あなたは、普段、自分自身にどんな質問をしていますか?
質問というと、”自分以外の人” への質問を思い浮かべるかもしれません。しかし、あなたが最も質問している相手は、”あなた” 自身です。
そして、その自分への質問が、あなたの価値観やあなたの人生、あなたの仕事のキャリアを作っていきます。
この記事では、自分への質問と脳の働きとの関係を明らかにした後に、それを人生や仕事にどのように活用していくか?を考えたいと思います。
脳は質問に答えられない “空白” を埋めようとする
人間は質問を投げかけられると、無意識のうちにそれに答えようとします。
これはなぜかと言うと、脳が “空白” を嫌う性質を持っていて、その空白を埋めようとするからです。
この脳の空白を利用している分かりやすい事例が、テレビのバラエティー番組です。
皆さんも良くご存知の、「このあと、衝撃の事実が!」という煽り文句を投げかけた後に長いCMに入るという手法です。
視聴者の立場としては、長いCMにうんざりとして、チャンネルを変えたいという衝動に駆られるのですが、その内容がどうしても気になって、そのままCMが終わるまで待ってしまう、というあのケースです。
結局、CMが終わって、その事実を知らされるのですが、大体が「なーんだ、その程度か。CMで引っ張るほどでもない事実だったな」と若干の後悔を抱きながら、一方で、疑問が解決した “スッキリした気持ち” で次のテレビ番組に移っていきます。
この “スッキリした気持ち” というのが、まさに “空白” が埋まった瞬間です。
このように、我々の脳は「わからないことを嫌う」という性質を持っています。
これは、いったいなぜなのでしょうか。
それは我々の先祖の時代まで遡ります。その時代は今のように安全な環境ではなく、いつ死の危険に晒されるかわからない状況でした。
そのため、脳は今の状況が「安全かどうか?」を常に判断し続ける必要があり、「目に入ってきたものや聞こえたもの、触ったものや漂ってきた匂いが、いったい何であるのか? 自分が過去に知っているものか、知らないものか? 安全そうか、危険そうか?」ということを瞬時に識別していました。
これは人間が、はるか昔から、無意識に持ち続けてきた生存本能です。
そして、今の日常生活でも、同じように「わからないこと=安全ではないかもしれない」という危機回避の仕組みが無意識的に動くのです。
ここまで読まれて、「なんだ、そんな生存本能の機能、今の時代にはなくても困らないだろう」と思われるかもしれません。
でも、この脳の “空白” を埋めたがる性質は、長期的な視点で見ると、われわれの人生を左右することになります。
例えば、次の2人の男の事例のように。
自分への質問が仕事のキャリアパスを分けた事例
とあるところに、2人の50歳の男性がいました。
1人は投資家になって、働かなくてもお金が入ってくる生活をしています。
もう一人は最近リストラに遭って、再就職を探している最中の男性です。
この2人は同じ大学の同期で、就職先も同じ電機メーカーでした。
ところが、入社5年目から、不況の影響もあって、会社の業績もだんだんと傾いてきます。そして、入社10年後には昇給すらなくなっていました。
その時、リストラの男は、こんな風に思います。
「なんで俺はこんな会社に就職したんだろう? あの時に違う会社に就職していればよかったのに。なぜ自分はこんなに運がないのか?」と。
条件の悪い転勤を命じられた時は、「なぜ俺だけこんな目にあうのだろう?」と自嘲します。
そして、ついには、リストラを命じられることになります。
一方で、投資家の男はというと、
「このままではこの会社はダメになる、これまでの経験を生かして、何か新しい事業を始められないだろうか?」
「これから必要とされるのは、どんな分野だろうか?」と自分に問いかけます。
そして、独立起業し、新たに立ち上げた事業を軌道に乗せたころ、男はさらに自問します。
「今、この瞬間の家族との時間を大事にしたい。それと同時に、ある程度の収入を得るにはどうしたらいいのだろう?」と。
そこで、男は事業を全て売却。そこで得たお金を元手に不動産投資を始め、現在に至ります。
さて、この事例からどんなことを学べるのでしょうか。
自分によい質問を続ければ、よい方向で思考が動き出し、それがよい行動に繋がっていく。
逆に、自嘲のような悪い質問をし続ければ、悪い思考、悪い行動にしか進んでいかない。
私はそんな風なことを感じましたが、あなたはどうでしたか?
仕事ができる人は、どんな意識でどんな自問自答をしている?
