細谷功さんの言葉は、我々ビジネスパーソンにとっての偉人の名言のようです。
なぜ、これほどまで染み渡るのでしょうか?
それは、細谷さんは、抽象と具体の両方を往復しながらバランスよく話してくれているからだと私は思います。
ライフハック系の書籍も面白いですが、基本的に具体例の話が中心です。一方で、学者肌の書籍は抽象的な話がメインになりがちです。
一方、細谷さんは、この両方を意識的にバランスよく配置してくれているので、我々ビジネスパーソンにとっては、学びの量が多いのだと思います。
私も日々、このウェブサイトで仕事に関する情報発信をしていますが、「頭の中にあるイメージをどうやってわかりやすい言葉に『言語化』するか?」という点で、いつも悩んでいます。
だからこそ、細谷さんの流れるようなロジックの通った文章を読んだときに、感動を覚えると共に、その瞬間を切り取って残しておきたいと思いました。私のインスピレーションと共に。
ということで、この記事は、自分のために作った細谷 功 氏の名言集+(私の思考プロット)です。
最初に細谷さんの経歴を紹介したのち、グルーピングした細谷さんの名言を私の一言コメントを添えて提供して行きたいと思います。
みなさんにもきっと目から鱗の内容だと思うので読んでみてください。(ビジネスパーソンなら、書籍も買って読んだ方がいいです、本当に気づきが多いので)
細谷 功 氏の経歴
1964年、神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業。東芝を経て日本アーンスト&ヤングコンサルティング(クニエの前身)に入社。2012年より同社コンサルティングフェローに。
ビジネスコンサルティングのみならず、問題解決や思考に関する講演やセミナーを国内外の企業や各種団体、大学などに対して実施している。
著書に『地頭力を鍛える』、『アナロジー思考』、『「Why型思考」が仕事を変える』、『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』、『象の鼻としっぽ コミュニケーションギャップのメカニズム』などがある。
自分の思考のクセ・口癖を客観視してみる

- 自分本位の思い込みを排除するための特効薬はないと思います。まず、人間というのはいかに自分勝手に思考するものか、ということをよく認識すること。そのうえで、自分を客観視することを愚直に続けるしかありません。
- いつもの口癖をやめるということは、思考にも影響を与えます。「情報がない」「お金がない」という言い訳ができなくなれば、いまあるものに目を向けざるを得なくなります。すると自然に、「いまある情報でわかることは」「いまある予算でできることは」という思考へと変化していきます。
「無知の知」に気づくには、自分が無知であることを知る

- 「基本が大事」という言葉を聞いた時、達人ほど「その通りだけどそれができないんだよなあ・・・」というが、「中途半端にできる人」は「そんなことよくわかっているんだけど、『その先にあるテクニック』を知りたいんだよなあ・・・」という。
- 「論理的でない人」の最大の問題点は、自分が論理的でないことに気づいていないこと。「非効率な会議が多い」会社の最大の課題は「実は、それが非効率ではなく必要なものである」と思っている社員がほとんどであること。
仕事で成果を出せない人は、そもそも「考えていない」

- 仕事で成果を出せる人とそうでない人の違いは、頭の良さというよりも、じつは「考えているか、いないか」という点にあります。もっと厳密にいえば、「考える」という行為の前には「考え始める」という高いハードルがあり、多くの人はそれができず、思考停止状態に陥ってしまっているのです。
- 思考停止型人間の口癖を見てみると、他人や環境のせいにする他責の言葉が並んでいます。たとえば「情報がないのでわかりません」というのは、「情報が不足している」という状況のせいにして言い訳をしているにすぎません。他責の言葉を言った時点で、「私はもうこれ以上考えません」という思考停止宣言をしたようなものです。
- 「考えていない」とは、指示されたこと、見せられたことをただそのまま実行に移すだけで、誰も直接は口にしたり表現したりしていない「その先」を見ていないことを意味します。つまりその逆の「考えて仕事をする」とは、指示されたこと見せられたことの「先」や「背景」に思いをめぐらせるということです。
- 「先」や「背景」は「目的」や「原因」という言葉に言い換えられます。また一言で言えば「理由」(Why)と表現できます。「未来に対してのWhy?」が目的であり、「過去に対してのWhy?」が原因ということです。つまり「考えて仕事をする」とは、表面的に見えることや聞いたことに対して、常に「Why」をぶつけることを意味します。
考えるとはどういうことか?

