RPGの金字塔である “ドラゴンクエスト” をご存知でしょうか?
ドラクエと称され、子供から大人まで幅広い層で親しまれるこのRPGゲームがヒットしたのには理由があります。
そして、それらの理由は、現実世界の仕事にも適用できる、”王道の仕事術” ではないかと私は思います。
この記事では、その中で特徴的な3つを紹介しながら、われわれの日々の仕事に活かせるポイントを学んでいきたいと思います。
“レベル” という概念による、能力の見える化(定量化)
ドラクエと言えば、まず “レベル” というゲームシステムが特徴的です。
レベルは、初代ドラクエ1から引き継がれているゲームシステムで、主人公や仲間のいまのステータスの段階を示すパラメーターです。
レベル1から99までの99段階になっており、ゲームスタートはレベル1から開始し、ゲームクリアに必要なレベルは大体50くらいです。
例えば、レベル1では、ドラクエの最弱モンスターである “スライム” をやっと倒せる程度ですが、レベル50では、最終ボスの “魔王” を倒せるようになります。
このレベルの数字を使って、今の自分が倒せる敵の強さを確認しながら、少しずつ、魔王討伐ができるレベルに向かって進めていくのです。
さて、われわれの世界に視点を移すと、レベルはその人の “仕事力” のようなものだと言えます。
入社当初は、社会人としてのメールの出し方や名刺の渡し方から学んでいきますが、中堅やベテランになると、会社の重要プロジェクトを任されるようになります。
ただし、現実世界がドラクエと違って難しい点は、自分のいまのレベルが数値として見えないことです。
社会人になったばかりのときは、大体がレベル1からスタートするにしても、その後の成長スピードは各個人によってバラバラです。
そして、仕事力を単純に数値として定量化できないので、自分で自分の仕事力を評価できなかったり、上司も部下にどこまでの仕事を任せたらいいのか判断がつかなかったりします。
そのため、心配症な上司の場合はマイクロマネジメントになったり、楽観的すぎる上司の場合はフォローが遅れて問題が発生したりするわけです。
ドラクエの世界のように、「客観的な指標で、今の仕事力を見える化すること」というのは、とても大事なことで、これはまさに会社の中の人事部が興味・関心を寄せる分野だと言えます。
敵レベルの “段階的引き上げ” による、無理のないタスク設定
次にドラクエで秀逸な点は、敵のレベル設定です。
ストーリーを進めていく中での、普通の敵や中堅ボスのレベル設定が、ちょっとシンドイけど頑張れば倒せる強さになっているのです。
つまり、簡単すぎないし、絶望するほどの強さでもないのです。
仕事でいうと、上司から任された仕事が、「今の自分では背伸びしないと届かないけれど、頑張ればなんとか達成できそうかな」と感じるような、成長するにはもってこいの難しさということです。
ドラクエ以外に目を向けると、敵のレベル設定が鬼畜のようなゲームもあったりして、その場合は、ユーザーがストーリーを前に進めなくなってしまい、そのゲームはお蔵入りまたは中古品として売りに出される、というケースもあります。
現実世界でいうと、上司から、どう考えても無理難題の問題を、あり得ないデッドラインで依頼されるケースでしょうか。
そんな仕事があれば、そもそもの仕事のスコープを変えるように上司からシニアマネジメントに掛け合うなり、デッドラインを変えるなり、適切な部署に仕事を渡すなりして、実現可能なレベルまで、仕事の内容を変える必要があります。
以上のように、ドラクエの世界ではレベルという客観的指標を使うことで、プレイヤーと敵のレベルがバランスよく設定されていて、これが多くのゲームユーザーを魅了させる一つの要素になっています。
現実世界でも、部下の能力と任される仕事のレベルのバランスが噛み合ったときは、組織のパフォーマンスも最高潮になります。ところが、そんな幸運な環境で仕事ができる人は少なく、実際には、
- 部下のレベルと任される仕事のレベルのギャップ
- 上司のそのまた上司が設定している業績目標のハードルの高さ
などでミスマッチを引き起こして、うまく組織やチームのパフォーマンスが発揮されない、という場合が多いように思います。
このあたりは、ミドルマネジメントマネジャー(部長、課長レベル)に依存する部分も多いため、そこに問題があった場合は、その配下の社員はかなりツライ状況に立たされる場合があります。
適切なマイルストン設定による最終目標までの適切なガイド
3つ目は、ドラクエのストーリー構成です。
先ほどのプレイヤーと敵のレベルのバランスもそうですが、ストーリー面の難しさのバランスも考え抜かれています。
ドラクエにおけるストーリーとは、プロジェクトにおけるマイルストーンのようなものです。
スタートからゲームクリアまでに、複数の中間ポイントが設定されており、その中間ポイントの間には、さらに細かいタスク単位のアクションアイテムが配置されています。
そして、ドラクエの上手いところは、一つのタスクを実行すると、必ず次のタスクまでの道のりを丁寧にガイドしてくれるところです。
他のRPGゲームでは、このタスクとタスクの間のガイドが不親切で、途中から何をやったらいいか分からない、という状況に陥ることもあります。
そういう場合は、攻略サイトや攻略本を見ればいいのですが、現実世界では、そんなものはないので、自分で模索しないといけません。
ドラクエのストーリーを、WBS(注)で表示すると、とても綺麗なマイルストーン、タスク、アクティビティリストに分解できます。
(注)WBS: Work Breakdown Structureの略。プロジェクトマネジメントで計画を立てる際に用いられる手法の一つで、プロジェクト全体を細かい作業に分割した構成図。
つまり、ストーリーの最初に、いきなり魔王を倒せ! と言われてもできないのですが、長い時間をかえて、魔王を倒すまでのいろいろなステップ(工程)を経ることで、最後には魔王討伐(最終ゴールの達成)が完了する、というプロセスです。
現実の仕事でも同じで、最終ゴールが途方もないものだとしても、中期的な目標をたてて、短期的な目標にブレイクダウンし、そして、日々のタスクまで落とし込めれば、最終ゴールに到達できる道筋が出来上がるわけです。
また、ドラクエには、魔王討伐に必要な仲間集めも出てきます。
まさに現実の仕事と同じで、大きな目標を達成するには、それに必要なプロジェクトメンバー集めや、ステークホルダーからのサポートをとりつけるという点も、同じだと思います。
まとめ: 難しい仕事の目標達成のためにドラクエから学べること
ドラクエの魅了である3つの特徴を紹介するとともに、現実のビジネスとの共通点を確認してきました。
ドラクエから学べることを以下に簡単にまとめてみます。
1. 自分の仕事力の可視化
2. 任される仕事の難しさの可視化
3. 最終ゴールまでのマイルストーン・タスク管理
いかがでしょうか。
自分の力、相手の力、最終ゴールまでの道筋の3つを見える化することが、目標達成の秘訣なのではないでしょうか。
孫氏の兵法にもある「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ですね。
たとえゲームであっても、作り手の魂が宿っている作品には、必ず他の分野に水平展開できるエッセンスが隠れていると私は思います。
この記事が、明日からのあなたの仕事に役立てば、これ幸いです。