この記事は、仕事で『もっと論理的に話して』とか『話の筋がよく見えない』とよく言われてしまうビジネスパーソンに向けて書いています。
そんなあなたに、どうしても伝えたい解決策があります。
単純明快です。「接続詞」を意識して使うこと。たったこれだけ。
もしかしたら、ロジカルツリーやMECE分類などのコンサルでよく使われている手法を想像された方がいるかもしれませんが、あれはあくまで物事をロジカルに分類するための手法なので、いくらロジカルツリーを学んでも “論理的” にはなりません。
ロジカルツリーは、すでに論理的な人が使うものですから。
筆者は現在(執筆時2021年2月)、グローバル企業の駐在員として、アメリカの会社で働いています。
約400億円の研究開発予算を管理するファイナンスリードとして、日々、シニアマネジメントやプロダクトリーダーと働いています。
そんな日々の中、当然ながら、ロジカルな議論の応酬が繰り広げられているわけで、そこに食らいついていく必要があります。
そして、帰国子女ではなく、英語力にハンディキャップがある私が頼りにしているものが「接続詞」です。
接続詞は、自転車の補助輪のようなもので、我々が論理的に書いたり、話したりすることを助けてくれます。
実際に私も昔、『なに言ってるかわからない』とよく言われていたのですが、接続詞を意識的に使うようになってから、論理力が大幅に改善しました。
この記事が、自分が論理的じゃないと思い込んでいる方、または上司や先輩に『論理的に話して』と指摘されたものの、どうしたらいいのか分からずに悩んでいる方の助けになれば幸いです。
前置きが長くなりました。では始めましょう。
そもそも論理とは何か?

みなさんの上司や先輩は、そもそも、『論理とは何か?』を説明できるでしょうか?
多くの方が、外資系コンサル出身者が著者の『論理的思考力(ロジカルシンキング)』関連の書籍を思い浮かべていると思いますが、実際には「論理力」と「思考力」は別物です。
日本の哲学者であり、東京大学名誉教授の野矢茂樹 氏は以下のように述べています。
論理の力といっても、しばしばそう誤解されているような、「思考力」のことではない。論理の力とは思考を表現する力、あるいは表現された思考をきちんと読み解く力にほかならない。
それは、言葉を自由に扱う力、われわれにとっては日本語の力のひとつなのである。
引用:論理トレーニング101題 (野矢 茂樹/産業図書)
例えるならば、論理力というのは、パソコンでいう所のOSで、思考力というのはアプリケーションのようなものかもしれません。
つまり、土台となる論理力がないと、そもそも、ロジックツリーやMECEなどは作れないということです。(仮に作ったとしても、作った気になっているだけで、実際は穴だらけのツリーになる)
したがって、論理的に書いたり・話したり、相手の意図を理解することに難しさを感じる方は、まず論理力を鍛えることから始めるのが良いと私は思います。
論理的になりたければ、接続詞を意識すべき理由とは?

では、どうやって論理力を鍛えればいいのか?
