この記事は、仕事で先輩や上司に「ちょっとよく分からない、、もう一回説明して?」と言われた経験がある人や、物事の言語化に苦手意識を持っているビジネスパーソンに向けて書いています。
そんなあなたに、どうしても伝えたい解決策があります。
単純明快です。より『具体的』に考える。たったこれだけ。
私も何度も経験していますが、頭の中で言いたいことがあったはずなのに、いざメールを書こうと思っても、うまくかけない場合があったり、
いざプレゼンしようと思っても、言葉がスラスラと出てこなかったり、
自分の頭の中ではできていたつもりなのに、それを誰かに向かって伝えようとすると途端に行き詰まってしまうことは、多くのビジネスパーソンが経験している悩みではないでしょうか。
筆者は現在(執筆時2021年3月)、グローバル企業の駐在員として、アメリカの会社に赴任しており、約400億円の研究開発予算を管理するファイナンス・ポートフォリオ・リードとして、日々、シニアマネジメントやプロダクトリーダーと働いています。
私は帰国子女でもなく、英語も中学校からずっと苦手科目で、「海外駐在ギリギリOKまたはアウト」のレベルでアメリカに赴任してきていますので、アメリカのネイティブたちと仕事をしていくことにとても苦労してきました。(現在も苦労しています、笑)
そこで、何が大事だったかというと、伝えたいことの言語化です。
母国語ではないからこそ、より一層、言語化を徹底しないといけなかったわけで、そうする最も有効な手段が、『他のどのネイティブたちよりも、具体的に考える』ということでした。
そして、よくよく考えると、言語化するということは、英語だろうが、日本語だろうが、プロセスは同じだと気づきました。
当たり前の話ですが、単純に、アウトプットする形式に違いがあるというだけのことです。
では、言語化するとは、どういうことなのか? 具体的に考えるとは、一体どういうことなのか?
ここから、一緒に見ていきましょう。
言語化するとは、どういうことか?

言語化するとは、「言語」という名詞の能動的な意味合いです。
したがって、「言語」とは何かがわかれば、自ずと意味がわかってくるはずです。
では、「言語」とは何か?
現代の言語学の巨頭ノーム・チョムスキーは、「言語とは “思考” や “情動” を互いに伝達(Communicate)しあう1つの方法である」と述べています。
例えるならば、言語とは、買い物にいく時の『買い物バッグ』のようなものではないでしょうか。
買い物バックが薄いビニール袋であれば、帰り道の途中で破れて、買ったものを落としてしまうかもしれません。
買い物バックが小さければ、買ったものを全部持ち帰れないかもしれません。
買い物バックに求められるのは、買ったものを、傷つけずに、買ったままの状態で、自宅に持ち帰ることです。
言語の話に戻ると、言語が運ぶものはなんだったか?
ノーム・チョムスキーによると、言語が運ぶものは、自分の「思考」や「情動」でした。
つまり、言語化するとは、自分の「思考」や「情動」を、そのままの状態で、相手に運ぶということです。
言い換えると、自分の頭の中にある「思考」や「情動」を、相手の頭にコピー&ペーストする、とも言えます。

言語化とは、買い物バッグのように、買ったものをそのまま自宅に運ぶ行動であり、
また、Excelなどの表計算ソフトのように、自分の頭の中の思考や情動を相手にコピペする行動であると言えます。
ここまでは、ふわっとした話だったかもしれません。早速、具体的に考えていきましょう。
なぜ、頭の中で考えていることが相手に伝わらないのか?
なぜ、仕事で先輩や上司に「ごめん、ちょっとよく分からなかった」と言われてしまうのか。
それは、買い物のたとえ話で言えば、買ったものをどこかに落として来てしまっている状況です。
言い換えると、その先輩や上司の頭の中に、自分の頭の中にある思考をコピーペーストできていない状況です。
例えば、真っ赤に熟れたリンゴを思い浮かべてください。

これを、リンゴという単語を使わずに、言葉だけで、どうやって説明すればよいでしょうか?
