【課題解決に悩みを持つ方へ】Why(なぜ?)の前に、○○を分析している?

【課題解決が苦手な方へ】なぜ(Why)の前に、○○を分析している?

この記事は、仕事で先輩や上司に「キミはなぜなぜ分析が足りないよ」と言われた経験がある人や、自分の課題解決力を伸ばしたいと考えているビジネスパーソンに向けて書いています

そんなあなたに、どうしても伝えたい解決策があります。

単純明快です。なぜなぜ分析をする前に、『どこどこ分析』をやるたったこれだけ。

『どこどこ分析』というのは私の完全な造語ですが、要するに、なぜ?(why)にいく前に、「どこ?(where)」を5回以上掘り下げようという意味です。

この記事を書くに至った背景は、先日、無料コンサルをしている時に、「抽象度の高い課題に対して、何から手をつけていいか分からなく悩んでいます。Ippoさんは、抽象度の高い課題に対して、どのようにアプローチしていますか?」と聞かれたことです。

まさに、目から鱗の質問でした。今では無意識にやっていますが、思い返せば、昔は私もとても苦労した悩みだったからです。

これまでの私自身の経験も含め、事業会社で働く多くのビジネスパーソンは、「なぜ?」分析に重点を置きすぎているように思うのです。

おそらく、先輩や上司から「なぜ?をもっと掘り下げた?」と言われたり、ロジカル・シンキング研修で「Why分析」のやり方を学ぶことが多いのが要因なのでしょう。

ただ、「なぜなぜ分析」は使うタイミングと範囲が重要であることを、意外と知らない(教わっていない)人が多いのです。

筆者は現在(執筆時2021年2月)、グローバル企業の駐在員として、アメリカの会社に赴任しており、約400億円の研究開発予算を管理するファイナンス・ポートフォリオ・リードとして、日々、シニアマネジメントやプロダクトリーダーと働いています。

そんな日々の中、様々な課題(イシュー)に対して、具体的な提案(プロポーザル)を出せとシニアマネジメントから要求されています。

例えば、先日は、約400億円のうち、10%の40億円の具体的な予算削減案を出せという指示があったりしました。

そこで必要になるのが、「なぜなぜ分析」だけではなく、「どこどこ分析」なのです。

前置きが長くなりました。では始めましょう。

なぜなぜ分析とは?

question

なぜなぜ分析については、この記事を読んでいる読者のみなさんなら、もはや説明不要だと思いますが、念のためふれて置くと、トヨタ生産方式の祖である大野耐一氏の「なぜを5回繰り返せ」という名言から来ています。

起きた事象を表面的な分析で終わらせずに、根本的な原因を深堀りしていくためのアプローチが、なぜなぜ分析です。

確かに、なぜなぜ分析は、真の原因を探っていくための強力な課題解決の手法であるし、多くの経営陣・管理職もこの手法には信頼を置いています。

ただし、このなぜなぜ分析は、使うタイミングと範囲が難しく、使い方によっては、自分でも何をどう分析しているのか良くわからなくなって自滅してしまう危険なツールでもあるのです。

例えばですが、衣料品を扱う会社の事例をあげると、

「当社の今年度の売上が下がっている。なぜか?」という問いを5回繰り返したところで、あいまいで抽象的な答えしか見つからないでしょう。

そして、網羅性が足りないとか、もう一度、考え直してこいと言われる姿が容易に想像できます。

一方で、

「当社の新宿店のブランドAの今年度の売上が下がっている。なぜか?」という問いであれば、いかがでしょうか?

きっと、明確な答えが出てくるはずです。

この2つのなぜ?の違い、わかるでしょうか?

それは、なぜなぜ分析の前に、問いかける対象を絞り込んでいる(具体化している)点です。

コンサル的に言えば、イシュー(課題)の絞り込み、イシューの特定、ということになるでしょう。

なぜ分析をするべきタイミングと範囲は、

  • どこにイシューがあるのかを分析し終わった後であり、
  • イシューの範囲が限定・特定された後である必要があるのです。

ここで、一つ、私がアメリカで経験した事例を紹介します。

【事例】なぜなぜ分析の罠にハマってしまったアメリカの同僚

以前、私の会社がとあるグローバル企業を買収した時の話です。

私が所属するファイナンス部門の大きなミッションは、相手の会社の財務データを自社の財務システムに移管・統合することでした。

これが非常に複雑かつ困難なチャレンジでした。

何しろ、相手先の会計システムと自社のシステムは同じではないし、相手の過去の実績データを抜け漏れなく、かつ、正確に自社の財務のフォーマットにあった形で統合する必要があったからです。

