「あ、この人は仕事がデキる人だな」と感じる瞬間があります。
それは、使っている言葉の【定義】を具体的に確認しようとしている姿をみたときです。
ビジネスの様々なシーンで大きな問題になるのは、「こんな意図でお願いしていなかったのに、、、」とか、「そんなこと一度も言っていなかったのになあ、、、」というような、仕事の発注者と受注者の間の相互理解の欠如です。
仕事ができる人は、言葉の解釈の違いが、後になってから大きな問題になることを知っているので、言葉の定義をしっかりと確認しようとするのです。
【実際にあった話】これ、○○部長と話しておいて、と指示されたら、、、
昔、私がプロジェクトマネジメントオフィスで、上司と一緒に部門横断的なプロジェクトを進めていた時の話です。
プロジェクト案ができたタイミングで、上司が『Ippoくん、この件、○○部長と話しておいてくれる?』と指示してきたのです。
私はその指示について特に深く考えることなく、○○部長の所に足を運び、プロジェクト案について説明し、○○部長からプロジェクト案に関する否定的なコメントと検討すべき点を持ち帰ったのでした。
そして、上司に報告したところ、、、その上司は少し顔を歪めながら、
「Ippoくん、、、俺は○○部長にこちらのプロジェクト案について納得してもらって、合意をしてもらうようにお願いしたはずなんだけど・・・?」
と、問い詰めてきたのでした。
その時の私の動揺とパニックぶりと言ったら、、、ここで言えるレベルではなかったことを申し添えておきます。
さて、その時の私は仕事がデキない社員として有名で、かつ、仕事の進め方も下手くそな人間でした。ですので、内心は、「それならそうと、最初から指示してくれよ。。俺のせいじゃない」と愚痴を言いたい気持ちでした。
しかし、後から振り返ってわかったのですが、上司も忙しいのです。ですので、上司が、いつも適切な指示を出してくれるなんて思わない方が良いのです。
実際に今アメリカで働いていますが、アメリカ人の上司も、忙しさのあまり、説明不足で曖昧な指示しか出してこない時があります。
だからこそ、部下に必要なのは、仕事の発注者(上司)の目的と成果物を明確にすることであり、そのためには、上司が使っている言葉を明確にしていくことが最初の仕事なのです。
若手社員の方や、中堅社員の方でも仕事に伸び悩んでいる方がいれば、この言葉の定義について、深堀りしていく意識と習慣を持つと、これからの仕事に非常に役立つと思います。
契約書は、言葉の定義にもっとも多くのページを割いている。

言葉の定義を重要視しているものと言えば、契約書でしょう。
上記の画像をみてください。本論に入る前に、Definition(定義)という項目があり、そこでは「○○というのは、××を意味する」という言葉の定義がズラーっと並んでいるのです。
こちらはフリーサンプルですが、私が現在(執筆時2020年12月)、アメリカでファイナンスの仕事をしている中で見ている契約書はこれと似た様式です。
契約書は、法的に相手を拘束するものであり、また時には億単位のお金が動くことから、
- 契約書で、どんなことが書かれているか?
- 契約書で使われている言葉は、どんな定義なのか?
という二つは、会社の生死を左右するほど重要なのです。
そして、あとで「言った、言わない」という水掛け論にならないように、契約書で使う言葉の定義には時には数十ページも割かれることがあるのです。
契約書ほどとは言わないまでも、我々の日々のビジネスにおいても、言葉の定義と意味について、敏感になっておくことは重要です。
そして時間があれば、「これって、そもそもどういう定義なのだろう?」と深堀りする習慣をつけておくと、仕事ができるビジネスパーソンになる近道なのではないでしょうか。
参考事例:似ているようで違う言葉こそ、定義をじっくり考えてみる
言葉の定義を深堀りする習慣として、無意識に普段使っている言葉ほど、じっくりと定義を確認してみることもとても面白いです。
中には、明確な答えがないものもありますが、そういうものほど、自分なりの定義を考えておくと、いざ自分がその言葉を使う時に、明確な意図を持って相手にメッセージを届けることができます。
例えば、以下は私が以前、このウェブサイトで取り上げた言葉の定義・意味です。
事例1: ニーズとウォンツの意味の違いとは?

