仕事やプライベートで嫌なことがあった時、あなたはどんな反応や解釈をしますか?
例えば、以下のような場面を想像してみてください。
- 仕事の依頼メールを送ったのに、締切期限を越えても返信がない。
- レストランで、注文した料理が30分以上経っても出てこない。
- 高速道路の渋滞で、2時間以上もダラダラとしか進まない。
成果を出しているビジネスパーソンほど、こういう場合も冷静にポジティブに捉える傾向があります。
それは生まれつきの性格ではなく、意図的にコントロールされたものです。なぜなら、彼らは、そうすることが、自分にとってメリットがあると知っているからです。
ということで、この記事ではいくつか事例を交えながら、「事実と解釈」「刺激と反応」の関係を説明していきたいと思います。
刺激と反応の間には選択の自由がある(書籍:7つの習慣)
みなさんは『7つの習慣』(著スティーブン・コヴィー)を読んだことはあるでしょうか?
その書籍の中に、『刺激と反応の間にはスペースがある』という記載があります。
ここでの 刺激 と 反応 は “事実” と “解釈” と捉えることも可能です。
例えば、仕事でミスをしてしまった時(刺激)、「ああ、俺はこんなこともできないダメな奴なのか。もう嫌だ」とネガティブに反応してしまうのか、「人間なのだからミスはあるさ。大事なのは、どうしたら次はミスをしないかだ!」とポジティブに反応していくのかは、本人の選択の自由という意味です。
この刺激と反応の間にあるスペースについて、Michael Hyattさんが分かりやすいたとえ話をしていました。
「このスペースは、映画を見ている時の “停止ボタン” のようなものだ。何か嫌なことがあってもすぐに反応せずに、一旦、停止ボタンを押すことができる。 そして、停止中に、どんな反応をしようかじっくり考えることができる。これこそが、我々を人間たらしめているものだ」と。
(原文)In his bestselling book, The Seven Habits of Highly Effective People, author Stephen Covey talks about the space that exists between the stimulus and the response. In that space is the power to choose. This space is like a giant pause button. We don’t have to react to every stimulus. Instead, we can pause, reflect, and chose our response. This is precisely what makes us human.
ちょっと想像してみてください。
あなたが、朝の満員電車の中で、息もできないぐらいすし詰め状態の中にいるとします。
途中の駅で、電車のドアが空いて、大きなスーツケースを持った外国人が急いで電車を降りていくのですが、その時に、あなたの体に「ドンッ」とぶつかります。
でも、その外国人は急いでいたようで、あなたには気づかずに、何も謝罪せずに出て行ったとします。
さて、この時に、どのような「反応」をしますか?
私は聖人君子ではないので、おそらく、一瞬「イラッ」とした反応はすると思います(笑)。でも、すぐに「停止ボタン」を押して、一度気持ちをフラットにします。
そして、「まあ、こういうこともあるか。朝の満員電車だし。これが嫌なら、電車に乗る時間をズラさないとダメだろうなあ〜。それにしても、あの外国人も気の毒だろうに、日本への観光で来たのに、こんなひどいラッシュに巻き込まれて。。帰りの飛行機には間に合ったらいいね」
というように、ちょっと落ち着いて思いを巡らせて、反射的に出てしまったネガティブな感情をポジティブに変えると思います。
これは一つの例でしたが、事実(刺激)に対して、自分の意思でどのような反応をするかを選べることが、人間がここまで進化して来た一つの理由だと思うのです。
動物は、事実(刺激)に対して、本能的に条件反射するだけで、そこに様々な反応を選べる選択肢(スペース)はありませんから。
事例:連日残業確定の仕事を振られた時の私の反応(解釈)
先日、私がアサインされているプロダクトチームのプロダクトリーダーから、新しい事業開発プランの事業評価を依頼された時のことです。
(リーダー)「一歩さん、今検討中のこの開発プランなんだけれど、事業評価をお願いできませんか? ベースシナリオと、そこから派生するアップサイド1つ、ダウンサイド2つの合計4つです」
要するに、4つの開発シナリオの事業評価なのですが、これで1週間の終電確定です。さらに土日出勤しないと間に合わないレベルの量です。しかも、経営層で意思決定するための評価なので、かなり高いクオリティーも必要。
さて、このように、残業確定の重たくてプレッシャーの高い仕事が舞い込んできた時、みなさんは、どのように思うでしょうか?
