管理職を目指す人に伝えたい、能力よりも大事な「○○○」について

管理職を目指す人に伝えたい、能力よりも大事な人間力について

この記事は、同年代の同僚と比較して、自分の出世スピードに焦りを覚えている若手社員の方、または管理職を目指している中堅社員の方に向けて書いています。

筆者は現在(執筆時2021年11月)、グローバル企業の駐在員として、アメリカの会社に赴任しており、約400億円の研究開発予算を管理するファイナンス・ポートフォリオ・リードとして、日々、シニアマネジメントやプロダクトリーダーと働いています。

これまで日本・アメリカで働いてきた経験から、管理職には「人間性」が特に求められていると感じています。

例えば極論ですが、仕事はできるが人間性に難ありの人と、仕事はあまりできないが人間性が良い候補者がいれば、後者が管理職として選ばれます。

若手から中堅社員までの頃は、実務面のスキルや経験が重視されてきたかもしれませんが、そこから先はまた違うものが求められます。

私も若手社員の時は、実務スキル・経験値で周囲と比較して(または比較されて)、将来に絶望していた時期がありましたが、それはあくまで一つの要素にすぎません。

この記事では、ビジネスパーソンとして中・長期的に重要になってくる「人間性」についてお話していきます。

会社の管理職には人間性が求められる

ビジネスパーソンとして最も重要な要素は何かと言われれば、私は真っ先にこう答えます。

人間性です、と。

人間性の中でも特に重要なものは、誠意を持って人に尽くす気持ちと熱意(パッション)の2つだと私は考えています。

もちろん、この2つの気持ちだけでは実務を回すことは難しいのは確かです。例えば、新入社員や若手社員の時は、「あいつはいいやつで熱意もあるけれど、実力が伴っていないんだよな」と先輩や上司に言われることでしょう。

一方で、人間的にどうか?と思う人でも、現場を回す力があれば、現場リーダーなどを任されるのが通常です。

ここで皆さんに伝えたいのは、この2つをいつまでも忘れずにいてほしいということです。

新入社員の頃にこの2つを持っていたとしても、中堅社員になった頃にはすっかり失われてしまっているケースを私の会社でもよく見てきました。

しかしながら、中堅社員から管理職へと足を踏み入れる際には、この人間性が改めて問われる事になります。

ハーバード大学教授のロバート・カッツは、管理職に求められるスキルを3つに分類し、それぞれテクニカルスキル(業務遂行能力)、ヒューマンスキル(対人能力)、コンセプチュアルスキル(概念化能力)と定義しました。

そして、マネジメントレベルが上がるにつれて、求められる3つの比重が変わってくることを提唱しています。

具体的には、マネジメント層になるほど、実務遂行能力よりも対人能力、概念化能力が求められると言われています。

カッツ・モデル
ある程度のポジション(例えば職場リーダー)までであれば、人格面で少し懸念があったとしても目を瞑られることはありますが、会社への影響力が大きい課長・部長などになってくると、その人の人間性の比重が重くなっていくことは皆さんの職場でも思い当たる節はあるのではないでしょうか。

逆にいうと、課長・部長職についている方が人間的に疑問符がつくような場合は、その会社の人事評価は少し問題と言えます。

人間力を磨くにはどうすれば良いか?

人間力を磨くためにはどうすればいいか?

この問いに答えがあれば、私の方が教えて欲しいくらいですが、自分が悩んでいるということは、必ずどこかに先人たちが悩んできた軌跡があるものです。

皆さんは、日本の国文学者・文芸評論家であった谷沢 永一 氏をご存知でしょうか?

私が父から推薦書籍として譲り受けたものに、谷沢 永一 氏の「人間通」という書籍があるのですが、この中にビジネスパーソンとして抑えるべき普遍的な姿勢・考え方が書かれており、目から鱗だった記憶があります。

参考として、その「人間通」の中から、特に参考になったものを3つ紹介したいと思います。

参考書籍: 人間通(谷沢 永一)より抜粋

可愛気 – 可愛気そのものは自作自演できなくても、その一段下のところを目指すことは可能である。 可愛気の次に人から好まれる素質、それは、律儀、である。秀吉は可愛気、家康は律儀、それを以て天下の人心を収攬した。

私の同世代の同期・先輩たちには、人懐っこくてすぐに先輩や上司と打ち解けてしまう同僚がたくさんいました。彼らは、上司たちからは「あいつは何故か憎めないキャラなんだよな」と言われて、目をかけられていました。

一方で、私はどうだったかというと、そういった方々の懐に切り込んでいくタイプではありませんでした。

また、私が若手社員の頃の職場の懇親会などでは、先輩・同僚たちが上司たちから注がれたビールを一気飲みして、『おお、○○くんはなかなか飲めるじゃないか』と上司に認められるというような “体育会系” の付き合いが頻繁にありました。