- 「自分の頭で考える」ということは、すべてのことを鵜呑みにせず、言われたことや見聞きしたことに対してすべて疑ってかかり、必ず自ら検証し、他人とは違う自分なりの見解を導き出すこと。なぜなら、「自分の頭で考える」ことの対極にあるのが「他人の意見にむやみに従う」ことだからです。
- 考えるとは「正解を求めないこと」。「自分の頭で考える」ための前提条件として、世の中には正解がないものの方が圧倒的に多いんだと思うことが重要です。特に、受験慣れした優等生にその傾向がありますが、必ず「正解」がどこかにあるからそれを探せばいいという姿勢の人が大部分であるように思えます。
- 「自分の頭で考えたい」人が他人に求めるのが「意見」である一方で、思考停止の人が求めるのが「アドバイス」。「意見」=解釈はその人なりのものなので、自分がどうするかは自分で考えるという位置づけの助言。「アドバイス」=解釈も含めて「あなたはこうするべきである」というところまで踏み込んだ助言。
- 「目に見える」具体的なものがアドバイスで、「目に見えない」抽象的で、具体化する前の状態のものが意見です。「意見」は聞いても「アドバイス」は疑ってかかるべき。
- 考えるとは「そもそも」という思考回路のこと。たとえば、「職場のモチベーションを上げるために新しい働き方を考えよう」という問題が提起されたとします。このとき、「そもそも」という思考回路の人は、与えられた問題の上位目的である「職場のモチベーションを上げる」ことを達成するにはどうすればいいかと、問題そのものを定義し直そうとします。
- 考えるとは「質問すること」。考える世界で重要なのは、問題そのものを発見するための「質問」です。
- 「自分の頭で考える」とは「見えないものをつなげる」ということ。「つなげる」という行為に関しては「結果と原因」、「手段と目的」、「部分と全体」といった「見えやすいもの」と「見えにくいもの」の間の関係性を見出すというのがポイントです。
- 「今、家にあるもの」を抽出するときの頭の使い方(知識型)は「イメージしたものを列挙する」という形で具体的にイメージできるものをそのまま出すというもの。「今、家にないもの」を出そうとすると、「家に入らないほど大きいもの」とか「高くて買えないもの」とかいった具合に何らかの視点を出してから、それを具体化して個別のアイデアにする。(思考型)
- 一見関係がないように見えるものでも、「要するになんなの?」と単純化して考えることで、意外な共通点が見えてくるものです。
3つの順序で、思考の後戻りや無駄を減らす

- 思考の後戻りや無駄を減らすには、「結論から考える」「全体から考える」「単純に考える」の3つを習得するのが一番でしょう。これができるようになると、仕事の生産性は圧倒的に上がります。
- 何らかの報告書を作成する仕事を頼まれたとき、「結論から考える」ことができない人は、とりあえず参考になりそうなデータを片っ端から集めようとします。しかし、こうやって無目的にデータを集めていくと、最終報告には何の役に立たないデータをたくさん集めてしまう可能性が高い。
- 全体から考えるというのは、自分の思い込みを極力排除し、課題を俯瞰して客観的に把握することでもあります。これができると、コミュニケーションの誤解や食い違いが激減し、仕事の効率も格段に上がります。
- 単純に考えるというのは、ものごとをできる限りシンプルに捉えることで意思統一をしやすくし、仕事の効率を上げることです。せっかく仮説を立てても、それが複雑でわかりにくいものだと、効率は上がりません。とくにチームでやる仕事の場合はそれが顕著です。会議でも、議題が複雑でわかりにくいと、なかなか結論に達しませんよね。
「判断材料が少ないから意思決定できない」は間違い。

- 判断材料がそろわないから揃うまで結論は出せないと考えていると、いつまでたっても結論は出ません。10の情報で答えが出せない人は、100の情報があっても答えが出せないでしょう。なぜなら情報が増えれば、判断を迷わせるネガティブな情報も増えるからです。
私の会社での、意思決定ができない某部長の話。今ある判断材料でポジションをとればいいのに、とれない部長がいます。そして、お役御免への道が・・・
What型育成=ティーチング、Why型育成=コーチング