というのが、次に気になる点かと思います。
その答えは、冒頭でも述べた通り、「接続詞を意識すればいい」です。
日本語には豊富な接続詞があるのに、、、
日本語には、とても豊富な接続詞があります。これらは、われわれビジネスパーソンの論理力を支えてくれる貴重なツールです。(必要な接続詞はあとで説明します)
よく日本語はあいまいでロジカルじゃないと言う人がいますが、そんなことは全くありません。日本語も英語も等しくロジックを助ける接続詞があります。
例えば、『私はAの案を推薦したい。なぜならBだからだ。例えば、Cという過去事例があり、Dという良い結果を残している。だからAを推したい。』
というような説明は、日本語でも英語でも同じ構造ですし、当然同じ接続詞が両方の言語にあります。
日本語があいまいと言われることが多いのは、言語の問題ではなく、それを使う人に問題があるという単純な話です。
アメリカのエグゼクティブは接続詞を多用している
私が仕事で日々やりとりをするアメリカのエグゼクティブやシニアマネジメントは、接続詞を多用しています。
それは接続詞を使った方が相手に自分の言いたいメッセージを適切に届けることができるからです。
詳細は以下に書いているので、ここでは省きますが、興味があれば一読してみてください。
接続詞は、議論の骨格である
ここで、面白い例題を紹介したいと思います。出典は先ほどと同様、野矢 茂樹 氏の論理トレーニング101題から。
以下は、トイレをする時に座り派が増えている事実に関する内容です。ここに論理がおかしな3つのポイントが含まれています。
ちょっと考えてみてください。
問1 次の文章のおかしな点を指摘せよ
「清潔はビョーキだ」の著者である東京医科歯科大学の藤田紘一郎教授も、座り派の増加について「清潔志向が行きすぎてアンバランスになってしまっている」と指摘する。「出たばかりの小便は雑菌もほとんどいない。その意味では水と同じぐらいきれいだ。なんで小便を毛嫌いするのか。ばい菌やにおいを退けすぎて、逆に生物としての人間本来の力を失いかけている一つの表れでないといいのですが」(朝日新聞、2000年3月26日付朝刊)
引用:論理トレーニング101題 (野矢 茂樹/産業図書)
いかがでしたでしょうか?
さらっと読めてしまうけれど、なにか腑に落ちない気がすると思った方は多いと思います。
まず、最初に藤田氏は「清潔志向の行きすぎ」を問題提起しています。となると、その次に展開されるべき主張は、「多少不潔でも気にすべきじゃない」という話になるはずです。
ところが、実際は、「小便は汚くない」というまったく別の論点が話されています。
他にも、出たばかりの小便は汚くないという話をしていますが、本当に話すべき論点は「だいぶたった後の小便」のはずですし、
そもそも、便器が汚れていやなのは雑菌云々の話だけでなく、見た目の汚れのことも含まれているはずですが、そこへの説明もありません。
さて、新聞記事であるはずなのに、なぜこんな意味不明の論理展開になってしまっているかというと、
それは、「接続詞」が一つも使われていないからです。
だから、文と文の関係がうやむやになって、一応読めるけど、なんだかよくわからない。「どういうことかもう一回説明して?」と言いたくなる内容になっているのです。
そして、これこそが、「うーん、話の筋がよく見えない、論理的に話してくれる?」と言われるパターンなのです。
おそらく、私が思うに、この新聞記事を書いた記者は、教授からのインタビューを箇条書きでメモして、それをペタペタと貼り付けただけなのだと推察しています。
だから、そこにはセンテンスの繋がりが見えず、結果、論理的じゃなくなっているというわけです。
編集者が記事を書く際に接続詞を使おうとしていれば、話の論理展開のおかしさに気づけたはずなのです。
これ、まったく同じことが、入社したての新人に会議の議事録を書かせた時に起こります。
新人は会議参加者の発言内容を一生懸命にメモして、それを後日、議事録にしてくれるのですが、それは議事録ではなく、つながりの見えない発言のコピペ文になっているか、むしろ、「なんでこの文とこの文を繋いでいるの?」と驚くような創作物になっていることが多々あります。
これは、新人は話されている内容の背景知識がないため、文と文をどう繋いでよいかわからず、その結果、適切な接続詞を選択できていないことが原因なのです。
つまり、論理的な説明をするには、接続詞が必要不可欠だということです。
逆を返せば、接続詞にとにかく意識を傾けて、日々の発言、メールのやりとり、ディスカッション、報告、プレゼンをやっていけば、自ずと論理力がついてくるということに他なりません。
押さえておくべき7タイプの接続詞と論理の骨格

では、具体的に、どんな接続詞を意識的に使っていけばいいのでしょうか?
