『その部署での仕事は、私が描くキャリアパスにそぐわないので、行きたくありません』
こんな風にダダをこねて、会社からの人事異動オファーを断り続けて、多くの部署と人事部を困らせた同僚(問題児)がいます。
しかも、組合まで巻き込んだ大騒動になりかけたようで、私の組織ヘッドが激昂して、その人は、ほぼ勘当になりました。
みなさんの会社では、こういう人(問題児)はいないでしょうか? (いないことを祈っております)
たしかにキャリアパスを描くことは大事です。仕事を選びたくなることもよくわかります。
しかし、私たちは、社会的に成功した人たちは必ずしも想像通りのキャリアを歩んで来たわけではないことも知っておくべきです。
キャリアパスの8割は自分も予想しなかった偶然で決まるもの
スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授は、個人のキャリアのほとんどは予想や計画できないもので、偶発的なイベントや人との出会いによって決まっていくということを示しました。
これは、クランボルツ理論(計画的偶発性、プランドハプンスタンス)として広く知られています。
クランボルツ教授が実施した調査によると、社会的に成功した人物の8割は「自分のキャリアは予期していない偶然のものだ」と答えているようです。
興味がある方は以下の参考図書がオススメです。
私の会社事例: 部長さんはみな、思い描いたキャリアパスと違ったと言う
社会的に成功した人物とは、どのレベルの人を指すのかという議論はあると思いますが、身近な事例として、私の会社の部長陣のキャリアパスを紹介したいと思います。
今の部長職についている方のこれまでの人生や経歴をきいてみると、学生時代に専攻していた分野と全く違っていたり、会社に入った時の事業部とは全然畑が違っているというのは日常茶飯事です。
また、アメリカの研究機関や関連会社に出向していた方も多く、帰国するときに、いまの部長職をオファーされたというケースもあります。
そして、いずれの部長さんも口を揃えて言うのが、
- 想像していたキャリアパスとは全然違った。
- その時、その時の仕事に全力で取り組んでいたら、色々な巡り合わせで、今のポジションにつく機会をもらった。
- 若手の社員に言いたいのは、キャリアパスというのは計画することも大事だが、今に目を向けて、全力で仕事に取り組むことで拓けることも多い。
ということでした。
これは私も同感で、私も現場担当者、プロジェクトマネジャー、ファイナンスと職種をかなり変えて来ているのですが、不思議なことに、その職種でやってきたことが有機的に繋がってきて、気づくと道が拓けていました。
今の姿は、入社から数年間までは想像つかなかったですし、キャリアというのは目の前の仕事を一生懸命に取り組めば、自然に見えてくることもあるのだな、と実感しています。
将来をあらかじめ見据えて、点と点を繋ぎ合せることはできない(スティーブ・ジョブズ)
元アップルのCEO 故スティーブ・ジョブズはスタンフォード大学の卒業式でのスピーチで、こんなメッセージを卒業生に伝えました。
将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。
You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.
皆さんよくご存知かもしれませんが、スティーブ・ジョブズの人生は順風満帆だったわけではありません。
自分が作った会社をクビになるという、普通の人間なら立ち直れないような挫折を経験されています。
しかし、ジョブズは、そういった挫折経験も1つの点だと信じ、『今』を一生懸命に生き続けた結果、それらの点が繋がって、後のアップルの驚異的な発展を導くことになります。
『将来は予測できないけれど、後から点と点がつながっていく』
そんなジョブズの生き方が、このスピーチに込められていると思います。
キャリアビジョンやパッションは一生懸命仕事をしていくうちに生まれてくることが多い(DeNA 南場智子)
DeNA ファウンダーの南場さんの言葉も気づきがあります。
今現在、具体的なキャリアビジョンやパッションがないことに対して焦らないでください。
そういうものは、一生懸命仕事をしていくうちに生まれてくることが多いです。
目の前の仕事に打ち込んでいるうちに、やりたいことが明確になってくる。あるいは、湧き出るような情熱に自ら気づく瞬間に巡り会えるので。
焦らずに、そのときまでに、自分の力を磨いておくということが重要だと思います。
(引用元:logmi|DeNA南場氏「会議で“正解”を探す人はいらない」就活生に語った、デキる人材になる方法)
後から点と点が繋がるように、今、その仕事に力強く打ち込め!
ここまで、クランボルツ理論や私の会社の事例、スティーブ・ジョブズのスピーチの一節を紹介してきました。
いずれもキーワードは、『点と点が後から繋がってくる』です。
しかしここで、このキーワードを表面的に捉えて『たくさん点を打ち込めばいいのではないか』と短絡的に考えてしまうのは得策ではありません。
たとえば、「どんどん仕事を変えていこう! 」とか「転職や職種転換を積極的にやっていこう!」というような『手段』に考えが行ってしまうと本末転倒です。
なぜなら、点というのは、今の仕事に120%コミットして、考え抜いて、行動を起こすからこそ生まれる礎だからです。
マニュアルを一通り理解して、業務を回せるようになったレベルでは、決して点ではありません。
その仕事に深く潜って、自分で考え抜いて成果を上げてこそ見えてくる世界があり、それが将来、ほかの点と繋がってくる土台になるのです。
この論点について、同じような意見を持っている方がいたので、以下で引用したいと思います。
当たり前ですが、点と点をつなげるためには、まず「点」がないことには始まりません。この点というのは、ユニークな経験だったり、一生懸命した仕事だったり、頭が爆発するほど詰め込んだ勉強だったり、そういうところからしか抽出されません。
(引用元:Outward Matrix|「点と点をつなげる」とか言う前に、キチンと点を打ち続けよう)
将来に繋がる点を打ち込むためにも、今任された仕事にフルコミットして、毎日頭が痺れるくらいに考え抜いて、そしてアクションを起こすことも大事なのではないでしょうか。
まとめ: 明日の仕事を点にし、未来のキャリアパスに繋げていくために
ここまでの内容をまとめます。
- キャリアパスの8割は自分も予想してなかった偶然で決まるもの(クランボルツ理論)
- 私の会社でも、部長陣は揃って、当初予想していたキャリアと違った(でも満足している)と言っている。
- 将来を見据えて、点と点と繋ぎ合せることはできない。できるのは、後から点と点を繋ぎ合せることだけ(スティーブ・ジョブズ)
- 点というのは、何かに一生懸命打ち込むことで生まれるもの。この表面的に捉えてしまい、浅い仕事をして転々とすると何にもならないので注意。
- 今、任された仕事を全力で取り組むべし。そうすれば、将来繋がってくる。
以上です。
お互いに、明日からの仕事にフルコミットして、力強く点を打ち込んでいきましょう。
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