- What型育成では、知識を伝達することになりますが、時にはあえて「高圧的な態度」が必要となります。いわゆる体育会型の上下関係では、後輩などに一種の「思考停止」を要求することがしばしば見られます。これは組織で必要な一定の行動様式をごく短期間で身に付けさせるためとも解釈できます。一方、Why型育成では相手に思考する心の余裕を与え、自主的な発言を促すために、「友達のように」接することも必要になるでしょう。
Why型育成=コーチングの関連記事です。
目的意識を持ち、自分の仕事の本当の目的を自問自答せよ

- どんな仕事をするときでも、「この仕事の目的=ゴールは何だ?」「それって、本当に目的か?」と繰り返し自問するようにしています。たとえば会議のときでも、なんとなく始めないで、まず「今日の会議の目的は何か」と考える。それで、「今日は○○のレビューをすることだ」と思ったら、すかさず「それって本当に目的か?」と自問します。すると、「○○のレビューをする行為自体がゴールではない。メンバー全員の意思統一が図れた状態にすることこそが、今日の目標着地点だ」といったことに気づくのです。
- 目的が「状態」ではなく、「行為」になっているときは、本来の目的・目標でないことが多いので、「それって本当に最終目的地か?」と自問するようにしています。
- モチベーションは、上位目的が明確なほど高まります。モチベーションが低い人の多くは、「目の前の仕事=手段」だけに気を取られがちです。
目的意識に関しては、以下にもまとめているので、オススメです。
目標志向を持ち、最終成果物のイメージを顧客とすり合わせよ

- 目標の立て方は本の目次づくりに似ているかもしれません。長期的な目標が目次の大見出しにあたり、それを補うための短期目標が小見出しに相当するといえばよいでしょう。大切なのは「全体から」「結論から」決めていくことです。
- 顧客など相手のある仕事の場合は、目標設定を行う際に、相手の期待値を確認しておく必要があります。100点を目指すのはいいとして、自分が100点と思っているレベルが、相手にとって20点であったり、300点であったりするのは珍しいことではありません。方向性のベクトルが間違ってしまっているケースも少なくないでしょう。
- 仕事の途中でも、目標に対する顧客などの相手の期待値と方向性を確認しながら、必要に応じて微調整を行っていくのが、失敗を回避するコツです。いったん未完成の状態で相手に見せ、反応を確かめてから最後の詰めを行えばよいのです。
成果物に関する関連記事はコチラ。
ダメな会議あるある

- ダメな会議でよくあるのは、「○○の報告」などの議題に代表されるように、そこで最終的に何がしたいのかという目的が共有されていないパターンです。合意をとりたいのか、単に状況を共有したいのかが明確になっていない。これでは時間ばかりが取られ、結局は何も決まらなかったということになりかねません。
- 会議を行う際には、WHY=なぜ(目的・目標)、WHAT=何を(協議事項)、HOW=どうやって(実施形式、参加者、場所など)の順に決定していくものですが、実際にはHOWしか決まっていない会議も多いのです。
- 会議がむやみに長引くのを防ぐには、開始時に終了時間を決めておき、それまでにざっくりとしたものでもいいので一度、結論を出してしまうことです。完ぺきな結論が出るまでは終えたくない気持ちはわかりますが、2時間の会議を3時間に延ばそうとしたところで85点が87点になる程度のことです。
- 会議を活性化させるには、何をおいてもまず目的を明確にすることです。それに尽きるといっても過言ではないでしょう。ところがほとんどの会議では、その当たり前のことが実践されていません。
- 会議では開始時に目的を明言してそれを全員で共有することを必ず行います。また、開始後は5分おきに目的に立ち返ります。
- アイデア出しのように全員が発言することが大事な会議もあれば、本当は落としどころが決まっていて、キーパーソンを説得して合意してもらうことが目的の会議もあります。あるいは、結論の方向性が明確で、それに向かって一気に収斂させて結論を出したいのか、ブレーンストーミングのように、そもそも脱線するのが前提で発散したまま終えてもいい会議なのか、明確にすることで出席者にベクトルは揃います。
会議の目的と成果物をしっかり定めたら、会議の座席にも留意するとよいです。
数字やデータを扱う人が気をつけるべきこと

