【キャリアパス考察】スペシャリスト/ジェネラリスト論は無意味? 目指すべきは『T型かΠ型人材』である理由

【キャリアパス考察】スペシャリスト:ジェネラリスト論は無意味? 目指すべきは『T型かΠ型人材』である理由

会社の中にいると、スペシャリストかジェネラリスト(ゼネラリスト)のどちらを目指すべきでしょうか? という二者択一のキャリア論をよく聞きます。

つまり、以下の2つの考え方です。

  • 自分の専門性をもっと深めていき、エキスパート(専門家)と呼ばれる領域まで知識と経験を深めていくべきか?
  • マネージャーに求められるようなヒト・モノ・カネなどの幅広い範囲を学んで、エキスパート集団を率いていけるような経験を積んでいくべきか?

ところが、このスペシャリスト or ジェネラリスト論は一体いつの時代のキャリア論なのですか? というぐらい古いもの、ということをご存知でしたでしょうか?

グローバル化が進んでいる今の時代は、スペシャリストでありジェネラリストでもある、T型人材またはΠ型人材(通称:ブラシ型人材)が求められています。

この記事では、スペシャリスト・ジェネラリストの特徴を踏まえた上で、これからの時代で求められるT型・Π型人材について考察していきたいと思います。

スペシャリスト(I型人材)

スペシャリストとは、その名の通り、特定の分野の専門家、または、特殊な技能やスキルを有する人を指します。

例えば、弁護士、税理士、会計士などの士業と呼ばれる専門家や、医者や薬剤師などの医療や薬を専門とする人、他にはプログラム言語を扱うエンジニアなどです。

より狭義の意味になると、企業の中の特定の部門業務に特化した人もスペシャリストと呼びます。

例えば、法務部や経理部でその道20年というベテランも、法務のスペシャリストや経理のスペシャリストとして、会社のビジネスを支える貴重な人材として重宝されます。

一方で、スペシャリストは、その分野の技術・スキルに特化しているため、異業界で転用しにくい場合があります。

例えば、企業に勤めるスペシャリストは、企業の吸収合併や事業切り出しなどで、所属部門が縮小する場合に、大きな影響を受けることがあります。

実際に、私もこういった影響を受けた人を身近で見てきました。

また、そもそもの所属する業界全体が落ち込むと失業リスクが高まる可能性もあります。

ということから、スペシャリストでのキャリア形成を目指す場合は、所属する企業や業界の動向について敏感になっておく必要があります。

ジェネラリスト(一型人材)

ジェネラリストとは、ある特定の分野に特化するのではなく、ビジネス全般の知識や技術、経験を有する人を指します。

例えば、大企業で言うと、総合職として入社し、人事部のジョブローテーション施策によって、複数部門を数年ずつ経験してきたような人材です。

企業内の様々な部門の業務やキーパーソンを知っていることから、より広い視野かつ高い目線で自社のビジネスをみることができます。

また、組織間の調整力・交渉力も鍛えられていることから、将来的なマネージャー候補として人事部から期待される人材と言えます。

一方で、高い視野・視座で物事を見るチカラや、組織間を調整できる組織感覚力や対人スキルが伸びていかないと、会社の中では重要なポジションにつくことができなく、次第に窓際に追いやられていくという厳しい末路が待っています。

(このパターンは大企業の年功序列が色濃く残っている会社に多いです。私の会社でも窓際に追いやられて、そのまま会社から消えていった40代後半から50代の方が多かったです。)

窮地に追い込まれてから、スペシャリストとして生きていればよかったと思っても後の祭りなので、ジェネラリストのキャリアを積んでいる人は、部下マネジメント力、組織間の調整力、対人スキル、ビジネス英語などを幅広く伸ばしていく努力が必要です。

ジェネラリスト/スペシャリスト論は古い?

日本に根付いている、ジェネラリスト or スペシャリストの二者択一論ですが、これはグローバルという目線から見ると、とてもナンセンスな議論だったりします。

そもそも、グローバルでは、ジェネラリスト or スペシャリスト のどちらになるべきかなんて狭い視野はありません。

医者だってMBAを取る人はざらにいますし、私の会社の海外のエグゼクティブは、米国公認会計士、博士号、MBAの3つを持っている場合などもあります。

文部省も、日本の科学研究者のキャリア形成について警鐘を鳴らすために、以下の見解を述べています。

これからの研究者にとっては、自らの専門分野にいたずらに閉じ込もるような蛸壺的な専門性ではなく、

周辺の専門分野や全く異なる専門分野を含む多様なものに関心を有し、既存の専門の枠にとらわれないものの見方をしながら自らの研究を行っていく能力が重要であり、

一般論として、欧米のトップクラスの研究者と比較して、このような能力が日本の研究者に不足していることを指摘している。

そこで、同提言では、「幅広い広い知識を基盤とした高い専門性」こそが、これからの時代の研究者に必要とされる「真の専門性」であると指摘している。

こうしたことから、一つの分野の専門性にのみ秀でた「I型」の人材だけでなく、「T型」や「π型」と呼ばれるような、専門性の深さと幅広い専門性を兼ね備えた人材を育成していくことが重要であることを指摘している。

(引用元:文部科学省|平成14年度 科学技術の振興に関する年次報告 第1部第1章第2節[1]  「知の創造者」としての研究者

上記で文部省が述べているI型、T型、Π型人材の図解がとても分かりやすかったので、以下に紹介しておきます。(少し改変しております)。

I型、T型、Π型人材の図解イメージ

T型人材(シングル・メジャー)

