『仕事で人から何かを聞かれたり、頼まれたりしたら、必ず理由と背景を聞け』
これは私が入社3年目の時に、上司に言われたフレーズです。
皆さんも社内メールなどで、他部門から『××について教えてくれませんか?』とか、『××のデータがあればいただけませんか?』というシンプルな質問をもらったことはありませんか?
そんな時に、どういう対応をするかで、実は仕事ができる人かどうかが、一目瞭然なのです。
人からの依頼は、あなたの仕事の幅や組織の存在価値を広げるチャンスである
他の部門から『××のデータをください』と頼まれた時、どんな反応をするのかには、2つのタイプがあります。
ある人は、『あー、もう、こんなに忙しい時に、こんなに面倒な依頼をしてくるなんて、やってられないわ。でも仕方ないし、対応してあげるか。はい、このデータです。どうぞ。(これ以上、こちらの時間をとらせないでね)』
一方で、ある人はこんな対応です。『ああ、そのデータならすぐに提供できますよ。どうぞ。ちなみに、このデータをどんな風に使う予定か、差し支えなければ教えていただけますか? もしかしたら、もっと適切なデータをご提供できるかもしれませんし、他にもより良い分析などができるかもしれません』
どちらのタイプが、依頼主の仕事の成功確率を上げることになると思いますか?
言わずもがなの、後者ですよね。
後者の場合は、『実は、◯◯をしたいと思っていて、そのために××のデータが欲しいと思っていたんですよ』という返答が期待できます。
そうすると、ここからは早いです。依頼主の本当にやりたいことを叶えてあげるために、本当に必要なデータを見つけてあげる手助けをしたり、場合によっては、分析などの手伝いやコンサルをやってあげれば、あなたは確実に信頼を勝ち得ることができます。
そして、あなたが依頼主に価値を提供したということは、すなわち、あなたの組織全体の付加価値を高めることに繋がります。
これを続けていると、自然と、他部門の長から、あなたの組織の長に、『いつもお世話になってます。特に、あなたの組織の◯◯さんには、うちの△△さんが助けられているみたいで』というように、組織の横のつながりをどんどん深めていくわけです。
組織同士が密に連携すればするほど、会社全体のパフォーマンスは向上していくので、この担当者レベルの仕事で、付加価値を高めるのは、とても大事なことです。
そして、当然ながら、一番メリットがあるのは、あなた自身で、依頼主との信頼関係が醸成されるだけではなく、仕事の幅も広がり、それがまた色々な仕事を引き寄せる呼び水になっていきます。
すべては、『ちなみにどんな風に使うのですか?』とか、『何のために使うのですか?』という、一歩踏み好んだ質問から、始まるわけです。
ニーズとウォンツの違いが分かる人は、依頼の背景と理由を知ろうとする
みなさんは、ニーズとウォンツの違いを説明できますか?
ニーズというのは、日常のビジネスシーンでもよく使われると思いますが、ウォンツはあまり馴染みがないかもしれません。
詳しくは、以下の記事を読んでいただければと思いますが、
簡単に紹介しておくと、ニーズとは「欲求」のことで、ウォンツとは「欲求を満たす手段」のことを言います。
さて、ここで冒頭の話に戻ります。
『××のデータをください』という依頼は、ニーズとウォンツのどちらだとおもいますか?
そうです、ウォンツなのです。
そして、『そのデータで、何をしたいのですか?』と聞いた答えこそが、ニーズなのです。
ニーズとウォンツを考える上で大事なポイントは、ニーズは1つで、そのニーズに対してウォンツは複数あるという点です。
例えば、お腹が空いたから、お腹を満たしたいという欲求(ニーズ)があり、そのウォンツとして、ハンバーガーやおにぎり、ラーメンや定食屋という様々な選択肢があるように。
こんな場面を想像してみてください。お腹が空いて食べ物屋を探している女性がいます。でも、他に見つからないので仕方なくハンバーガー屋に行こうとしています。そんな女性に、『あそこに美味しいそば屋がありますよ』と教えてあげたら、とても喜びますよね。
彼女は、できればヘルシーな食事でお腹を満たしたいというニーズがあったのですが、ウォンツがハンバーガーしかなくて困っていたのです。いや、むしろ、選択肢がない状況を受け入れてしまって、ハンバーガーが当たり前だと思っている場面もあります。
これと同じことが仕事でも起きています。
『××のデータをください』というのは、××のデータしかないと思っているから、そういう依頼をしてきている場合が多いです。
実は、もっと他に良いデータ(すなわち、他のウォンツ)があるかもしれないのにもかかわらず、です。
特に、自分の専門外の分野になると、本当に欲しいものがわからないというケースは多いものです。
だからこそ、依頼されたもの(ウォンツ)を、言葉通りに受けとって提供することよりも、
まずは、何がしたいのか?(ニーズ)を確認してから、それに適したもの(ニーズに適した真のウォンツ)を提供してあげると、相手にとても喜ばれるわけです。
そして、そのニーズを引き出す魔法の言葉が、『ちなみに、このご依頼には、どのような背景があるのですか?』とか、『ご依頼のものを使って、何をされたいのですか? 差し支えなければ、教えていただけますか?』なのです。
相手の依頼の背景や理由を知ることで、あなたの提供できる付加価値は格段に高まります。
これが私の昔の上司が伝えたかったことなのだと思います(当時は分かりませんでしたけど)
さて、明日の仕事で、誰かから依頼を受けたら、あなたは何と答えますか?
この記事が明日からの仕事に役立てば、これ幸いです。