例えば、自社では「経費A」というタグ(会計用語では、勘定科目と言います)をつけて認識しているものが、相手の会社では、「経費X」として認識されているというケースがあり、そういう場合は、経費Aと経費Xが対応しているというマッピングを作って、データを移管してくる必要があります。

これはあくまで、経費の種類に関する一例で、実際には、プロジェクトのタグ、経費を処理している部門名(Cost Center)のタグ、経費が紐づいている発注番号(Purchase Order)などなど、多岐に渡るわけです。

さて、そんな様々な財務データが混在しているカオスな状況の中での一場面です。

以下の2つのデータで、大きな差異が生じるというイシューが起こりました。(数字は仮です)

  1. 買収元の100以上のプロジェクトの財務データ(500億)
  2. 上記を自社の財務システムに移管した後のデータ(400億)

 

元データと、移管後のデータで、100億円の数字の差異が出ているという深刻なイシューです。このままでは、外部監査法人に確実に指摘されることになり、どうにかして、原因を突き止めて、買収元の財務データが抜け漏れなく自社に移管されるように解決する必要がありました。

これをわかりやすく一般化していうと、

『あるべき姿(500億円の財務データ)と、現状(400億円の財務データ)のギャップ(100億円)を解決しなさい』というイシュー(課題)になります。

さて、ここで、私のアメリカの議論好きの同僚たちは、この100億というイシューについて、あーでもない、こーでもない、というディスカッションを会議室で始めることになります。

もちろん、そこから出てくるのは、机上の空論に近い解決策で、実効性はありません。

それもそのはず、解くべきイシュー(課題)が抽象的すぎる、または、複雑な要因が絡まった複合イシューだからです。

例えるのであれば、

X + Y + Z = 10 という3つの変数がある方程式を、何の前提条件もなしに解こうとしているようなものです。

こんな状態で、なぜなぜ分析をしても、時間を無駄にするだけで、実現可能な解決策が出てきません。もちろん、これはアメリカ企業に限らず、今まで働いていた日本企業でも頻繁に目にしてきた現象です。

X + Y + Z = 10 という変数が3つもある方程式であれば、X = 2, Y = 3  という前提を置いた上で、Z = 5 という解を導きだすように、

複雑な要因が絡まっている場合は、いくつかの要因を一旦固定した上で、イシューを限定していくのが効果的です。

要因というのは、「切り口」と言い換えるとわかりやすいと思います。

先ほどの私の会社での事例に戻ると、

1つのプロジェクトをピックアップ(プロジェクトという変数を固定)し、そのプロジェクトが移管前後で差異があったかどうかを分析します。

すると、そのプロジェクトのうち、部門Aの財務データが一部抜けている、とか、経費Bのタグがついている財務データが一部抜けている、とか、より具体的なイシューが見えてきます。

そこで、今度はプロジェクトという変数(切り口)を一旦外して、

部門Aという切り口で固定してみるわけです。つまり、他の部門は全て捨てて、部門Aに焦点を絞るということです。

その時に、今度はプロジェクトDが一部抜けているとか、経費Bのタグが一部抜けているとか、そういうものが見えてくるわけです。

こういう切り口を特定して、取り組むべきイシューを具体的に抽出していくことで、

どうやら、100億円のギャップというのは、

  • プロジェクトD、H
  • 部門A、L
  • 経費A、Bのタグ

という要因(パラメーター)を持つ場合に、データがうまく自社システムに移管されていないようだ。

というような、より明確かつ具体的なイシューを見つけることができます。

ここまで特定できたあとにこそ、「なぜなぜ分析」を始めるべきなのです。

こういったイシュー(課題)がどこにあるのか?を、掘り下げて、掘り下げて、掘り下げていくことが、本質的な解決策にたどり着けるかどうかのキーポイントになるわけです。

一見遠回りに見えるかもしれませんが、実際にはこれが最速ルートになります。そして、ギャップが100億円ある。「さあ、なぜだ?」なんていうアプローチの仕方では、時間を浪費するだけなのです。

ちなみに、当時、私はその2時間の無駄なディスカッションを聞き流しながら、一人で勝手にデータ分析を進めて、どこにイシューがあるかを特定して提示しました。

直属の上司には、あなたはディスカッションに加わらずに、そんなことをやっていたのね、とちょっと呆れ気味の顔をされながらも、結果的に、感謝されたというオチでした。

イシュー(課題)が具体化されてからが、なぜなぜ分析の出番である

上記は私のファイナンスという職種での事例でしたが、もちろん、一般化できる話です。

人事部門でも、営業部門でも、製造部門でも、同じアプローチが有効です。

例えば、最近は働き方改革の一環として、残業時間を厳格に管理する会社が増えてきていると思います。

ここで、「我が社は残業時間が多いことが課題である! なんとかしなさい」という大きめのイシューが経営陣から降りてきたとします。

ここで、すぐに、「なぜなぜ」分析を始めたり、業界データを引っ張ってきて他社との残業時間比較を始めたりしてはいけません。

まず、何から始めるべきなのでしょうか?

