みなさんは、クライアントや社内のマネジメント層に何か関心を持ってもらいたい事があった時、どんなアプローチをとりますか?
人に関心を持ってもらいたいものがあったら、『測ってみて、見える化する』というのはビジネスにおける極めて有効なアプローチの一つと言えます。
この記事では、まず見える化と測る化の違いを説明し、そのあとに事例紹介を交えながら「なぜ見える化するのか? 測る化するのか?」という点を考えて行きたいと思います。
見える化 と 測る化 の違いとは
見える化というキーワードは、最近は耳にする機会も多くなってきていますが、測る化という言葉は初耳の方も多いかもしれません。
両者の違いを考える前に、まずは見える化 と 測る化 の定義について、おさらいしたいと思います。
見える化とは?
見える化とは、現場の状況や問題点などを、普段から「見える」ようにしておくことで、企業活動を行っていく上で生じる様々な問題を「気づき」やすい状態にすることです。 そしてその問題に関し、よく「考え」、解決・分析のために「行動」し、再びその結果を「見る」。
見える化の定義は人や会社によって、多少変わってくると思いますが、簡単にいうと、目に見えないものを見えるようにする(別名、可視化)というものだと思います。
そして、その意味するところは結構広く、「見えにくい作業工程をフローチャートを使って見えるようにした」とか「頭の中にあるアイデアを文章に起こして明文化した」とか、そういった定性的なものも含まれます。
一方で、測る化はというと、以下のようなものです。
測る化とは?
測る化は、見えないもの・見えにくいものを数値で定量化することである。
測る化という言葉はあまり広まっていないために明確な定義が見当たらなかったのですが、要するに、数字で見える化した状態です。
この見える化 と 測る化 はどういう関係かというと、「測る化」は「見える化」の一つで、定量的に見える化すること、だと言えます。
図解してみるのが一番早いと思うので、以下をご覧ください。

このように、「測る化」は「見える化」の一種で、特に数値や数量で見える化しようとするアプローチと言えます。
見える化・測る化の身近な事例:健康診断
では、『見える化』や『測る化』というキーワードを聞いて、身近なものではどんなものをイメージされるでしょうか?
例えば、健康診断の血液検査や血圧測定などを考えてみましょう。目に見えないもの測って、その結果を数字で見ることができて、正常基準値を越えているかどうかで、一目で自分の今の健康状態を知ることができます。
健康診断の結果、血圧が高いと分かれば、その原因が、1)食生活にあるのか、2)日々の運動状況か、3)精神的ストレスによるものなのか、3)遺伝的体質によるものなのか、などを調べていって、必要に応じて改善を図って行きましょう、と医師や看護師さんに説明されます。
そうすると、普段、健康にあまり興味や関心を持っていない人でも、『この数字は確かにまずそうだな。。ちょっと食生活に気をつけないといけないな』と行動を変えようと思うようになります。
今までは誰からも何を言われても気にしていなかった人が、実際に、不健康を示す「数字」をみた途端に、コロっと行動を変えてしまうこともあるのが、面白いところです。例えば、
(私)『あれ? 部長、大好きなお肉は食べないんですか?』
(部長)『ええねん、俺ちょっと健康志向に転換したんや(この前の健康診断の時の脂質の数字、あれはアカンかったな・・)』
というように(笑)。
目に見えないものが数字で『測る化』されたことで、興味・関心が生まれて、行動も変わっていく、という分かりやすい事例です。
見える化・測る化のPMO事例:プロジェクトタイムライン
上記は身近な事例でしたが、ビジネスも同じだと言えます。
マネジメント層にとっては、ビジネスの現場で起きていることがよく見えていないものです。見えていないので、何か問題が起きた時には、時すでに遅し、ということがあります。
『ガンが見つかりました。もうステージ4です。』と言われてからでは、打てる施策が少ないのと同様、ビジネスの問題も早期に発見して、すぐに対処するのが鉄則です。
私がPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)というグループにいた時、そのグループのミッションは、『全プロジェクトの進捗状況を見える化し、それをタイムリーにマネジメント層に情報提供し、組織全体としてのプロジェクトの問題解決・意思決定に貢献する』というものでした。
その中の一つの仕事が、全プロジェクトのタイムラインの見える化・測る化でした。プロジェクトのタイムラインは、それを管理するリーダーやマネージャーによってやり方がバラバラであり、かつ、それが見える化されていなかったのが私の組織の問題になっていたからです。
そこで、私のグループのメンバー全員で、全プロジェクトの中に入り込み、共通の基準でタイムラインを管理し、さらにそれを共通のシステムに入力していくことで、一元管理しました。その結果、システムからいつでも最新の全プロジェクトのタイムラインが出せるようになり、マネジメント層にもタイムリーにプロジェクトの進捗報告が可能になりました。
例えば、シニアマネジメント層から『明日、グローバルに日本のプロジェクトの進捗を報告したいんだけど、タイムライン一覧出せる?』と言われても、ものの1分程度で、システムからダウンロードして提供することができていました。
そうやって全プロジェクトのタイムラインが数字で可視化されると、マネジメント層に限らず色々なところが興味・関心を持つようになり、例えば、
- 自部門・グループの将来の人員計画に使いたい
- 他社に業務委託するボリューム予測に使いたい
- 他社から仕入れる調達ボリューム予測に使いたい
- 自社の会計実績の算出に使いたい
というように、まさに、ヒト・モノ・カネに関わる業務に使われるようになりました。
これも最初からそうだったわけでなく、見えないものが数字として見えた結果、興味・関心をもたれるようになった事例です。
逆にいうと、数字として見えるようになるまでは、関心もなくサポートもしてくれないことも多いので、ヒトはなかなかゲンキンな生き物だなと思ってしまいます(笑)。
まとめ:大事な興味・関心事こそ、測って見える化する
上記の見える化・測る化に関する事例の共通点は何だと思いますか?
それは、どちらも「測って見える化されると、ヒトは興味・関心を持つ。興味・関心を持つと、ヒトは行動を起こす」ということです。
つまり、誰かに行動を起こしてもらうためには、「実際に測ってみて、その測った結果を根拠にして、行動を促す」というのがとても効果的なアプローチなのです。
みなさんは今、誰かに何かをやって欲しいと思うことはありますか? それは、ちょっとお願いしにくいことですか?
それであれば、どんな方法でもいいので、まず現状を測ってみてはいかがでしょうか?
相手が興味・関心を持って動きたくなるような事実が見えてくるかもしれません。