【まだやるの?】「高学歴でも仕事ができない人いる」論を語る意味はあるのか

【まだやるの?】「高学歴でも仕事ができない人いる」論を語る意味はあるのか

今回は、よく話題になる「高学歴でも仕事ができない人がいる」論。

あなたは、この論理についてどう考えますか?

この論理の始め方はだいたい同じです。例えば、「なぜ、有名大学を卒業して、頭で考えるのが得意にもかかわらず、仕事ができないのでしょうか。」というような書き出しです。

昔からこのトピックに違和感を感じていたので、ここらで一度、まとめておこうと思います。

「高学歴でも仕事ができない人いる」論に対する私のスタンス

まず、このトピックに対する私のスタンスを表明しておきます。

高学歴ほど仕事ができる。とか、

高学歴ほど頭でっかち。とか、

高学歴なのに仕事ができない。とか、

こういった『高学歴』と『仕事ができること』の関係性は、論じる意味がない。

というのが私のスタンスです。

ちょっとずるい表現になっていると思いますが、その理由を説明させてください。

この議論は、人によって前提条件と定義が全く違っているから

そもそもの話なのですが、この学歴と仕事の話、2つの因果関係を導き出す前に、人によって前提条件や定義がまったくバラバラなのです。

例えるならば、チワワを想像しながら、「犬って(あのつぶらな瞳が)可愛いわよね」と熱心に語る女性Aに対して、

麻薬取締犬を想像しながら、「そうそう、犬って(とても助けになる)可愛いやつなんだよ」と応える男性B(多分、警察官でしょう)のように、

同じトピックを話しているつもりが、実際には話が噛み合っていないというチグハグ具合なのです。

つまり、「高学歴」や「仕事ができる」と言っている言葉は、一見、みんな同じに見えるのですが、実際は人によって思い描いているイメージがぜんぜん違うということです。

たとえば、高学歴の定義について

ある人は東大卒しか高学歴と認めないと言うかもしれませんし、ある人は早稲田や慶応、青山や中央大学などの私立大学も含めるかもしれません。

高学歴については、どこかで線を引けばいいので、簡単といえば簡単です。

ところが、「仕事ができる」の定義になると、かなりバラバラになります。

仕事ができるの定義づけは千差万別

一言に仕事と言っても、それが、

  • どんな業界の
  • どういった職種で、
  • どの職位の
  • どのような業務内容なのか、

— というように違ってきます。

また、仕事ができると言っても、それが、

  • マネージャー職の仕事をこなせるレベルを言っているのか
  • 担当者としての業務遂行力を言っているのか
  • 現場の営業職として仕事ができると言っているのか、
  • 新事業の企画立案ができるレベルを仕事ができると言っているのか

— というように、人によってイメージしている「仕事ができる」がまったくバラバラなのです。

先ほどの例で言えば、「仕事ができる」というのを「犬」だとすると、

実際に、各人がイメージしているのは、チワワ、柴犬、麻薬取締犬と実のところは全然違うという状況です。

要するに、議論しているポイントが実はみんな違っているんですね。

なぜ、同じ「仕事」の話をしているのに、議論がずれてしまうのか?

仕事の内容は上流と下流でまったく別物

川で例えると分かりやすいのですが、仕事の内容は、上流と下流で求められるものがかなり変わってきます。

上流の仕事は、抽象度の高い「概念」が必要な仕事になるのに対して、

下流の仕事は、実行可能性を考えたより具体的な「行動」が成果に結びつきます。

建設業で言えば、ゼロから設計図を作成していくのが上流の仕事で、設計図に従って、実際に建築物を組み立てていくのが下流の仕事です。

従って、上流の仕事ほど、個人の力が重要になってくるのに対して、下流の仕事ほど、組織の力が重要になってきます。

当然ながら、求められる経験やスキルも、上流はより企画力や発想力が大事になるでしょうし、下流は周りとの協働・コミュニケーション能力が重要視されます。

ですので、例えば、上流の仕事をしている Aさんは、「仕事ができる人というのは、個人の力が突出している人だ!」と言うかもしれませんし、下流で働くBさんは、「仕事ができる人は、周りとの協働に長けている人だ!」と言うかもしれないのです。

これ、噛み合っていませんよね?

でも、どちらの言い分も正しいのです。

私が冒頭で、『高学歴』と『仕事ができること』の関係性は、論じる意味がないと言ったのは、こういう背景にあります。

つまり、どちらも正解と言えるし、そもそも話の土俵が噛み合っていないとも言えるからです。

逆に言えば、話の土俵を具体的にすれば、『高学歴』と『仕事ができること』の関係性は個別に議論できるとも言えます。

【実体験】飲食店で『高学歴』と『仕事ができること』は関係あるか?