T型人材は、上で述べたスペシャリストでありジェネラリストである人材です。つまり、ひとつの専門分野に精通しており、さらに広範囲のスキルと経験を持つ人材を指します。

このT型人材というのは日本で普及している用語で、「T」のうち、縦棒「I」が専門分野の深さを、横棒「一」はスキル・経験の幅の広さを表現しています。

一方、英語では専門性をシングル、全般的なスキル・経験をメジャーと呼び、日本で言うところのT型人材をシングルメジャー(single major)と呼んでいます。

例えば、私の会社でいうと、海外のカウンターパートにUS CPA(米国公認会計士)とMBAの両方を持っている人などです。

つまり、アカウンティングとファイナンスの専門家でありながら、経営者に必要な幅広いビジネススキル・経験を持っているという人材です。

とはいえ、MBAまでいくと、もはやそれ自体が専門性のようなものなので、実際にはT型人材よりもΠ型人材(次項で紹介します)の方が近いかもしれませんが。

Π型人材(ダブル・メジャー)

Π型人材は、ふたつ以上の専門分野に精通しており、さらに広範囲のスキルと経験を持つ人材を指します。 上で述べたT型人材の進化型と言えます。

Π型人材の「Π」は、「T」に縦棒を一本追加し、もう一つの専門性が加わったことを表現しています。英語では、専門性が2つ(ダブル)と全般スキルのメジャーで、ダブル・メジャーと呼びます。

私の会社の海外のエグゼクティブは大体がこの人材に当てはまっています。

例えば、私がプロダクトマネジャーをやっていた時のアメリカのカウンターパートは、こんな人が多かったです。

  • 特定分野のPh.D(特定分野の博士号)
  • PMP(Project Management Professional:米国PMI認定のプロマネ専門家)
  • MBA(Master of Business Administration:経営学修士号)

Ph. DとPMPという2つの専門性を持っていて、MBAという経営全体がわかるスキルを持っているバケモノ級の人材です。

グローバルでのプロダクトマネジャーになると、年俸的にも3千万円以上のプレイヤーなので、これぐらいの目に見える専門性がないと、なかなかそのポジションとして採用してもらえない、という理由もあると思います。

ちなみに、私のスペックは、

  • Master of Engineering(工学修士号)
  • PMP(Project Management Professional:米国PMI認定のプロマネ専門家)

の2つなので、少なくともMBAを取らないと、海外でプロダクトマネジャーという職種に応募するのは厳しそうだなと思いました。

とはいえ、日本ではアメリカほどシビアに肩書きが見られないので、まだまだ働きやすいと思います。(これからはどうなるか分かりませんが)

まとめ:我々ビジネスパーソンは、まずT型人材を目指そう

さて、冒頭の話に戻ります。

企業で働くビジネスパーソンはどこを目指すべきか? という質問ですが、私の考えは以下です。

『まずはT型人材を目指す。そして、専門性をもう一つ加えて、Π型人材を目指す』です。

なぜ、T型人材を目指すのか。シンプルです。

スペシャリスト(I型人材またはシングル)では、企業の中で重要な仕事を任せてもらえないからです。

企業の中で大きな付加価値を生み出そうと考えると、必然的に、クロスファンクショナル(部門横断的)な活躍が必要になります。

つまり、自分の専門分野だけではなく、もっと幅広く、そして高い視野・視座で物事を俯瞰的に見渡し、なおかつ、組織間を調整できるチカラが必要になります。

つまり、単なるスペシャリストでは不十分ということです。 極論すると、スペシャリストは社外にも沢山いるので、外部委託してしまえば良いという場合もあります。

だからこそ、ジェネラリスト(メジャー)のスキルも必要なのです。

巷では、『ジェネラリストはダメだ』論をよく聞きますが、決してジェネラリストがダメなわけではありません。ビジネス全般を幅広く知っているというのは、実はとても価値があると私は思います。

実際に、起業しようと考えると、スペシャリストでは立ち行きません。ビジネス全般を器用にこなせるチカラがないと厳しいです。

私もこのウェブサイト運営をする中で、本当に様々なスキルを学ぶ必要がありました。(広く浅くです)。 それこそ、まさにジェネラリストの知識・スキルです。

要するに、スタートラインはどちらでもよく、まずは中間ポイントのT型人材に到達すれば良いというわけです。 つまり、

  • スペジャリストは、もっとビジネス全般のことを知ってスキルアップしましょう。
  • ジェネラリストは、何か特定の分野についてもっと知識・経験を深めましょう。
  • そして、まずはT型人材を目指しましょう。

ということです。

そして、その次はΠ型人材です。

私は今、T型人材からΠ型人材に向けてのステップを踏んでいるところです。

筆者事例:T型人材からΠ型人材へ

今のアカウンティング・ファイナンスの分野をある程度極めていければ、自分なりのΠ型ができるかなという算段です。

みなさんは、どのようなキャリアパスを描いていますか?

どうやってT型人材、Π型人材を目指していきますか?

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ippo
本サイトの運営者。社会人になった後、周囲から仕事ができないと思われて、自分の人生が真っ暗闇に感じた辛い日々を過ごす。その後、奇跡的な復活劇を遂げ、その勢いのまま、グローバルプロダクトマネジャーを経験。全く喋れなかった苦手の英語もビジネスで会話ができるレベルまで押し上げ、2019年6月からはアメリカに赴任し、グローバル・リーダー/マネジメント達と仕事をしている。 専門分野は、プロジェクトマネジメント、アカウント・ファイナンスなど。自分のように、仕事で悩んでいる人や大きな壁を感じている人が現状打破できるように、という想いで2017年7月に本サイトを立ち上げた。
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