『仕事における目的意識とは?』を部下や後輩に説明したものの、なかなか理解してもらえなかった、、という経験はありませんか?
仕事における目的意識に関しては、これまでも本サイトで何度も記事にしてきましたが、実際のところ、なかなかわかりやすく言語化するのは難しいなあ、と思っていました。
そんな折、たまたま心理学の分野で「カラーバス効果」というものがあることを知り、仕事における目的意識はこの「カラーバス効果」のようなものだ、と私の中で腹落ちしたので、今回の記事で考察していきたいと思います。
部下や後輩に目的意識を持たせたいと悩んでいる中間管理職のみなさんや、上司や先輩から言われたものの、いまいち腑に落ちていない若手社員のみなさんに、ぜひ読んでいただければと思います。
では、始めます。
そもそも、カラーバスの効果とは?
カラーバス効果という言葉は初めて耳にする方も多いと思いますが、実は我々にも馴染みがあるものです。
カラーバスとは、「色(color)」を「浴びる(bath)」と言う単語の組み合わせで、『強く意識したものほど、その情報が勝手に我々の目に飛び込んでくるようになる』という意味です。
例えば、私の娘はピンク色がとても好きで、街中を歩いていると、普通の人は全く気づかないようなマイナーな場所のピンク色を見つけてきます。
他にもトイレに行きたくなった時に、トイレの看板が急に目に入るようになるのも同じ原理です。
逆に、普段あまり意識していないことは、視野に入っていても素通りしてしまいます。
例えば、本屋に行った際、興味がない本はたとえ視界に入っていたとしても認識できません。そして最終的には、いつもと同じジャンルの本にばかり目が行ってしまうのは、まさにこのカラーバス効果のためなのです。
つまり、カラーバスの法則とは、良くも悪くも、我々が強く意識した事柄を効率よく拾ってくる脳のシステムなのです。
仕事における目的意識とは何か?

仕事における目的意識は、このカラーバス効果に似ていると私は考えています。
日常業務の中でも、どのような目的意識を持つかで、得られるインプットとアウトプットが大きく変わります。そして、それが自身の成長速度に大きく影響します。
例えば、無駄なプロセスが嫌いで仕事を効率化したいと意識している人は、前任者が気づかなかった非効率な部分を簡単に見つけ出します。
一方で、単に仕事が面倒だなとか、早く終わらせたいと思っている人には、いろいろな手を抜く方法(誘惑)が目に飛び込んでくるようになります。
まるで、我々は見たいと思っているものしか見れないのではないか、と思ってしまいます。
京セラ創業者の稲盛和夫さんは、目的意識に関して以下のように話しています。
何でもない現象の中にすばらしいチャンスが潜んでいます。しかし、それは強烈な目的意識を持った人の目しか移らないものです。目的意識のないうつろな目には、どんな素晴らしいチャンスもみることはありません。
稲盛和夫(京セラ創業者)
同じ仕事をしているのに、人によって成果が大きく変わったり、成長速度が違うのは、この目的意識の差です。
実際に、競争が激しいスポーツや音楽の世界では、日々の練習時の目的意識の差がパフォーマンスの差に繋がっていると報告されています。
例えば、以下の元日本代表サッカー選手の中田英寿さんの目的意識などは、常人とはかけ離れたもの凄いものがあります。私もサッカーをやっていましたが、これがプロフェッショナルの目的意識か、と痛感しました。
つまり、仕事における目的意識とは、仕事の成果と自分の成長を決定づけるコア要素なのです。
意識とは、「自分自身への問い」である

カラーバス効果に少し戻ります。
ピンク色が好きな私の娘は、普段どんな意識を持っているかというと、
「どこかにピンク色のものはないか?」という問いかけを自分自身にしているようです。
常にこの問いかけが彼女の頭の中を駆け巡っているので、視界に一瞬でもピンク色が入れば、脳が瞬時にその情報を拾ってきて「ピンク、発見しました!」という報告をしてくれるという仕組みなのです。
意識とは、言い換えると、『自分自身への問いかけ』と言えるのではないでしょうか。
自身への日々の問いかけが長期的成長に大きく影響する
人間は、1日に6万回以上も自分自身への問いかけをするようです。
例えば、朝起きて、
「朝ごはんに何を食べようか?」とか、
「今日はどんな服を着ていこうかな?」
「そもそも、今日の天候はどうかな?」などです。
これと同じで、我々の仕事における目的意識とは、すなわち、自分自身への仕事に関する問いかけに他なりません。
例えば、「こんなつまらない仕事は早く辞めたい」という意識を持っている人は、「この仕事をやめる方法やチャンスはないか?」という非生産的な問いかけを自分自身にし続けていることと同義です。
そういう人からは、仕事に対するポジティブな提案が出てくるはずがありません。
一方で、自分の仕事の付加価値を高めようとしている人は、
- 成果物を早く提出できないか?
- 成果物の品質を高められないか?
- 少ない工数で同じ成果物を作れないか?
- 誰か周りに困っている人はいないか?
- どうしたら相手に満足してもらえるだろう?
- 自分に何かできることはないか?
というように、日々、自分の仕事の価値を高める問いかけをしています。
みんな一生懸命、仕事に取り組んでいるのに、成長速度に差が出てしまうのはなぜか?
重要な点は、そこに「目的意識があるかどうか?」です。
スポーツでも同じですが、日課として1000回素振りをしていたとしても、闇雲にやっていては意味がありません。
1回1回の素振りに明確な目的意識を持って取り組むことが重要なのです。
まとめ:仕事で結果を出すための目的意識・自分への問いかけ

私はアスリートやスポーツの世界で結果を出す人の考え方や意識にとても興味があって、よくインタビュー記事を読むのですが、
そこに必ずと言っていいほど、出てくる頻出フレーズがあります。
何だと思いますか?
それは、「スキルや技術も大事だけど、やはりメンタルが重要」というものです。
メンタルという言葉自体は広い意味を持つのですが、よくよく内容を見てみると、「日々のトレーニングで何を意識しているか?」、「何を意識して試合に臨んでいるか?」というものです。
プロのアスリートは、一つ一つの動作に、意識を集中して、より良い結果を得ようと努力しています。世界のライバルとの競争に勝つために。
我々のビジネスの現場に置き換えてみると、それは
一つ一つの仕事、一つ一つのタスク、一つ一つの行動、一つ一つの動作のことなのではないでしょうか?
我々は、本当に、一つ一つの動作に、意識を向けているのでしょうか?
例えば、何かメールを1つ送るとき、
例えば、何か1つの会議に参加するとき、
例えば、何か1つの作業をするとき、
そういった何気ない1つのアクションについて、昨日の自分より少しでも成長するために、意識してトライできることはないでしょうか?
そのまま、いつも通りのルーチンでこなすか?
それとも、何かを得ようと、試行錯誤してみるか?
この自身への問いかけこそが『目的意識』であり、これこそがカラーバス効果を生み、我々の成長を飛躍的に促してくれるのではないでしょうか。