「ニーズとウォンツの違いはなに?」と聞かれて、パッと説明できますか?
簡単に言うと、ニーズとは「欲求」であり、ウォンツとは「欲求を満たす手段」です。
マーケティングの世界で最も有名な格言の一つとして「ドリルを買う人が欲しいのは『穴』である」という言葉があります。
これはお客さんが本当にやりたいこと(ニーズ)は、「穴を開けること」であり、その手段(ウォンツ)として、「ドリルを買うこと」を選んだに過ぎない、という意味です。
従って、一つのニーズ(欲求)に対して、ウォンツは複数あってもいいわけで、ドリルの例で言えば、「穴を開けること」がニーズなので、「穴を開ける出張サービス」もウォンツになりえるという話です。
これは、お腹が空いたというニーズ(欲求)を満たすために、家で料理を作ったり、レストランに食べに行ったり、ビザをデリバリーしてもらうといった、手段(ウォンツ)があることを想像すればわかりやすいと思います。
詳細は以下記事を参照のこと。
事例2: サラリーマンとビジネスパーソンの意味の違いとは?

こんな事例もあります。普段、意識して使い分けている人は少ないかもしれませんが。。
私の過去の経験から、自分のことを「サラリーマン」と言っている人と、「ビジネスパーソン」と言っている人では、仕事に対する当事者意識が全く違うというものがあります。
比較的多くの方は、あまり意識をせずに、企業で働く人をサラリーマンと呼ぶ傾向があります。
私の最初の上司は「俺らはサラリーマンなんだからさあ、、、」という言葉をよく使っていました。そういう方は、自分の仕事についてどこか諦めているようなマインドがあり、また仕事をこなしていれば給料をもらえると考えている傾向がありました。
一方、ビジネスパーソンという言葉を使う方は、明確に意図を持ってそう使っています。そういう方は、どんな仕事にも自分なりの付加価値をつけられないかというマインドを持っていると感じます。
自分は指示通りに動いて、あとは「誰かが稼いでくれる」と考えるのか、
自分から付加価値を生み出して「自分が稼ごう」と考えるのか、
この当事者意識があるかないかが、一目瞭然にわかる言葉です。
事例3: 悩むと考えるの意味の違いとは?

最後の事例です。
「悩む」と「考える」というのはよく混同して使いがちなのですが、実はかなりハッと気づかされる違いがあります。
「悩んでいる」状態というのは、「ゴール」や「進みたい道」に対する「決意が固まっていない」状態で、
「考える」というのは、進むべき方向が見えていて、そこにいく決意も固まっており、行動を起こしている状態だと私は定義しています。
私が昔、ビジネス英会話に悩んでいて周りに相談していた頃、実は簡単な話で、そこにお金と工数をかけて本気でやる決意が固まっていなかっただけでした。
もし、その当時の自分が「悩む」と「考える」の違いを明確に理解していれば、もっと早く自分の課題について気がつけていたと思います。
まとめ:仕事で成果をあげていくには、言葉の定義を深堀りすると良い

いかがでしたでしょうか。簡単にまとめます。
- ビジネスの様々なシーンで大きな問題になるのは、仕事の発注者と受注者の間の相互理解の欠如である。
- 仕事ができる人は、言葉の解釈の違いが、その相互理解の障害になっていることを知っている。
- だからこそ、仕事ができる人は相手が使っている言葉の定義を丁寧に確認する。
- 言葉の定義が重要なことは「契約書」のテンプレートを見れば明らか。
- 実際に、契約書は言葉の定義の多くのページを割いている。
- 若手・中堅社員で、仕事に伸び悩んでいる方がいれば、言葉の定義について、深堀りしていく意識と習慣を持つと、今後の仕事に非常に役立つ。
以上です。
日々の仕事で成果をあげていくために、無意識に使っている言葉にこそ、意識を振り向けて、自分なりにじっくりと考えていく習慣を持ってみてはいかがでしょうか?