“好奇心” は、ビジネスパーソンにとって、どれぐらい重要だと思いますか?
好奇心は、ビジネスパーソンとしてのポテンシャルを推し量る尺度だと、私は考えています。
そして、その人が最終的にどこまで成長するかを決定づける重要な要素の一つなのではないかと思います。
この記事では、好奇心にまつわるエピソードを紹介しながら、ビジネスパーソンにとって好奇心が大切である理由や好奇心を持つためのコツ・方法を考察して行きたいと思います。
事例:好奇心が導くGoogleの採用選考
まず、最初に一風変わったGoogleの採用選考について紹介したいと思います。
2004年のある日のことです。
シリコンバレーの中心にあるハイウェイ101号沿いに、
{first 10-digit prime found in consecutive digits of e}.com
とだけ書かれた匿名の看板が立てられました。

これは、『{自然対数の底 ”e” の中で最初に出てくる連続した10桁の素数}.com』という意味です。
高校で勉強した数学を覚えている方は、なんとなく、意味を理解できるかもしれません。でも、これを実際に調べるとなると、とても骨が折れます。
詳しくは他のサイトでも紹介されているので、興味がある方はググっていただくとして、この看板の意味を苦労して調べていくと『7427466391.com』という答えにたどり着きます。
そして、これを検索窓に打ち込んでアクセスすると、また自然対数eを使った数列の問題があるようで、それを解いて次のページに進むと、ようやくGoogleの研究開発部門の求人募集に辿り着くのだそうです。
こんなハイウェイ沿いにある、意味があるのかどうかもわからない看板をみて、そこから真面目に計算をして前に進んで行こうという人は一体どれだけいたのでしょうか?
最終的に、Googleの研究開発部門の求人にたどり着いた人がいたかどうかは不明ですが、いずれにしても、その人達は、どんなことにも好奇心をもち、それを行動に移していく行動様式を持った人だったに違いありません。
こんな求人募集を行った当時のGoogle CEO、Eric Schmidtの有名な言葉にこんなものがあります。
“We run this company on questions, not answers.”
Googleの今の発展があるのは、あらゆることに好奇心を持って、質問をし続けてきたからなのではないでしょうか。
(参考:2018/9 ハーバード・ビジネス・レビュー『The Business Case for Curiosity』)
事例:アインシュタインは天才ではなく好奇心の塊だった

好奇心といえば、アインシュタインも忘れてはなりません。
みなさん、アインシュタインと聞くと、どんなイメージを持たれるでしょうか?
まず間違いなく出てくるイメージの1つは『天才』ではないでしょうか。
でも、アインシュタインは自分は天才ではないと言っています。
“I have no special talents. I am only passionately curious.”
(私には特別の才能はない。私は、ただ情熱的なまでに好奇心が旺盛なだけだ。)
“The important thing is not to stop questioning. Curiosity has its own reason for existence.”
(重要なことは、疑問することをやめないことである。探究心は、それ自身に存在の意味を持っている。)
アインシュタインの最も凄いところは、好奇心・探究心を持って、物事の成り立ちを問い続けていったことです。
好奇心を持つことは、実は何よりも大事なことなのかもしれません。
好奇心が仕事のパフォーマンスを高める理由とは
アインシュタインのようなサイエンスの分野はもちろん、我々ビジネスパーソンにとっても、仕事のパフォーマンスを高めるうえで、好奇心は必要不可欠です。
2014年のハーバード・ビジネスレビュー「Curiosity Is as Important as Intelligence」では、『好奇心(Curiosity)』は『知性(Intelligence)』と同じぐらい重要だと述べられています。
その中で、高い好奇心を持つ人の注目すべき特徴として、以下の2つが挙げられています。
- 一般的に、”あいまいさ” に対して耐性が高い。
- 獲得した知識同士を高いレベルで統合していくことができる。
ここでの “あいまいさ” というのは、先行き不透明な場面や自分がよく知らない分野に置かれても、それをストレスに感じずに、むしろ刺激と捉えることができることを意味しています。
たとえば、好奇心旺盛な人は、全く経験がない新しい部署に異動になったとしても、その環境で潰れることなく、むしろ、そこで吸収した知識やこれまでの他部署で働いた経験をもとにして、新しいビジネス提案や業務改善を進めていく傾向があります。
上記の特徴は、以前記事にした『将来のリーダー』=『ラーニングアジリティ(学習機敏性)が高い人材』 という実際の話に出てくる現場からエグゼクティブまで昇格した私のグローバルメンターにも当てはまります。
好奇心は、先行きが見えない困難な状況下でも成果を出していかなければならないビジネスパーソンにとって必須のマインドセットではないでしょうか。
好奇心を持つためのコツ・方法
では、どのようにすれば、いろいろなことに好奇心を持てるようになるのでしょうか?
まず最初に、ちょっとした質問をしたいと思います。
以下の2つの文章を読んでみて、どちらの方がカーネルサンダースさんへの興味が湧きましたか?
- カーネルサンダースは、ケンタッキーフライドチキンKFCの創業者。
- カーネルサンダースは、65歳でKFCを起業して、“フライドチキンのレシピを教えるかわりに、売れたチキン1つにつき5セント受けとる”というフランチャイズビジネスを始めたが、実は最初の契約を取り付けるまで、1,000件以上も飛び込み営業をして断られ続けていた。