私が全く仕事ができなかった暗黒時代の話をしたいと思います。
入社4年目くらいの時に、気分屋でマイクロマネジメントの上司の下にいた時のことです。
その時は、とにかく何をやっても注意されて、いつもビクビクしていました。
そんな状況なので、全く生産性のない質問を自分に投げかけ続けていました。例えば、以下のように。
「これをやったら、また注意されるのではないか?」
「今、話しかけても大丈夫だろうか? 怒られないだろうか?」
「今、この質問をすると、嫌な顔をされるだろうか?」
100人以上の大勢の前でプレゼンテーションするときも、「後で何を注意されるのだろうか?」と考えるあまり、意識や目線が自然にその上司の方に行ってしまって、怖い表情を見て、さらに萎縮してしまったこともありました。
こんな人間が、いい仕事ができると思うでしょうか?
否ですよね(自分で言うのもなんですが、それはもう酷かったと思います)
当時の私は、「自分を守ること」のために、”貴重な質問”と、”脳の空白” を使ってしまっていたのです
良い仕事をするには、「自分を守る」ような考え方、質問ではダメです。
一方、仕事がデキるビジネスパーソンは「相手が満足してくれる」ことを意識して、常にこんな質問を自分に投げかけ続けています。
「この人は本当は何を望んでいるのだろう?」
「どうしたら、この人を喜ばせることができるか?」
「どうしたら、もっと会社にとって良い価値を提供できるだろうか?」
「どうしたら、もっと今の仕事を効率化できるだろうか?」
といったように。
仕事力や会議の生産性を高める自分への質問リスト
自分への良い質問は、どんな場面でも有効です。もちろん、あなたの日常のビジネスシーンでも。
例えば、あなたが会議をしようとしていれば、以下のような質問を自分に投げかけてはいかがでしょうか。
- そもそも、なぜこの会議を開催する必要があるのだろう?
- なぜ、メールではダメだった? なぜ、出席者一人一人との面談ではダメだった?
- この会議の目的は何? 成果物は何?
- この会議が終わった時に、どんな状態になっていれば成功と言える?
- 会議の目的達成のために、今の出席者で足りている? または出席者を絞った方がいい?
- 目的達成のために、どんな会議のアジェンダを組めば良さそう?
- アジェンダに加えて、会議資料は事前送付した方がいいか、当日配布が効果的か?
- 会議の進め方はどうする? 時間配分は? どこまで決めて、どこから宿題事項にする?
- 会議が終わった後のフォローアップはどうするか? 誰をフォローしていくか?
これらは、まさに、私が会議をする時に、いつも自分に投げかけている実例です。
その会議で何を成し遂げたいのか?が明確にイメージされ、徹底的に準備された会議は、良い成果物を産みます。
インターネットや書籍に取り上げられる生産性のない会議というのは、そういった準備が不十分なものであることがほとんどだと思います。
上記は会議をイメージした質問ですが、基本的に、他の仕事も同じです。
例えば、
- そもそも、なぜこの仕事が必要なのだろう?
- この仕事のオーナーは?(誰が最終決定権を持っている?)
- この仕事の最終ゴールはどこ?
- この仕事の成果物を、オーナーはどのように使いたいのか?
- この仕事の予算とデッドラインは?
- この仕事をするためには、どんな人を巻き込まないといけない?
- この仕事を進めるために、事前に話を通しておいた方が良いステークホルダーは?
- この仕事に使える自分のリソースは? 直属の上司には話が通っているか?
といった質問を自分に投げかければ、あなたの脳は無意識に、脳の “空白” を埋めてくれます。
もし、埋まらない “空白” があれば、それはチャンスです。
その “空白” こそが、仕事が成功するのか/失敗するのか、を握っているキーポイントということです。
そこに気づけたのであれば、その “空白” を無意識と意識の両方を使って、埋めていくだけですよね。
まとめ:明日からの人生と仕事に向けて
いかがでしたでしょうか。これまでの内容を簡単にまとめます。
- 自分に質問すると、脳はその答えを見つけようと勝手に動き出す。
- その理由は、人間の脳は、わからないこと=”空白” を嫌うため。
- 自分に良い質問を投げかければ、脳は良い答えを探す。
- 仕事ができる人は、常に、良い質問を自分に投げかけている。
人は1日の中で、なんと6万回もの質疑応答を繰り返していると言われています。そのほとんどが無意識に、です。
そこに、あなたの人生や仕事のパフォーマンスを飛躍させる質問を混ぜていったら、どうなると思いますか?
面白い人生になると思いませんか?
1日では成果は出ないかもしれません。でも、明日から実践していけば、1年後はどうでしょうか?
この記事があなたのこれからの仕事、そして人生に役立つことを祈っております。