- 調べた数字やデータをそのまま報告する人も少なからずいますが、こういう人も思考が停止していると言わざるを得ません。今後は、「数字上ではこのような結果になりましたが、私はこう思います」というようにしましょう。そもそも、上司が本当に知りたいのは数字やデータそのものではなく、そこから何か読み取れるかということです。「私はこう思います」と自分なりの考察を付け加える癖をつければ、思考が働くようになるだけでなく、上司からの評価も高まります。
- 実測値などの根拠に基づいて結論を出すべき場合は、いったん仮の数値を使って推定値を概算し、あとから正しい数値に入れ替えて検証するという方法もおすすめです。拙速を恐れずに、とりあえず結論を出す。あとは検証を行って結論の精度を揚げる。それを実践すれば、結論への道のりは飛躍的に短縮されます。
不満やプレッシャーは前向きに捉えるべき

- 不満もプレッシャーも感じない人は、ずっとゼロ地点で留まっているようなもの。思考停止状態に陥っていて、マイナスのエネルギーを発することもない代わりに、プラスのエネルギーを発することもありません。だから、不満やプレッシャーを感じている人は、自分はそれを前向きなエネルギーに変えていける可能性があるのだと自信を持っていい。
- プレッシャーというのは、「失敗したらどうしよう」という心理とほぼ同一です。ですから、上位目的が明確で、「今回のプレゼンが失敗しても、また別の手段があるさ」と考えられる人は、大事な場面でもそれほどプレッシャーを感じないでしょう。
抽象化を制するものは思考を制す