いかがでしょうか。
間違いなく、2つ目の文章の方がカーネルサンダースさんのことに興味を持つのではないでしょうか。
- 65歳のおじいさんが、1,000件以上も飛び込み営業をしていた?
- しかも、1,000件以上も断られているって?
- いったい、どれだけ不屈の闘志溢れる方なんだろう?
- 自分なら10件でギブアップしそうだ。。
- あのKFCでみる笑顔のサンダース像からは想像もつかないチャレンジ精神だなあ。
というように。
でも、今まで何度もサンダース像を見ていたのに、こんなに興味を持ったことはなかったですよね?
実は、私たちは何の知識も持っていないと好奇心を持つことはないのです。
好奇心を持つには、最初にある程度の知識が必要
人間の脳は、本能的に空白を嫌がる習性を持っています。そして、無意識にその空白を埋めようとします。
たとえば、クイズ番組で『正解はCMのあとで!』という手法も、この空白を埋めたがる脳の性質をうまく使っている例です。
ただし、脳が空白を埋めようとするのは、そこに「空白がある」と気づいたときです。
全く何の知識もない、全てが真っ白な空間だと、そもそも空白があることに気づかないのです。
つまり、私たちはある程度の知識があるからこそ、そこに「情報の空白がある」と気づき、情報の空白に気づくからこそ、もっと知りたいという欲求(好奇心)が生まれるのです。
だからこそ、我々が色々と好奇心を持つためには、『好奇心が生まれる前提知識を得ておくこと』がとても大事なポイントと言えます。
好奇心を生み出す前提知識を増やしていくには?
好奇心を生み出す前提知識を増やす方法は色々とあります。
たとえば、自分が知らない分野の初級者向け書籍を読むとか、知らない業界の人と繋がって話してみる、などもありますが、
1番のオススメは、いまの自分の仕事の周辺で起きていることに『とにかく首を突っ込んでみる』です。
これが一番効率的かつ効果的です。
なぜなら、自分の仕事に関連しているので、自分事として考えられますし、自然に好奇心も生まれやすいからです。
そして、そこから得た知識が自分の仕事にもすぐに活かせることが多いので、学んだことが無駄になりません。
筆者の事例: 自分の仕事の周辺にどんどん首を突っ込んでいく
たとえば、私の場合で言うと、ファイナンスという職業柄、ITやシステムに触れる機会が多いので、その周辺にあるデジタル関連のトピックに首を突っ込んでいっています。
実際に、つい先日、コンサル主催のデジタル関連のセミナーに参加して、最近のAIやRPA(Robotic Process Automation)の情報を仕入れてきました。
そして、そこからさらに深く掘り下げたり、周辺知識を拾ったりしながら、自分の組織の業務効率化に繋げられないかを考えています。
社外のセミナーに行くのも1つですが、もっと簡単なのは、社内の詳しそうな人に教えてもらうことです。
あまり接点がない人だったり、その人が目上の人だったりすると、色々な遠慮が邪魔をして、『教えていただけますか?』というお願いをためらってしまう方がいます。
でも、同じ会社の人ですし、「自分の知識や視野を広げてクライアントや会社に貢献したい」と思っていれば、その気持ちは相手に伝わりますし、案外、喜んで教えてくれるものです。
もちろん、その人を貶めてやろう、という邪な気持ちがあったらそれはダメですが、この記事を読んでいる方にそんな人はいないでしょうから、あとは一歩を踏み出すだけです。
と、こんなような考えで、色々なことに首を突っ込んでいるので、私は周りの人に『好奇心旺盛だね』とか『いろんな部門のことを知っているね』とか言われることがあります。
でも、現場担当者だった時は、決してそんなことはありませんでした。
現場からプロジェクトマネジメントオフィスに異動して、いろいろな部門の調整業務をこなしていくうちに、その各部門の業務や悩みが分かるようになり、そこからいろんな部署の仕事に好奇心を持つようになりました。
振り返って考えると、『自分の仕事はここまで』というように線引きするのではなく、時には自分の仕事の範囲を飛び越えて、『誰かのために何かできないか?』という気持ちで、色々なことに取り組んでみることが大事だと思います。
そうすると、今までに見えて来なかった世界が見えてきて、そこで働く同僚の凄さと仕事内容が理解でき、そして、『もっと知りたい』という好奇心が湧いてくるはずです。
まとめ: 好奇心こそがあなたの成長の糧となる
ここまでの内容をまとめます。
- Googleの成長も、アインシュタインの歴史的偉業も、キーワードは『好奇心』と『問い続けること』だった。
- 好奇心(Curiosity)は知性(Intelligence)と同じくらい重要(ハーバード・ビジネス・レビュー)
- 好奇心が高い人は、”あいまいさ” に耐性があり、また獲得した知識・経験を高いレベルで統合できるので、先行きが見えない困難な環境でも問題解決に取り組める。
- 何も知識がない中では、我々は好奇心を持てない。好奇心を持つにはある程度の前提知識が必要。
- 好奇心を持つコツは、自分の仕事の周辺に積極的に首を突っ込んでいくこと。そうすれば、業務に直結する形で見えない世界に気づき、効率的に知識を得ることができる。
以上です。
さて、ここまで読まれて、いかがでしたでしょうか?
『好奇心を持つこと』について、好奇心が湧いてきたのではないでしょうか?(もし、何も好奇心が湧かなかったら、私の文章がイマイチだったということですね、笑)