これ、私がその時にどう思ったかというと、
(私)「うわっ、美味しい仕事来た。 ゲッツ!!」
でした。
なんだか言い方が低俗で申し訳ないのですが、なるべく臨場感を持たせようとしたら、こんな表現になりました。
自宅に帰ってから、妻にウキウキしながら、こんな話をしたところ、
(妻)「えっ、私だったら『うわ〜嫌だな』って思うわよ。」
という私と真逆の反応でした。
私はよく周りからポジティブシンキングだね、と言われることがあるのですが、もともと先天的なものではなく、ビジネスをする上で必要なマインドセットに変えていった結果です。
あなたは、重たくてプレッシャーのある仕事を任された時、どのように解釈(反応)しますか?
事例(会社の取締役):水が入ったコップの解釈
先日、私の会社の取締役(外国人)のスピーチで、こんなことを言っていました。
(取締役)「ここにコップがあります。このコップには水が半分入っています。普通の人だったら、こういう場合は『コップにもう半分しか水がない、早くなんとかしなくちゃ』というように否定的に受け止めると思うのですが、私は肯定的に受け止めるタイプなので『まだコップには半分も水が残っているじゃないか。焦らない、焦らない』と思うんですよね。だから、我々のビジネスについても同じで、まだ今年度の成果は出ていないけれども・・・」
これを、事実と解釈に分けてまとめます。
- (事実)コップの中の水が半分
- (普通の人の解釈)コップの中の水が半分しかない、すぐに水を注がないと!(つまり、早く今年度の業績を出すために、なんとかしないと!)
- (取締役の解釈)コップの中の水はまだ半分ある。焦って水を注がなくても大丈夫(つまり、まだ今年度の業績は出ていないけど、焦らなくて大丈夫)
私はこれを聞いた時、すごいなこの人と感じました。
言うのは簡単だと思いますが、実際にグローバル企業の取締役レベルで、実践するのは大変だと思ったからです。
なぜなら、取締役レベルになると、社長や株主・債権者からのプレッシャーが物凄いと思いますし、多くの人を動機付けて、行動させて、結果を出させないといけないわけですから、成果を出すのは簡単ではありません。
実際に、思うような成果がまだ出ていない状態なので、周りからのプレッシャーは想像以上だと思われます。
にも関わらず、笑顔で飄々とスピーチしているわけです。
このスピーチを聞き、成果を出せるビジネスパーソンとは、事実をポジティブに解釈できるタフなマインドセットを持っていて、さらに、周りに良いエネルギーを振りまいていくことができる人なのだなと思いました。
まとめ:成果を出すビジネスパーソンは、事実(刺激)をポジティブに解釈(反応)する
私が思うに、成果を残せるビジネスパーソンは「事実(刺激)をポジティブに解釈(反応)することができる」という共通点があるように思います。
私の会社では、日本人も外国人も、シニアマネジメントクラス(いわゆる部長以上)になると、基本的に感情をコントロールできる人ばかりになってきます。
彼ら・彼女らは、まず感情的に怒らないし、事実をしっかり聞いて、一呼吸置いて、冷静な判断をする傾向があります。
一方で、一般部員に近くほど、瞬間的に、感情的な反応をする方も増えてきます。
仕事でも人生でも、思い通りに行かないことは多々あります。むしろ、思い通りに行かないことの連続と言ってもよいかもしれません。
また、仕事では、あまり気の進まない面倒な業務や、成功するか分からない難しくてプレッシャーのある仕事を任されることもあるかもしれません。
そんな時にこそ、一度、”停止ボタン” を押して、客観的かつ俯瞰的に、今の自分の状態を観察して、次にどんな反応をしようか考えてみてはいかがでしょうか?