この記事は、就職活動の面接や大勢の前でのプレゼンテーションなど、慣れない場でいつも緊張してしまう方に向けて書いています。
実は私も人前で極度に緊張するタイプでした。 どれぐらい緊張するかと言うと、就職活動の面接の自己紹介アピールの時に、頭が真っ白になって、何を言ったらいいのかわからなくなったことなんて当たり前でしたし、会社に入ってからも、大勢の前に立つと「極度のあがり症」が再発することも多々ありました。
もちろん、今でも「あがり症」は健在ですが、それでもある程度抑えることができるようになりました。
そんな「極度のあがり症」だった人間が、グローバルプロダクトマネジャーをやったり、外人ばかりの会議で、日本人一人だけでディスカッションしていることになるなんて、昔の私には想像がつきません。
この記事では、「極度のあがり症」の人間でも、うまく面接・プレゼンできるようになる方法(私の実体験)を紹介したいと思います。
就職活動の面接や、社会人になったばかりの方で、あがり症に悩んでいる人にとって参考になれば、これ幸いです。
面接やプレゼンが苦手な人は「上手い人」を演技するべし
世の中には、2つのタイプの人間がいます。それは、
- 大勢から注目を浴びるのが快感で、人前でも緊張せずに、自分の言いたいことを言える人。
- 人前に出ると、周りから自分がどう見られているのか、という視線が気になってしまい、極度に緊張してしまって、何をいうべきかわからなくなってしまう人。
この記事をわざわざ読んでくれる方は、どちらかというと、後者のタイプに近いかもしれません。(前者のような人は、悩みがないので、この記事には興味を持たないでしょうから)
冒頭でも書きましたが、私はまさにタイプ2で、就職活動の集団面接では、ことごとく落とされました。(周りの就活生はスラスラと喋っているのを尻目に、私は噛みまくり&吃りまくりで、その当時、私は人生に絶望しかけていました)
そんな私が劇的に変わったきっかけは何か。
それは、「上手い人」に演技指導をしてもらったからです。
嘘のようですが、本当の話です。
就職活動に、なぜ「演技」?と思われるかもしれませんが、まずは聞いてください。
就職活動の面接対策で、友人がやってくれた演技指導とは?
私の友人に、就職活動を始めて、たったの1~2ヶ月で、第一志望の内定を獲得して、早々に就活を終えた超優秀な「できる人」がいました。
その友人に、「どうやったら、そんなに簡単に面接を突破できるの? ちょっと教えてくれないか?」と聞いたことがきっかけで、私と同じ境遇にあるもう一人の「悩める就活生」と3人で大学の空き教室で会うことになりました。
そして、当日色々と話をする中で、その超優秀な友人が「二人がどんな面接をしているか見たいから、とりあえず、実際にどうやっているか見せて。」と切り出し、彼が面接官となって、私ともう一人の友人の模擬面接をやってもらうことになったのです。
流れはこうです。大学の教室を面接会場に見立てて、
- 教室のドアをノックする
- ドアを開けて、面接官の前まで行く
- 面接官に促されて、椅子に座る
- 自己紹介・アピールを話す
模擬面接が一通り終わった後、苦笑いするとともに、彼はこう言いました。
「あー、これだと確かに通らないねえ」と。
その時の私たちは、終始、ガチガチに緊張していて、表情には笑顔は一切なく、声のトーンもいつもより高めで緊張しているのが手に取るようにわかったからでした。
そして、、、、
数時間に及ぶ演技指導が入りました。
色々とポイントはあったのですが、一番時間をかけたのは、2つ目のドアを開けて椅子に着席するまでの間の “表情” と “振る舞い” です。
ドアを開けた瞬間から、”笑顔” を作って、面接官の顔が見えたら、すかさず会釈をしながらアイコンタクトをして、そのまま席に着くまで、柔らかい表情をキープする。
この表情と所作は、内容とは関係のなさそうな部分です。しかし、これが面接中の基本動作ということだったので、超優秀な友人のやり方に寄せて行くべく、表情や振る舞いを徹底的に練習したのでした。
その結果、どうなったのか?