私は大学時代に、それなりに大きい飲食店で働いた経験があります。

そこで、学歴がなくても、めちゃくちゃ仕事ができる人を見ました。

その彼は、私と同じ時期に入った同僚です。地元の高校を卒業後、上京してきて、東京で調理師学校に通っていました。

その彼のすごいところは3つありました。

  1. 調理知識とスキルが高い。これは言わずもがなです。(専門職にとっては必須)
  2. タスクの組み立てがロジカルかつ無駄がない。(自頭が良い証拠)
  3. タスクの並列処理が異常に早い。(オペレーションスキルが高い)

— 当時は、その仕事の進め方が美しいなあ、と感動したことを覚えています。

とここまで書くと、低学歴の方が高学歴の人よりも仕事ができるのではないか?という声も聞こえてきますが、そういうことにもなりません。

なぜなら、実際には、学歴が低い方の中には、ぜんぜん仕事を覚えられない人もかなりの人数がいたことです。(統計学的にサンプル数を集めれば、きっと明確な有意差がでると思われます)

結局、彼らはキツイ仕事(と安い日給)に耐えられず、すぐに辞めていきました。(ちなみに、私は2年ほど続けて、最後は厨房を仕切って、食材発注などもやるようになっていました。忍耐力はある方なのです。)

飲食店の経験から感じたことは、学歴が高いとか低いとか、そんなことは関係なく、要するに

  • その業務について知識と経験があるか、
  • 周りとうまくやれるコミュニケーション力があるか
  • 忍耐力とモチベーションがあるか

という点が仕事ができることの基準だったように思います。

これは飲食店の現場で求められるのは、決められたレシピについて、いかに効率よく周りと協力して捌いていくか、という組織としてのオペレーション能力が求められている仕事だったからです。

そして、先ほど話した上流と下流の例え話のように、ほかの業界についても、下流の仕事については、これと同じ状況になっているのではないかと想像しています。

つまり、「学歴」と「仕事ができること」は関係ない状況です。

そんな環境下で、たまたま高学歴の新人が配属された時に、おそらく、「高学歴なのに仕事ができない」という話が持ち上がるのだと思います。

そもそも、より具体的な業務を組織的に行う環境下では、人とのコミュニケーション能力の方が重要ですから、「高学歴だから・・・」と期待すること自体が間違いだということです。

上流の仕事では、「高学歴」と「仕事ができる」は関係ある?

では、上流の仕事になった時はどうなのか?

それでも、私の経験上、「高学歴」と「仕事ができる」は直接的には関係ない、と考えます。

上流の仕事とは、ゼロから1を考え出すコンセプトを決める仕事や、幅広い情報に基づいて意思決定をする経営層の仕事です。

このレベルになってくると、物事の記憶力、知識を繋げていく力、類推力、ロジカルシンキングなどが求められます。

私は仕事柄、日本や海外の経営層やシニアダイレクタークラスと仕事をしているのですが、彼らの記憶力や頭の切れ味、ロジカルシンキングの凄さに驚きます。

そして、彼らと話していて思うのは、そもそも好奇心と学習意欲が突出している点です。

そこで、バックグラウンドを尋ねてみると、東大卒、京大卒、バーバード卒だったり、海外のMBAや博士課程修了など、超高学歴であることが判明するのです。

一見、高学歴が関係してそうに見えますが、違います。

実際は、高学歴だから仕事ができるという順番ではなくて、

  • 好奇心と学習意欲が突き抜けている
  • 物事を学び、考えることに喜びを感じている

だから、仕事も非常によくできる。そして、高学歴だった、という話です。

つまり、高学歴に価値があるのではなく、その人の物事への姿勢自体に価値があり、仕事の成果に繋がっているという、至極シンプルな話でした。

一方で、「好奇心」と「仕事ができる人」は関係ある

これまでの話を踏まえた、私のスタンスは、

  • 「高学歴」と「仕事ができる」というのは、仕事の内容によっては全く関係ない。(例えば、決められた業務を効率よく進める下流の仕事)
  • 上流の仕事も、直接的には関係ない。
  • ただし、「好奇心」と「仕事ができる」は関係ある

— というまとめになります。

「好奇心」についての記事は、以下にもまとめているので、読んでみてください。

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結局のところ、色々な人が書いている「高学歴の人は、勉強しかできないから仕事ができない」というのは、統計学的にみても全く意味のない根拠かと思います。

100人の高学歴がいたら、その中でも仕事ができない人は一定数いるでしょうから。(ただし、これも「仕事」をどう定義するかで結果が大きく変わる点は注意)

いずれにせよ、1000人の高学歴と、1000人の低学歴を集めれば、それなりに統計学的にも有意差のでる結果が出そうな気がします。

ともあれ、そんな話を掘っていくよりも、「好奇心」と「仕事ができる」という関係について考えた方が、もっと生産的ではないだろうか?、というのが私のスタンスです。

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ippo
本サイトの運営者。社会人になった後、周囲から仕事ができないと思われて、自分の人生が真っ暗闇に感じた辛い日々を過ごす。その後、奇跡的な復活劇を遂げ、その勢いのまま、グローバルプロダクトマネジャーを経験。全く喋れなかった苦手の英語もビジネスで会話ができるレベルまで押し上げ、2019年6月からはアメリカに赴任し、グローバル・リーダー/マネジメント達と仕事をしている。 専門分野は、プロジェクトマネジメント、アカウント・ファイナンスなど。自分のように、仕事で悩んでいる人や大きな壁を感じている人が現状打破できるように、という想いで2017年7月に本サイトを立ち上げた。
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