「なりたい自分になるには、理想の姿をありありとイメージしなさい」、「自己実現のために、ネガティブな考え方からポジティブに変わろう」といった話はよく聞きますが、これは本当なのでしょうか?
人のモチベーションについて20年以上も研究を続けている心理学者ガブリエル・エッティンゲン氏によると、上記のような理想の姿のイメージやポジティブ思考を持つだけでは、かえって逆効果だと報告されています。
この記事では、自分がなりたい未来の姿を実現するために大事な “もう一つのこと” をお伝えしたいと思います。
私の事例:ポジティブな目標設定として、英会話スクールに3年間通った結果
「これからの時代は英語が必須になる。英語が話せない人は出世できない」というフレーズは皆さんもよく聞いているのではないでしょうか。
私も大学時代に就職先から内定をもらった後、「ビジネス英語を話せるようになりたい」という理想を描いて、大金をはたいて某マンツーマン英会話スクールに通うことにしました。
その某英会話スクールには、会社に入って新入社員として働く中も継続し、合計で3年くらいは通っていたかと思います。
週1回程度の通学と、頻度は少なかったのですが、それでも数百万円程度の投資になっていました。
気になるその結果はどうだったのか・・・
簡単な日常会話程度を話せるようになったことと、あとは英語に対する恐怖心がなくなったくらいでした。
振り返ってみると、英語が上達しなかった理由はとても簡単で、ビジネス英会話に必要な自己学習を怠っており、単に定期的に英会話スクールに通っているだけになっていた、というのが理由です。
『英語が話せるようになりたい』というイメージはできても行動が伴わない典型例でした。
同じような話が研究結果として報告されています。
肥満ぎみの女性に1年間ダイエットに挑戦してもらった結果
冒頭でも紹介した心理学者ガブリエル・エッティンゲン氏が1991年に報告した「ポジティブシンキングはいつもポジティブな結果になるのか?」という論文です。
Expectation, fantasy, and weight loss: Is the impact of positive thinking always positive?
その実験は減量プログラムに参加している25名の女性を対象に行われました。
まず、参加者を半分のグループに分けて、片方のグループには「減量が成功した理想的な自分」というポジティブな姿だけをイメージしてもらいます。例えば、スリムになって外出する姿などです。
もう一方のグループには、ドーナツなどの甘い誘惑を我慢しているような、これから起こるであろう障害も想像しながら減量プログラムをしてもらう、という実験内容でした。
そして、1年後に再調査を行なった結果、なんと苦しい障害も想像したグループの方が平均11キロも多く減量に成功したという結果でした。
このガブリエル・エッティンゲン氏は他にも様々なテーマでの実験結果を報告しています。
例えば、2014年の関節炎の手術をした老人を対象とした以下の調査です。
Positive fantasies predict low academic achievement in disadvantaged students
実験方法は上記と同じで、手術直後に「どれぐらいの早さで回復するか?」を予想してもらうものです。
その結果、起こりうる障害も想像した被験者の方がポジティブなイメージだけの場合よりも、筋肉の発達が早く、歩けるようになるまで時間も短かった、という内容でした。
理想の姿に到達するまでの “起こりうる障害” も想像すること
上記のガブリエル・エッティンゲン氏の実験結果はとても興味深いと思いませんか?
この実験結果が示しているのは、「なりたい未来の自分を想像すること」は大事だけれど、それに加えて、「そこに至るまでの苦しい障害と、それを乗り越える自分」”も” 想像してくださいね。
ということです。
我々はつい、厳しい現実から目を背けたくなるものです。
例えば、私がビジネス英会話習得に必須の自己学習から逃げ続けて、某マンツーマン英会話スクールに無駄な投資をしてしまったことのように。。
エッティンゲン氏の実験結果は、自分のなりたい未来は、簡単に手に入るものではなく、
私たちは、なりたい理想の姿を思い描きつつ、一方でしっかりと現実を見据えて、コツコツと努力していく必要がある、という事実を伝えているのだと思います。
私の事例:某マンツーマン英会話の失敗の後・・・
さて、最後に、私のマンツーマン英会話スクールの失敗のその後もお伝えしておきたいと思います。
その英会話スクールに通ったのち、心理的に、しばらく英語と距離を置いてしまいました。もちろん、その間も海外からビジネスパートナーが来日して、英語での会議などもあったにもかかわらず、です。
当然、彼らが何を喋っているかなどわかりません。そんな状況でしたから、次第に英語を使うビジネスからも逃げたい気持ちが先行していき、仕事もうまくいきませんでした。
そんなことも重なり、仕事で病みかけていたと思います。
その後、色々とあった(話すと長くなるのでまた別の機会に)後、グローバルプロダクトマネジャーとしてアサインされた時が、英語に対する本気度が完全に切り替わったターニングポイントだったと思います。
その後、ビジネス英会話を最低限使えるレベルに引き上げるために、本当に自分に必要なことは何かを調べ、そこに至るまでに必要な自己学習と、自分のサポートに適した最適な英語塾を選択しました。
そして、今につながるのですが、海外のカウンターパートと英語会議をすることにそこまで問題はなく、英語の資料作成も対して時間もかからなくなりました。
私がビジネス英会話を習得できた理由は何だったのか、というと、必要性に迫られたことで、
心から起こりうる障害(現実)に向き合う覚悟ができたからだと思います。
まとめ: 我々の目標を実現していくために考えること
エッティンゲン氏は、自身のこれまでの研究結果から、以下のように述べています。
ポジティブシンキングが有効に働くのは、
- なりたい未来の姿や目標を実現したいと、自分自身で心から思えている場合で、かつ、
- その目標に至るまでの起こりうる障害について想像できている場合である、と。
もし、あなたが今の現状を打破して、違うことにチャレンジしようと思っている時、
なりたい未来の自分を明確に思い描くとともに、そこに立ちはだかる起こりうる障害についても想像できれば、きっとその将来の姿は実現できると思います。