今まで一度も一次面接を通らなかった私が、その後は一次面接であれば100%通るようになりました。そして、 2次面接以降もほぼ通過するようになり、業界にミスマッチがなければ、書類選考さえ突破すれば、ほぼ100%内定まで行くようになりました。
もちろん、もうひとりの友人も、複数内定をとりました。
なぜ、”表情” や ”振る舞い” が面接やプレゼンで重要なのか
皆さんは、「メラビアンの法則」をご存知でしょうか?
会社のプレゼン研修などでよく紹介されるので、知っている人は多いと思います。
(注意)よくよく調べてみると、セミナーや研修で紹介される内容は少し都合よく解釈されている場合があるので、本当の意味を知りたい方はWikipediaを読んでください。
アメリカUCLA大学の心理学名誉教授のアルバート・メラビアンが1971年に提唱した概念で、
簡単にいうと、「言葉の内容、声(聴覚)、ボディランゲージ(視覚)の3つが矛盾したメッセージを送っている場合、聞き手は声(聴覚)やボディランゲージ(視覚)のメッセージを優先する」という内容です。
この3つを具体的にあげると、以下のものです、
- 言葉の内容(言葉そのものの意味や話の内容など)
- 声のトーン(声の質、話す速さ、声の大きさ、口調など)
- ボディランゲージ(見た目、表情やしぐさ、目線など)
ちょっと、お笑い芸人のツッコミを想像してみてください。
笑いながら「お前、アホか!」と頭をペシっと叩く定番のツッコミです。
言葉を額面通りに受け取ると、「お前はアホ」というネガティブな内容ですが、聞き手は、ツッコミの表情としぐさからポジティブな内容を受けとります。
ビジネスシーンの例をあげると、
仕事で大きなミスをしてしまい、それを上司に報告した時、その上司から
『わかった、〇〇君、ご苦労だった。もう大丈夫だから、あとは帰っていいよ』と、怒りを噛み殺したような表情で言われたとします。
これを言葉通りに受け取って、「やったー、労ってもらった! これで私の仕事は終わったら、帰ろう!」なんて思う人はいないと思います。
いずれの事例も、我々は、言葉の内容ではなく、声やボディランゲージから相手の意図を汲み取っています。
このメラビアンの法則を踏まえると、最も大事なことは、
言葉の内容をしっかりと相手に伝えるためには、声やボディランゲージも「言葉の内容」に合わせる必要があある。
ということです。
面接やプレゼンテーションで、表情が暗かったり、声に自信が感じとれなかったりすると、肝心のプレゼン内容の説得力が減ってしまうのは、ごく自然なことなのです。
本当に大事なメッセージを届けるためにも、表情と振る舞いで、しっかりと聞き手の印象をポジティブにしておく、というのは、大前提として抑えておきたい点なのです。 たとえ、それが演技であったとしてもです。
「できる人」を演じていると、いつの間にか、その演技が素の自分に染み込んでいく
プレゼンや面接で緊張してしまったり、苦手意識がある方は、プレゼンスキルそのものやビジネススキルそのものを向上させないといけないと思いがちです。
でも、その必要は全くありません。
テレビドラマで医者や弁護士を演じている俳優・女優のように、『演技』をすればいいのです。
素の状態でしゃべりが下手な人でも、3分のプレゼンであれば、とにかく時間をかけて練習さえすれば、うまい人のしゃべり方(表情、ボディランゲージ、話すトーン、言葉と言葉の間など)に十分寄せることができるものです。
もしかしたら、『そんなものは本当の自分ではない』というような罪悪感を感じる人がいるかもしれませんが、気にする必要はありません。
なぜなら、そうやって『うまい人』を演じ続けて入れば、いつの間にか、演技と素の自分の境界線が薄れてきて、素の自分=うまい人、になっていくからです。