言わずもがなですね。

「どこどこ」分析です。

自社の残業時間といっても、そこには、部門AからZまでが含まれています。

まずは、どこの部門に残業時間が多いのかを分析していくのです。

すると、どうやら、総務部門は残業時間ゼロで、ホワイト部門であることがわかり、一方で、経理部門と営業部門が突出して残業時間が多い、というようなことがわかるかもしれません。

しかし、ここで、どこどこ分析を止めてはいけません。

例えば、経理部門の残業時間の毎月の推移をみていったとすると、どうやら、決算時期に残業時間が膨れ上がる傾向があるものの、それ以外の月は残業時間は問題ない、という事実がわかるかもしれません。

そうすれば、決算時期の業務の一部を外注するとか、決算時期には他部門から人員をサポートで入れるとか、より実行可能性のある解決策を考えることができますし、その解決策のために誰を巻き込んで、誰に承認を貰えば良いかも自ずと明確になります。

または、経理部門のうち、社員ごとの残業まで調べて見れば、特定の社員の残業が部門の残業時間を牽引しているということがわかるかもしれません。

そうすれば、その社員に業務が集中しているとか、周りのサポートが足りないとか、そもそも業務効率が低いとか、そういった具体的なイシューまで絞り込むことができます。

営業部門に関しても、基本的に同様です。

毎月のトレンドを見てみたり、部員ごとの切り口でみたり、営業部門の中の職種(外回りなのか、事務サポートなのか)で分析してみたりと、様々な切り口で、見るべきポイントを固定してみると、本質的に、どこにイシューがあるのかを見つけることができます。

多くのビジネスパーソンが、イシュー(課題)の掘り下げが不十分な状態で、「なぜなぜ分析」に突入してしまっており、それが分析不足と言われてしまう原因なのではないでしょうか。

自分は課題解決力が足りないと悩んでいる方や、課題に対して何から手をつけていいかわからないと途方にくれている方は、課題(イシュー)がどこで起きているのか?の掘り下げが不十分であることが往々にしてあるのです。

まとめ:なぜなぜ分析の前に、どこどこ分析をしよう!

いかがでしたでしょうか。

私が言いたいことはシンプルで、なぜ(why)分析を始める前に、どこ(where)分析をやりましょう、という、たったこれだけです。

そして、これを意識して実行するだけで、劇的に課題特定スキル、課題解決スキルが向上するはずです。

でも、意外とこういう意識を持っている人が少なく、みんな待ちきれずに、なぜなぜ分析を始めてしまうのですよね。

イシューの特定を行う時には、そのイシューに応じて、様々な切り口がありますが、代表的なものを以下に挙げておきます。

  • 会社軸(自社、関連会社、関係会社)
  • 事業部・部門軸(部門、チーム、人)
  • プロダクト・ブランド軸
  • 店舗軸(実店舗、オンライン)
  • 時間軸(年度、季節、月、週、日、時間帯)
  • バリューチェーン軸(購買、製造、出荷、販売、サービス)
  • 研究開発型のプロセス軸(研究、開発、製造、販売、サービス)
  • プロジェクトマネジメント軸(分析、計画、実行、クローズ)
  • ファイナンス軸(売上、経費、利益など)
  • 購買活動軸(契約、発注、納品、支払い、契約クローズ)

以上です。

この記事があなたの課題解決力の向上に役に立ったのであれば、これ幸いです。

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ippo
本サイトの運営者。社会人になった後、周囲から仕事ができないと思われて、自分の人生が真っ暗闇に感じた辛い日々を過ごす。その後、奇跡的な復活劇を遂げ、その勢いのまま、グローバルプロダクトマネジャーを経験。全く喋れなかった苦手の英語もビジネスで会話ができるレベルまで押し上げ、2019年6月からはアメリカに赴任し、グローバル・リーダー/マネジメント達と仕事をしている。 専門分野は、プロジェクトマネジメント、アカウント・ファイナンスなど。自分のように、仕事で悩んでいる人や大きな壁を感じている人が現状打破できるように、という想いで2017年7月に本サイトを立ち上げた。
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