『丸くて、赤い、食べ物だよ。』
と伝えたとします。
そうすると、うまくいけば、リンゴを思い浮かべてくれるかもしれませんが、梅干しやさくらんぼを頭に思い浮かべてしまう人がいるでしょう。
ビジネスシーンで、「ごめん、ちょっとよく分からない。もう一回説明して?」と言われる場合は、この後者のような状態で、相手がこちらの考えを間違って理解しているか、そもそも、考えがうまく思い浮かんでいない状態です。
ではどうすればいいか?
リンゴについて、より具体的に考える、が解決策です。
赤い熟れたリンゴの特徴を具体的に列挙していきましょう。
- 真っ赤な色
- 熟れていて、ほんのり甘い香りが漂っている
- 丸い
- 果物
- 大人の握り拳くらいの大きさ
- 食べると甘くて、瑞々しくて、シャリシャリとした食感
これだけ具体的にすれば大丈夫でしょう。
この具体的な内容を、相手に伝えれば、ほとんどの人が、「ああ、赤いリンゴのことを言っているのね」と理解するでしょうし、さらに、とても食べごろの美味しそうなリンゴだなと感じてくれるでしょう。
つまり、具体的にするということは、「梅干し、さくらんぼ、青リンゴなどの、他の解釈の可能性を消す」ということを意味します。
言いかえれば、相手が間違えて理解する可能性を限りなくゼロにしていく、という作業です。
『キミは言葉足らずだね?』と言われた経験がある方は、この具体化が足りていない場合があるのです。
具体化を怠ると、相手はこちらの言っていることを理解できないばかりか、場合によっては全然違う意味で捉えてしまう可能性があります。
冒頭の話に戻ると、なぜ、自分の頭の中で考えていることが、相手に伝わらないのか?
それは、具体的でないから、という話です。
例えば、私はファイナンスという職種もありますが、何か提案をする際は、提案によって得られる効果と、それに必要なコストを数字で提示します。
当たり前ですが、シニアエグゼクティブたちに『この度、画期的な新企画を提案するので、何卒承認お願いします』と言っても、全然伝わりません。
『具体的に、私に何を承認して欲しいの?』 と言われるのがオチです。
したがって、『今後3年間の10億円のコスト削減プロジェクトに、今年度1億円の予算承認をお願いします』と、何の承認をお願いしたいのかを具体的に言わないと、そもそも交渉の土俵にも立つことができません。
具体的にするというのは、数字だけとは限りません。
例えば、『新しい社内ルールを4月から開始します』というよりも、
『新しい社内ルールを4月から開始します。ただし、開発部と営業部は影響範囲を加味して9月開始にします』の方が具体的です。
これは、「ただし」という表現で、原則対応の部署と、例外対応の部署を具体化しています。
「ただし」や「○○の場合はこの限りではない」のような例外対応に言及するやり方は、法律を勉強するとよく出てきます。これは、法律が適用される場合・されない場合をより具体的にしてくれます。
私も本ウェブサイトの記事を書くときに、もっとも気を遣っているのは、具体例や自分の実体験をどのように盛り込んでいくか?という点です。なんだかうまく伝え切れていないなと感じる時は、だいたい具体化されていない場合です。
さて、少しまとめます。
なぜ、頭の中で考えていることが、相手に伝わらないのか?
くどいかもしれませんが、それは、具体的でないから、です。
『具体的に考える』には、具体的にどうすればいいのか?

ここまでで、言語化するために、具体化に考える・書く・話す・伝える、ことの重要性が腹落ちしてきたのではないでしょうか?
そこでまた次の疑問が出てきます。
具体的に考える、とは、具体的にどうすればいいのだろうか?と、笑。
とてもシンプルな方法があります。
それは、抽象的な事柄について、自分なりに具体的に考える、ということです。
分かりやすい例をあげましょう。
例えば、リーダーとリーダーシップの違いは?