野矢 茂樹 氏の論理トレーニング101題から、基本となる7カテゴリーの接続詞と4つの議論の骨格を紹介します。
言われると当たり前かもしれませんが、基本こそ一番重要です。これを日々の業務で意識するかどうかで、相手の意図を汲み取り、自分の意図を伝える力が飛躍的に高まるはずです。
7つの接続詞
まずは7つの接続詞のカテゴリーです。頻繁に使うであろう接続詞も列挙しています。
- 付加(そして、しかも、加えて、さらに)
- 理由(なぜなら、というのも)
- 例示(例えば、いわば)
- 転換(しかし、だが、ところが)
- 解説(つまり、すなわち、要するに)
- 帰結(だから、したがって、それゆえ)
- 補足(ただし、なお、そもそも)
いずれも、みなさんにとっては当たり前のものだと思うでしょう。ただし、頭で理解するのと、実際に日常で使いこなせるというのは別次元の話だと思います。
私の会社でも、ベテランの社歴にも関わらず、「この人は何を言おうとしているのかわからないなあ」と思うときは、たいていが接続詞が使われていなかったり、使い方が悪いケースです。
接続詞を意識して使うとは、すなわち、「相手が理解しやすいように接続詞を配置する」ということです。
そして、接続詞を効果的に配置するためには、以下の4つの議論の骨格を常に意識すると効果的です。
4つの議論の骨格
上記の7つの接続詞のうち、<例示>を<解説>に含めてしまって、<理由>は<帰結>とまとめて<根拠>として、<補足>は枝葉なので切り捨ててしまうと、議論の骨格はたったの4つに集約されます。
- 解説: A = B
- 根拠: A —> B (A。だから、B)
- 付加: A + B
- 転換: A <—> B (A。しかし、B)
とてもシンプルだと思いませんか? でも、たったこれだけを意識するだけで、自分が何を言いたいのかを明確にできますし、相手が何を言おうとしているのかを理解しやすくなるのです。
この骨格を意識することは、私のアメリカでの日々の仕事でとても役立っています。私がノンネイティブにも関わらず、エグゼクティブたちと日々仕事ができ、また彼らが私を信頼してくれている理由は、この論理構成をしっかりやっていることも理由の一つだと思います。
さもなければ、「こいつ、言っていることがよくわからん」とすぐに切り捨てられていたことでしょう。
まとめ:話の本質(骨格)は、接続詞で考えればすぐ理解できる

接続詞は全体のメッセージの骨組みです。
接続詞に注目すれば、相手の話を理解しやすくなるし、自分のメッセージを届けやすくなります。
例えば、アメリカでよく使われるYes, Butという骨組み。
これは相手の意見に対して、Yes, I know what you meanというような理解を示しつつ、But I think という言い出しで、結局、自分の意見をぶつけていくパターンです。
このYes, Butの形が出た瞬間に、「ああ、もう前半の部分は捨てていいのね」とわかります。
他にも、自分が意見を言っている時に、長く話してしまったなと思えば、適当な所で切り上げて、In summary(要するに)と言えば話をまとめやすいです。
相手のプレゼンを聞くシーンであれば、メインメッセージの後に理由を説明するBecause, since, asという接続詞が出てくるはずです。
もし、何もなければ、こちらから「なんでそう言えるの?」と質問したりできます。
他には、In additionやBesidesなどの「付加」接続詞が出てくれば、これはメインメッセージの補足だから、いいたいメッセージの方向性は変わっていないなと確認ができます。
このように、接続詞を意識するだけで、相手の言いたい論理を把握することができるし、逆に自分が話す時も接続詞を使えば、簡単に話の骨組みを届けることができるのです。
そうすれば、多少センテンスがいまいちでも、しっかり伝えたいメッセージを届けることができます。
つまり、同じ情報量を持っていても、論理的に話せる人と話せない人の差は、適切な接続詞を使って文を繋いでいるかどうか、なのです。
本記事で紹介した接続詞はどれもよく知られているものですし、難しいものではないはずです。
ただ、「意識」して日常で使っている人が意外と少ないというだけなのです。
上司や先輩から『論理的に話して』と言われることが多い方は、ぜひ明日から「接続詞」を意識的に使ってみてはいかがでしょうか?
劇的に、話の展開が明確になることを保証します。
<参考書籍>
野矢氏の書籍は論理力を鍛えたい方には本当にオススメです。他にも論理学の関連書籍が豊富ですので、もっと深堀りしたい方はそちらも当たってみると良いかと思います。