一方で、お酒が全く飲めない下戸の私にとっては、そういった職場の懇親会が苦痛でしかありませんでした。

当時は非常に悩んだ日々を送っていましたが、結局どうしたかと言うと、愚直に仕事で信頼を積み上げていくという方法を取りました。相手に尽くして、熱意を持って仕事に取り組んでいくのです。

時間はかかりますが、そういった仕事で積み上げた信頼関係は非常に強固で、おかげで数年以上経った今でも私のことを助けてくれます。

ここで言いたいことは、無理に「可愛気」を作ろうとしなくてもよくて、あなたは「律儀」に相手に尽くすことに取り組めば良いということです。

また、一つ付け加えるとすれば、「可愛気」だけでは、中・長期的な信頼関係を築けません。やはり、「律儀」が必要になるのです。

人褒め – 人は誰でも自分を褒めてもらいたい。しかし、自分が人を褒めるのは嫌なのだ。(中略) 諸人に立てられ押しあげられる人は、必ずきまって人を褒める勘所を心得た訳知りである。人に嫌われ不遇におちいる扱いにくいタイプは、決して人を褒めない不平屋である。(中略) 或る人物に発育の可能性があるか否かを試すには、その人が何をどう褒めるかに耳を傾ければよいのである。

アメリカで働いていると、人を褒めることはむしろ日常茶飯事なのですが、日本ではまだ違和感があることが多いと思います。特に、同僚を褒める事に抵抗がある人は多いのではないでしょうか。

私が日本で働いていた時の話ですが、自分の方が仕事ができると思われたいとか、マウントを取りたいと思っている人ほど、人を褒めない傾向にありました。

誰かを褒めたり、認めてしまうと、自分の方が下だと見られてしまう懸念があったのだと思います。

でも、人の上に立つ人というのは、そういう「変なプライド」は持っていませんし、良い仕事であれば純粋に褒めるということができるものです。

人を褒める事によって、「自分の評価が下がる」とか「自分が負けを認めたと思われる」といった雑念はないのです。

良い仕事をしたなら、誰であろうと褒めるし、認める。それは、上司だろうが、同僚だろうが、後輩だろうが、何も関係ありません。

そういった公平なものの見方ができる人は、むしろ勝手に信頼されて、周りから上司になってほしいと推薦されていくものです。

悪口 – 悪口は烏賊が墨を吐くのと同じく周辺を暗くする。では悪口を絶対に言わない自戒が最も有利な措置であるか。そうでもないところに人の世の面白さがある。(中略) 人間は誰でも他人を警戒しながら生きている。いちばん安心するのはあの人物は率直だと認めた場合である。言う事に裏がないと安堵した時である。そのためには批判すべき人物や事柄を的確に批判せねばならぬ。悪口を淡白に発する臨機応変によって人は信用を得るのである。

悪口というものをどう定義するかにもよりますが、谷沢 永一 氏は、人や物事への「批判」として捉えています。

これも褒めることと関連していますが、要するに、人や物事に対して「公平」な物差しを持って向き合うということだと思います。

その人や物事がよいと思ったら、褒め、悪いと思ったら批判する。そこに、余計なマウントやプライドは挟まずに、淡々と述べることだと言っています。

これの意味するところは、伝統的な日本企業にありがちな、「あいつのあそこがダメだ、だから、俺の方ができる」というような、相手を下げることによって、自分の評価を持ち上げるといった雑味を入れてはいけないということです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ここで紹介したものは、自分の人間力を考えるための、ほんの一部のピースにすぎません。

自らの人間力を高めるために、お互いに日々研鑽を積んでいきましょう。

最後に、谷沢 永一 氏が「人間通」の導入部分のフレーズを引用して締めたいと思います。

現代および近未来の主要人物は特技の人である必要はない。極言するなら人間の器量としては凡人でもよいのだ。

世に尽くす誠意と熱情があればそれで十分である。誠意と熱情なら、天賦の才はなくとも、心を傾け身を努める心働きによって誰でも達することは可能である。

組織の要となり世の礎となりうるための必要条件はただひとつと言える。

それは他人の心がわかることである。

人間通(著: 谷沢 永一)

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ippo
本サイトの運営者。社会人になった後、周囲から仕事ができないと思われて、自分の人生が真っ暗闇に感じた辛い日々を過ごす。その後、奇跡的な復活劇を遂げ、その勢いのまま、グローバルプロダクトマネジャーを経験。全く喋れなかった苦手の英語もビジネスで会話ができるレベルまで押し上げ、2019年6月からはアメリカに赴任し、グローバル・リーダー/マネジメント達と仕事をしている。 専門分野は、プロジェクトマネジメント、アカウント・ファイナンスなど。自分のように、仕事で悩んでいる人や大きな壁を感じている人が現状打破できるように、という想いで2017年7月に本サイトを立ち上げた。
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