と聞かれて、すぐに答えられますか?
これまで考えてきたことがある人は、サラッと出てくるかもしれまんが、『何が違いか分からないんだけど?』という人もいるかと思います。
例えば、このリーダーとリーダーシップの違いを具体的に自分の頭で考えることは、思考の言語化のよいトレーニングになります。
これは私がプロジェクトマネジャーになった時に、考え続けたテーマの一つです。
具体的には、これだけではなく、例えば、
- リーダーの役割(Role)とは?
- マネジャーの役割(Role)とは?
- そもそも役割(Role)とは何か?
- リーダーシップとリーダーの違いとは?
- リーダーとマネジャーの違いとは?
なども日々の業務を踏まえて、自分の言葉で具体化していました。
他にもファイナンスに異動してきてからは、
- ファイナンスの本当の役割とは何か?
- ファイナンスという立場で何ができるか?
- ファイナンスの組織として何をすべきか?
ということなども、自分の言葉で考えてきました。
ポイントは、『〇〇とは何か?』 という短い問いを自分に立てることです。
この自分への問いは、物事を具体的に考える力を高めてくれます。
私がうだつの上がらない本当に何も考えられないダメ社員だった頃を知っている上司からすれば、おそらく、今の私は全くの別人に見えると思いますが、その違いは、
- 物事について、表面的に理解した状態のまま放置しているのか、
- 言葉の一つ一つについて、具体的に自分で考えて、自分なりの答えを持っているのか、
だと思います。
この『〇〇とは何か?』という自問自答が無意識に体に染み付いてると、仕事が本当に捗るようになります。
例えば、上司から、『ねえ、Ippoくん、過去のプロダクトごとの費用実績をまとめておいてくれない?』というような曖昧な指示がきた時などは、
- 過去って、いつからいつまでですか?
- この場合のプロダクトの定義は、〇〇ですか?
- 費用というのは、P/Lにヒットしてる数字だけですか?
- まとめるというのは、グラフで推移を可視化するという意味ですか?
というように、一つ一つの言葉の解釈について、自然に敏感になります。
これは逆に言えば、自分がエグゼクティブにレポートを作る際に、どんな言葉を使えば、誤解なく相手に正確に自分の意図を伝えられるか?ということが分かるようになる、ということです。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
言語化するのが苦手だと感じている人は、何か言葉を選んで、〇〇とは何か?ということを、自分の言葉で具体化することが一番です。
何から始めればいいか分からないという方は、まず、
- あなたの仕事は何ですか?
- あなたにとって、やりがいとは何ですか?
- あなたが仕事で残した成果は何ですか?
- あなたが仕事で大事にしていることは何ですか?
このあたりの問いを改めて具体化していくのが良いと思います。簡単そうに見えて、実はとても難しくて、奥が深い問いだと思います。
今までも考えたことがあった方も、さらに具体化することも十分価値があると思います。
普段から物事について具体的に考えて言語化してきた人はスラスラと言葉が出てくると思いますが、あまり考えてこなかった人は、とても表面的な説明に留まるはずです。
もし、あなたが将来、管理職を目指しているのであれば、先程私が列挙した、マネジメントやリーダー、リーダーシップなどの言葉について、自分なりの具体的な考えを持っておくことをオススメします。できるだけ、具体例や自分の実体験を交えながら。
たとえば、部下が『〇〇さんにとってマネジメントって具体的にどういうものですか?』と聞かれた時に何も言葉が出てこなかったとしたら、それは大問題になりますから。
上司たるもの、日常業務をするうえで、流石にマネジメントについて考えていないはずがないですからね、笑。ちなみに、私の過去の上司で具体性が無い回答をしていた上司はクビになっていました。
とにもかくにも、具体的に考える、です。
この記事が言語化に苦手意識をもつ方の参考になったのであれば、これ幸いです。