法。
  • また、第三者が作成したレポートの数値をざっくりとクロスチェックしたり、自分なりに数値を腹落ちさせたりする時に使うこともある。
  • マネジメントレベルが上がると、後者のような数値のチェック&理解に必要となる思考プロセスと言える。

いかがでしたでしょうか。

フェルミ推定は、就職活動や面接活動という限定された場面だけではなく、我々ビジネスパーソンがビジネスで扱う数字を意味のあるものとして、誰かに提案したり、また自分で理解したりする時にも非常に重要な考え方だと私は思います。

日頃扱っている数字を、『これは本当に妥当な数値なのか? 前提条件がおかしかったりしないか?』というような観点で、自分なりにフェルミ推定を使って考えてみるのも、我々のビジネススキルを磨く良いトレーニングかもしれません。

本記事は以上です。フェルミ推定に興味を持っている人なら、以下の数字分析に関する関連記事もおすすめです。ぜひ読んでみてください。

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(参考書籍)フェルミ推定と言えば、この本。少し古いですが、分かりやすいのでオススメです。

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ippo
本サイトの運営者。社会人になった後、周囲から仕事ができないと思われて、自分の人生が真っ暗闇に感じた辛い日々を過ごす。その後、奇跡的な復活劇を遂げ、その勢いのまま、グローバルプロダクトマネジャーを経験。全く喋れなかった苦手の英語もビジネスで会話ができるレベルまで押し上げ、2019年6月からはアメリカに赴任し、グローバル・リーダー/マネジメント達と仕事をしている。 専門分野は、プロジェクトマネジメント、アカウント・ファイナンスなど。自分のように、仕事で悩んでいる人や大きな壁を感じている人が現状打破できるように、という想いで2017年7月に本サイトを立ち上げた。
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