- 抽象化の最大のメリットは、複数のものを共通の特徴を以ってグルーピングして「同じ」と見なすことで、一つの事象に置ける学びを他の場面でも適用することが可能になることです。つまり「一を聞いて十を知る」
- 抽象化のツールとして「シンプルな図解」があげられます。図解は、「世の中の事象の関係性」の「デフォルメされた似顔絵」といってもいいでしょう。目や鼻や口は「同じ形」で表現され、それらの「相対的関係性」(大小関係や位置関係)のみを表現したものが図解です。
- 「たとえ話」は、説明しようとしている対象を具体的につかんでもらうために、抽象レベルで同じ構造を持つ別の、かつ相手にとって身近な世界のものに「翻訳」する作業といえます。説明した新しい概念や事例を、身近な事例で似ているものを使って説明するのです。
- 手段と目的の関係も、すべて相対的なものです。目的一つに対して手段は複数という形で階層が成立しますが、目的はつねに、さらに抽象度の高い「上位目的」が存在します。たとえば、「レビューすること」自身が目的と考える部下Bさんに対して、たとえば「投資の意思決定をするため」とさらに上位目的で考える上司Aさんは、それが単なる手段の一つにすぎないととらえます。
- 一般に斬新な製品や、革新的な仕組みを作り上げるためには「多数の意見を聞く」ことは適しません。多数の意見はそれぞれの具体レベルに引きずられて、どうしても「いまの延長」の議論しかできなくするからです。逆に、「いまあるものを改善していく」場面では、なるべく多数の人から意見を吸い上げることが必要になります。
- 基本的に大多数の顧客は「いまあるものの改善」という、具体的なレベルの要望しか上げてきませんから、これに右往左往するということは本質的な解決にはつながりません。大ヒット商品は顧客の声を先読みし、「抽象度の高い」レベルでの顧客の声を反映した結果生まれるものです。
- 抽象は「解釈の自由度が高い」ことを意味します。一般的に本(文字)の表現のほうが抽象度が高いので、人によってまったく異なる解釈(頭の中での具体化、イメージ化)をしている可能性がありますが、映画の場合にはその可能性は相対的に少なくなります。
- 「こんな感じで適当にやっといて」と言われて、「いい加減な『丸投げ』だ」と不快に思う人は、具体レベルのみの世界に生きる「低い自由度を好む人」です。こういうタイプの人に、自由度の高い仕事の依頼をしたあとに、「たとえばこんな形で」と具体的なイメージの例を伝えてしまうと、それを「たとえば」にならず、文字どおり「そのまま」やってしまいます。
- 逆に、自由度の高い依頼をチャンスにとらえ、好きなようにやっていいんですね?」とやる気になる人が、「具体←→抽象」の往復の世界に生きる「高い自由度を好む人」です。
- 上流の仕事(抽象レベル)と下流の仕事(具体レベル)では、ほぼ「違う仕事」といってもいいほど、必要な価値観やスキルセットが変わってきますが、徐々に以降していくこともあって、明確にこのことが意識されることはあまりありません。
- 上流の仕事で重要なのは個人の創造性で、下流で必要なのは、多数の人数が組織的に動くための効率性や秩序であり、そのための組織のマネジメントやチームワークといったものの重要性が相対的に上がっていきます。
- 下流の仕事は多くの人が関わったほうがレベルが上がり、速く安くなりますが、上流の仕事の質は、むしろ関わった人の量に反比例します。人が関われば関わるほど品質は下がり、凡庸になっていくのが上流の仕事といえます。
- 抽象レベルで二項対立をとらえている人は、そこに「考える視点」が出てきます。たとえば何人もの人の意見がどこに位置づけられるのか、いわば地図でいえば「西と東」あるいは「南と北」という視点で全体を見渡そうとします。これに対して具体レベルでのみ見ていると、二項対立も「二者択一」に見えてしまいます。
- 哲学、理念、あるいはコンセプトといった抽象概念がもたらす効果は、個別に見ているとバラバラになるがちな具体レベルの事象に「統一感や方向性」を与えることであり、いわばベクトルの役割を果たしているのです。
- すべてを個別対応にすると、組織であれば一つ一つの意思決定にそれなりの責任者が対応して判断せざるを得なくなります。しかし哲学のレベルで方向性が共有されていれば、個別に見える案件もすべてその大きな方向性に合致しているかどうかで判断でき、効率的です。個別の行動の判断で困ったときの拠り所となるのも、「最終的に何を実現したいか?」という長期的な上位目的です。
- アナロジーとは類推のことで、異なる世界と世界のあいだに類似点を見つけて理解したり、新しいアイデアを発想したりするための思考法です。アナロジーとはいわば「遠くからアイデアを借りてくる」ための手法といえます。「たとえ話」もアナロジーの応用の一つで、新しい世界をを理解するために、すでによく知っている身近な世界の知識を応用することです。
- アナロジーとは、「抽象レベルのまね」です。具体レベルのまねは単なるパクリでも、抽象レベルでまねすれば「斬新なアイデア」となります。たとえば、活版印刷機はブドウ圧搾機から、回転寿司はビールのベルトコンベアから、あるいは生物からヒントを得た工業製品も数多くあります。
- 人間は個人レベルでは感情で動くことがほとんどですから、集団での目標を達成するためには、感情に訴えることが不可欠です。そのような場面に必要なのは具体例、個人的な体験やストーリーということになります。ここでも、具体と抽象をうまく組み合わせて使い分けることがポイントです。
- 状況と相手に応じてちょうどよい抽象度でコミュニケーションすることが重要です。「抽象的だからわかりにくい」ということがクローズアップされがちですが、じつは「具体的すぎてわかりにくい」こともあるのです。たとえば、子供は成長するにつれて「あいちゃんと遊んだ」が「友達と遊んだ」になり、「ポッキーを買った」から「お菓子を買った」に抽象度が上がっていく。
- 経験した世界が狭ければ狭いほど、他の世界のことがわからないにもかかわらず、自分の置かれた状況が特殊であると考える傾向があります。多種多様な経験をすればするほど、「ここの部分は違うが、ここの部分は同じだ」というふうに共通部分にも目が向けられるようになってきます。
- 私たちが小学校から何年にもわたって学んできた「二大強化」は国語と数学(算数)です。これはすなわち、言葉と数、要するに抽象化を学んでいるわけです。「数学なんか勉強しても、四則計算以外は何の役にも立たない」という言葉をよく聞きます。大変皮肉なことですが、そのようなセリフが出てくること自体が、数学による「抽象化の学習」が失敗していることを意味するのです。
- 抽象レベルで見れば数学の「考え方」はどんな職業の人にも毎日必ず役に立つはずなのです。国語がわざわざ膨大な時間をかけて、難解な長文を要約した理、自分の考えをまとめたりする練習をするのは、抽象と具体の往復運動という頭の体操のためなのです。
参考までに、細谷功さんの書籍を5冊ほど列挙しておきます(他にも紹介したい本もありますが、またの機会に)。どれも読んで損はありませんが、私の一番のオススメは、やはり「具体と抽象」です。
具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ /dZERO/細谷功