『ひとつのスキルをレベル10まで極めようとしても勝てない。それならば、スキルを組み合わせればいいのでは??』
そう考え、実際に『アメリカズ・ゴット・タレント(America’s Got Talent)』という公開オーディション番組で優勝賞金1億円を獲得した日本人をご存知でしょうか?
彼の名前は、蛯名 健一。
ダンスに、イリュージョンやパントマイム等のスキルを組み合わせて超一流のステージを表現するパフォーマーです。
蛯名さんのように、複数のスキルを組み合わせることで成果を出した事例は、ビジネスパーソンのキャリアパスを考える上で色々と学びがあります。
私も今のファイナンスの職種では、会計の知識・経験では周りに勝てませんが、プロダクトマネジャーとして研究開発からマーケットまで見た経験、そこにPMOとしてポートフォリオを見た経験を組み合わせて、周りとの差別化を図っています。
この記事では、蛯名 健一さんがなぜスキルの組み合わせに着目していったか、という背景を掘り下げて紹介したいと思います。
【動画】蛯名 健一 氏のパフォーマンス
百聞は一見に如かず、ということで、まずは蛯名 健一 氏のパフォーマンスをご覧ください。
以下は蛯名さんがアメリカズ・ゴット・タレントで優勝された時の予選から決勝までの動画です。
なぜ、蛯名 健一 氏は、複数のスキルの組み合わせ戦略を選んだのか?
ひとつのスキルを極めるべく練習を重ねる20代
蛯名さんは、20代の頃、他のダンサーと同じく、その本職であるダンスの経験とスキルを極めるべく日々練習を積み重ねていました。
しかし、その活動の拠点であるニューヨークには、世界中からダンスで一旗あげようと目論む猛者たちが集まる場所。ニューヨークでの戦いは競合たちがひしめく、熾烈なレッドオーシャンだったようです
そして、蛯名さんにとって不利だったのは、160 cmという小柄な身長でした。
たとえ、技術面で高い評価を勝ち取ったとしても、同程度の技術を持った他のダンサーと比較されると、どうしても体格に恵まれる方が採用されてしまいます。
そのため、オーディションに応募しても、不採用が続く、厳しい環境を経験されたそうです。
しかし、スキルを極めるには、膨大な経験値と時間が必要
体格で劣るのであれば、体格差を跳ね返せるほど、ダンスの技術を高めればよい、
とそんな理想を掲げるのは簡単ですが、そこに到達するためには、それこそ膨大な時間と血の滲むようような練習が必要です。
さらに、ダンサーの多くは、自分のダンスを極めようとするので、ダンスの方向性で被ることになります。つまり、差別化出来ず、コモディティー化しやすくなります。
複数のスキルを組み合わせる戦略に変更
蛯名さんは、そういったダンスを極めようとするダンサーと同じことをしても勝てないと考え、方向性を模索します。
その結果、辿り着いたのが、『複数のスキルの組み合わせ』です。
ダンスをやる目的は色々あると思いますが、蛯名さんは、ダンスをエンターテインメントとして周りを喜ばす1つの手段として、捉えます。
そう考えると、何もダンスだけに固執せず、ダンス以外でも、お客さんを喜ばす手法やスキルも積極的に取り入れていき、ダンスと融合させていけばよいと考えたのです。
その結果、ダンスに加えて、イリュージョンやパントマイム、映像、照明という様々な要素を組み合わせた “超一流” のパフォーマーというポジションをつくりあげました。
そんな蛯名さんは、自身のパフォーマンスを以下のように表現されています。
「(私のパフォーマンスは)クリエイティブというよりも、すでにもっているスキルや技術を応用し、よりおもしろいものへと発展させていきます。『コーディネート』という表現が近いかもしれませんね」
(引用元:事業構想大学院大学|パイオニアの突破力:二流に聞く、一流のパフォーマンスのつくり方)
自分だけのスキルの組み合わせで差別化を図る
冒頭の蛯名さんの動画を見ていただくとわかりますが、たしかにダンスはエンターテインメントの一部という意味がよくわかります。
例えば、舞台をまるで対戦ゲームシーンのように使い、スクリーンに投影する敵キャラクターと自分のHP(ヒットポイント)を表示しながら、ゲームさながらの効果音と映像を使いながら、自分もゲーム内キャラクターとして、ダンスをしています。

ダンスがメインというよりも、ダンスは1つのストーリーを表現するための手段、というメッセージが伝わってきます。
そして、蛯名さんは、これらの映像、効果音、照明などをすべてご自身でされるそうです。
まさに、トータルコーディネーターです。
蛯名さんは、自身のスキルのパフォーマンスついて、具体的に以下のように説明しています。
のり弁当のようなトータルパッケージ
(蛯名さんのパフォーマンスは)例えるならば、「のり弁当」
のりご飯に、魚フライがあって、唐揚げがあって、卵があって、色々なおかずがあって(中略)、
それぞれのクオリティーはそんなに高くないけれど、それをまとめて380円で美味しいじゃんという話。
(引用元:情熱大陸|パフォーマー・蛯名健一(2014年1月12日放送))
ダンスにマジックと照明を組み合わせたショー
「例えば、レベル8のダンスにレベル3のマジックとレベル4の照明効果を組み合わせ、パフォーマンスを構築するとします。一つひとつのレベルはさほどではなくとも、これらの相乗効果により、レベル10まで極めたダンスショーと同じかそれ以上に、人々を楽しませることができるんです」
(引用元:事業構想大学院大学|パイオニアの突破力:二流に聞く、一流のパフォーマンスのつくり方)
例えば、これは我々ビジネスパーソンにおけるプレゼンテーションにも同じことが言えると思いませんか?
喋る技術だけではなく、喋る内容を考えるロジカルシンキングに、それらを可視化するスライド作成技術、さらには、場の空気を読みながら臨機応変に対応するスキルなど、1つの技術やスキルではなく、スキルの組み合わせによる総合力が求められる世界です。
まとめ: 蛯名 健一 氏から我々が学ぶこと
いかがでしたでしょうか。ここまでの内容を簡単にまとめます。
- ひとつのスキルを極めるには膨大な時間と経験が必要。
- ひとつのスキルを極めようとする人は沢山おり、周りとの差別化が難しい。
- 複数のスキルを組み合わせると、周りとは違った価値を提供しやすい。結果的に、差別化しやすく、自分の価値を高めやすい。
- ひとつのスキルをレベル10まで極めるのもいいが、レベル8のスキルにレベル3-4の複数のスキルを組み合わせることも戦略の一つ。
もし、あなたが、今の仕事やこれからのキャリアで悩んでいるのであれば、蛯名さんのように、
- これまで習得したスキルの組み合わせ
- 職歴や過去の仕事内容の組み合わせ
- さらに、趣味や特技との組み合わせ
など、自分の中にある色々なものを組み合わせることを考えてみてはいかがでしょうか?
以下の蛯名さんに密着した情熱大陸の動画も、とても興味深かったので、蛯名さんをもっと知りたいと思った方にはおすすめです。
他にも、キャリアパスに関する関連記事として【キャリアパス 戦略】敢えて2番目に得意な職種に進み、圧倒的な差別化を図る方法というズラしの戦略も紹介しています。
もしかしたら、あなたの活躍の舞台は、今の仕事や専門分野から外れた場所にこそあるかもしれません。
だからこそ、自分の持っているスキルや経験の棚卸しと、その組み合わせ、そして戦うフィールド選びは重要になります。
この記事があなたのこれからの成長やキャリアアップに役立てばこれ幸いです。
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