ウソから出た真実(マコト)という言葉がありますが、不思議なことに、毎日やり続けていると、いつの間にか演技が演技ではなくなっていくんです。
次のアメリカの心理学者エイミー・カディの話も、とても興味深いです。
TED talk: アメリカの社会心理学者(Amy Cuddy) 『演技をし続けると本物になる』

アメリカの心理学者エイミー・カディ(Amy Cuddy)は、自身の経験と研究結果から、ボディランゲージが周りや自分の心に及ぼす効果について報告しています。
以下はエイミーのTED Talksでのプレゼン抜粋です。(読みやすいように、一部改変しています)
彼女も「演技を続ければ、いつしか本物になる」ということを主張しています。
ハーバードでの最初の年の終わりのことですが、それまで授業中に一言も発言しなかった学生がいたので、私は「ねえ、授業にちゃんと参加しないと 落第するよ」と言ってやったら、後で、その子がすっかり打ちひしがれた様子で私の部屋にやってくるとこう言ったんです。「私ここにいるべき人間じゃないんです」そこで、私はこう言いました。「あんたはここにいるべき人間よ!、フリをしていれば本当に そうなれるんだ。だから、明日はできるフリをしなさい 力に溢れるフリを。そして、教室に行って 最高の意見を言うの」と、。それで当日どうなったかというと、彼女は最高の意見を言って、みんな振り向いていました。「誰だろう? あんな子が いたのに気が付かなかった」(笑) と。何ヶ月か経って、彼女が またやってきましたが、単にフリをしてやりおおせただけではなく フリを続けて本当になった のが分かりました。彼女は変わったんです。だから皆さんに言いたいんです。フリをしてやり過ごすのではなく、フリを本物にしてくださいと。それが本当に自分のものになるまでやるんです。
まとめ: 自分のなりたい人を見つけて、その人を演じることから始めよ
面接やプレゼン以外の事例も少し紹介します。別記事で、私はメール返信が遅くて仕事の締切も守れないタイプだったと書きました。(もちろん、周りからの評判も良くなかったです)。
そんな私が今では、メール即レス当たり前で、周りからも仕事が早いと言われるのですが、実はまさに『演技』が始まりでした。
当時、会社内で、トップクラスに仕事が早い先輩がたまたま同じチームにいたので、その人の『演技』を始めたんです。
最初は演技のクオリティも50%くらいだったのですが、1年も続けるうちに、いつの間にか、その人と同じクオリティに近づくようになりました。
その時、どういうことを考えていたかと言うと、『この人だったら、何を考えて、どんな振る舞いをするだろうか?』でした。
つまり、自分の価値観や趣向は一旦外に置いて、その人の価値観や考えを想像して、それに基づいて、行動するのです。
私は演劇部の経験もないので、何が演技のセオリーかはわからないですが、仕事をする上での演技はこれで合っているのではないかと思います。
もちろん、演技にあたって、事前に本人にヒアリングをしました。何気ない会話や仕事の相談という名目で。
何はともあれ、大事なのは、まずは自分の周りのお手本を見つけることです。
あなたの周りに、プレゼンや大勢の前でのスピーチが上手な人はいるでしょうか?
もし、動画や録音を入手できたら、それを使って、本人になりきれるよう演技してみてください。
もし、その人が身近な人なら、その人の価値観や考え方をヒアリングしてみると、さらに良いと思います。
演技に深みが出てきますし、それによって、より本人に近づけることができます。
私もいま、新たに演技したい人(海外MBA持ち帰国子女で戦略コンサル出身の将来の社長候補)が見つかったので、その人の価値観や仕事観などをそれとなくヒアリング中です。
あまりにもいまの自分から遠すぎますが、まずは形だけでも演技できればと思っています。
さて、あなたは誰を演技したいですか?