昨今、日本経済の失われた30年や日本企業の衰退などが様々な文脈で語られています。
どの切り口で分析するかによって、その見え方や理由は変わってくるでしょうが、私はその一つの理由に、日米の管理職の人材が挙げられると感じています。
現在のアメリカ駐在の現場から、日米の管理職を比較した際に、大きな違いがあることがわかりましたので、今回、記事にしました。
では、始めます。
アメリカ企業で働いて目の当たりにした『日米の管理職の違い』とは?
本論に入る前に、簡単に私の現在の立場を説明しておきますと、以下の通りです。
- アメリカ子会社に赴任して現在1年と少し(記事執筆時2020年10月)赴任元は、日本を起源とするグローバル企業。
- アメリカ子会社は、重役も含めて、ほぼアメリカ人で構成され、日本人はマイノリティ。
- ファイナンス・ポートフォリオリードとして現在、400億円規模の予算を管理。アメリカ人の部下が一人います。
- 仕事のステークホルダーは、事業部ヘッドやその一つ下のバイスプレジデントやシニアダイレクターたちから、現場に近いマネジャーたちまで幅広め。
ということで、海外駐在員の中でも、かなりアメリカ企業に近いところで働いていると思います。
アメリカ駐在の前は、日本の事業部でファイナンスとして働いており、ほとんどの部門長さんと仕事をしてきました。
その経験から思うのは、日米の管理職を比較した際の違いは、
アメリカ企業の管理職は、
- 人格者であり、部下のマネジメント力に長けている
- 仕事の成果へのコミットメントがとにかく高い
- 日本の管理職よりも10歳若いのは当たり前
の3つです。
なお、これは管理職の話で、部員レベルの社員には当てはまりません。
人格者であり、部下のマネジメント力に長けている

アメリカ企業の管理職は、多種多様な人種・文化を背景に持つ従業員をうまく動機づけて、ゴールに向かわせることができるスキルが高いです。
むしろ、そういう人しか厳しい競争社会を勝ち上がっていけないという背景があります。
実際に、管理職のポジションについている人は、大抵、人格者であり、部下への配慮を含めてマネジメント力に非常に長けています。
そういう現場をみていると、日本のニュースを賑わすパワハラやセクハラなどの話題を見ると、本当に残念になります。
私の赴任元の会社は、セクハラ・パワハラには力を入れていたのでだいぶ少なかったですが、妻の会社や友人の会社(伝統的な日本企業)の話をきくと、当たり前のようにセクハラ・パワハラが存在しており、あまりの時代遅れ感に呆れてしまいます。
考えてみると至極当然の話なのですが、部下だから何をしてもいいという話にはならなく、上司・部下の関係でも、人としては基本的に平等の立ち位置であるべきです。
もちろん、仕事は成果を出さなければダメですが、仕事と人権は切り離すのが世界からみた時の「普通」です。
仕事の成果へのコミットメントがとにかく高い

アメリカの上に立つポジションの人は結果を出すために、めちゃくちゃ仕事をします。
よくアメリカ人は日本人より働かないと言われますが、それは管理職には当てはまりません。(末端の作業員レベルでは当てはまりますが)
管理職は、平日夜も土日も普通に仕事をしています。バケーションはしっかりとりますが、バケーション先のホテルやビーチなどから、電話会議に出てくることもあるので、そのコミットメントたるやすごいものがあります。(もちろん、必要がある時に限りますが)
なぜかというと、クオリティーを落とさず、スピード感を持って成果を出さないと、すぐにポジション降格または首になってしまうためです。
以下記事でもまとめているので読んでみてください。
日本の管理職よりも10歳若いのは当たり前

日米の管理職で目に見えて違うのが、『年齢』です。
日本企業の管理職は、だいたいアメリカ企業よりも10歳は高いケースが見られます。
例えば、日本企業では50際以上の方が部長職を占めているのが普通ですが、アメリカでは40歳前後が普通で、場合によっては、30台で部長職についている場合もあります。
実際に私の赴任元の会社でも、日本の管理職の年齢が高すぎる問題が指摘されており、若手のグローバル人材をいち早く育てることが昨今の命題となっています。
もちろん、経験不足の若手を管理職に置いたところで、ビジネスがうまく回るわけありませんから、「どうやって経験豊富な若手を育成するか?」ということが大事なのであり、また同時に難しいわけです。
そして、実際にアメリカ企業の管理職は、若いのに経験豊富な人材が配置されていることも事実です。(この理由は、また別の記事で述べます)
そして、この若さから来るエネルギーと外部変化への柔軟性は、現在の厳しいグローバル経済で競争していく上で必須の要素とも言えます。
正直な話、「新しいITツールにはついていけないなあ」と不満をこぼしながら、若手の部下にITのサポートしてもらっている管理職では、この先の厳しいグローバル競争を戦っていけないのです。
まとめ

いかがでしたでしょうか。
これまでの話は、私のこれまでの日米企業の経験に基づく私の考えです。もちろん、大企業かベンチャー企業か、海外シェア比率が高いか低いかなどの、様々な要因によって、組織や文化は違います。
また、日本で一緒に働いた部門長の方の中で、人格者の方や、マネジメント力が長けている方、コミットメント力が高い管理職の方は数多くいました。
ただし、上記の要素を兼ね備え、なおかつ、年齢が若い部門長が少なかったのは事実なのです。そして、これは他の多くの日本企業にも共通している点だと思います。
人格者であり、部下のマネジメントに長けており、仕事の成果へのコミットメントが高く、なおかつ、30台から40台前半の優秀な人材。
そんな人材が企業の中の重要なポジション(部長クラス)に配置されているのかどうか?
これが日米企業の圧倒的な違いであり、それがグローバル化・ITの急速な普及により変化が激しくなった外部環境で、日本企業が成長を続けることができたか、または衰退してしまったか、の大きな原因の一つだと私は思います。
そして、日本企業が世界を相手に戦うのであれば、避けて通れない命題なのではないでしょうか?