あなたの2番目の専門性または得意分野は何でしょうか?
この2番目の専門性を戦略的に使うことで、我々の市場価値を大幅にアップさせ、人と差別化できるキャリアパスを作れるかもしれません。
例えば、会社で働いていると、『この分野については、あの人にはもう経験値的に追いつけないなあ』とか、『今の自分の専門分野は競合するエキスパートが多すぎる。このままで食べていけるのだろうか?』と不安に思ったりしたことはないでしょうか。
そういう時こそ、2番目の専門性に着目して今後のキャリアパス戦略を考えてみると良いと思います。
1つの専門性だけではキャリアアップに膨大な時間を要する
多くのビジネスパーソンは、一番得意な分野や自分の一番の専門性で戦って行こうとします。(私も漏れなくその一人でした)
例えば、英語が得意な人は外資系企業や商社だったり、会計が得意な人は会計事務所や企業の経理部だったり、というようにです。
しかし、そこで現実を目の当たりにするわけです。
自分よりもっと英語が堪能な帰国子女、自分よりもっと経理の知識も経験も豊富なベテラン、すなわち、「エキスパート」の存在です。
そして、彼らに勝つまで専門性を磨こうと思うと、膨大な時間がかかることを悟り、自分の今後のキャリアアップについて、なかば絶望感を感じてしまうのです。
そこで、以下の記事では、自分の市場価値を高めるためには2つのスキルの掛け算が重要だ、という話をしました。
まだ未読の方のために簡単に3つにまとめると、
- 1つのスキルではその分野のエキスパートに勝てない(勝つレベルに行くまでは相当の時間を要する)
- だから、そこそこ得意な2つのスキルを持って、周りとの差別化をするべき
- 得意なスキルは自分の中に眠っている。好きなものや趣味をビジネスレベルまで伸ばしてみては?
という内容です。
上記の記事ではスキルという狭い範囲で話していましたが、これは専門性や得意分野でも同じことが言えると思います。
セカンド能力(2番目の専門性)の業種で戦ってみるという逆転の発想
たくさんの競合がいる分野では、熾烈な競争が待っています。そして、そこで勝っていくには相応の労力が要るものです。
そんな熾烈な競争で消耗するよりも、もっと別の場所で戦った方が得られるリターンが多いものです。
現代でも読み継がれている『孫氏の兵法』でも、戦わずして勝つ、という戦略が謳われており、そもそも争うのは最後の手段と言われています。
そんな孫氏の兵法に精通している 田口 佳史 氏の著書『超訳孫子の兵法「最後に勝つ人」の絶対ルール』で、キャリアに関する面白い内容がありました。
ずっとビジネスのコンサルティングを仕事としていますが、それは”セカンド能力”。一番得意とする”ファースト能力”は、中国古典思想に通じていることなのです。
つまり、“セカンド能力” が発揮できる業界に入って、”ファースト能力” を駆使したことで、今の私の仕事が成り立っているわけです。
こんなふうに、“ファースト能力” と”セカンド能力” を逆転させることは、成功の一つ。
ほとんどの人は”ファースト能力”で仕事をすることばかり考えているから、せっかくの能力が大勢の達人たちのなかに埋もれて、うまくいかないのです。
この内容を読んだ時、まさに目から鱗のような気持ちになりました。
敢えて、一番得意ではない分野に飛び込んでいくキャリアパス戦略もあるのか、と。
そんな風に感嘆していたところ、あることに気づきました。
実は、最近の私自身もまさにこの状況だったのです。
つまり、セカンド能力の職種でファースト能力を駆使するという、まさにこれです。
とは言っても、私の場合は、意識的にやったのではなく、セカンド能力の職種に異動になってしまったので、そこで生き抜こうと必死になる中で行き着いた形なだけだったのですが。(後ほど紹介します)
昔の私もそうでしたが、多くの人は、自分が一番得意なことや経験豊富な専門職を仕事にしようと考えます。
なぜなら、その方が稼げると思うからです。そして、2番目の専門性は、あくまでサブ的な位置付けで使おうとします。
そういう人からすると、一番得意ではないフィールドを選ぶというのは、どうしてもリスクがありそうに見えます。それよりも、安全な一番の専門性が高いところに行きがちです。
ところが、それをやらずに、敢えて2番目の分野に行くというのが、実はとてもチャンスがあるという、とても興味深い考え方です。
私の事例:ファイナンス x プロダクトマネジメント
この記事の執筆現在(2018年2月)、私はFinancial Planning & Analysis(ファイナンシャルプランニング&アナリシス)という仕事をしています。
主な業務内容は、業務管理および財務計画の立案、財務データの分析を行う業務です。 特に、企業戦略に必要な財務データを出したり、予算や予測と照らし合わせて実績のモニタリングを行ったりと、企業のビジネスをサポートする仕事で、シニアマネジメントとも密接なつながりがあります。
日系企業では経理・財務と言われる部署を指すことが多いです。 それもあり、私の部署には経理一筋20年という方や公認会計士の資格を持っている方もいます。
そんな中、私の経歴は全く異質なものです。
開発現場を3年半やり、プロジェクトマネジメントオフィスとプロダクトマネジャーを合わせて4年半、そして、今のファイナンシャルプランニング&アナリシスという職種で数年というものです。
正直、財務や経理という経験値だけでいうと、他の方には全く歯が立ちません。もちろん、一通りの範囲では把握しており業務も回せますが、その道のエキスパートと比較するとやはり勝てません。
しかし、これは戦うフィールドを「財務・経理」という場所に設定した場合の話です。
一方で、私はプロダクトの開発に専門性をもち、プロダクトマネジャーとして、研究、開発、製造、販売までのプロセスを経験しています。また、プロジェクトマネジメントオフィスの時にポートフォリオの観点と、組織全体のプロセスマネジメントの業務を経験しています。
これもあり、会社のプロダクトやビジネスという観点でみれば、それなりのエキスパートの領域に達しています。
そして、今のファイナンシャルプランニング&アナリシスという職種では、経理・財務の観点に加えて、上記のプロダクトやビジネスのことをどれだけ理解しているか? がとても重要です。
そして、そのプロダクトやビジネスの話であれば、私のファースト能力のフィールドですから、全く負けないのです。
そして、それに加えて、他のメンバーができない「ビジネス英語」に磨きをかけているのと、「事業評価」という新しいスキルを習得して、今の部署の中では、圧倒的な差別化を図っています。
これも、アカウンティング・ファイナンスという私にとってはセカンド能力になる場所で、プロダクトマネジメント経験というファースト能力を使っている事例だと思います。
私の同僚の事例:アカウンティング x IT
私の同僚も同じようなケースでした。彼はもともとIT出身の人間で、サブ的な能力でアカウンティング(会計)を経験している、という背景を持っていました。
そんな彼は、自分の戦うフィールドをファイナンシャルプランニング&アナリシスに移して、そこでファースト能力のITスキルを駆使して、一気に階段を駆け上って行きました。
ファイナンスの業務は様々な会計システムやプラットフォームを扱い、そこから抽出したデータを分析し、経営層の意思決定に役立つレポートを作成するのが主な業務です。したがって、そこにはITの専門家であることは大きなアドバンテージになります。
だからこそ彼は、自分のファースト能力のITを活かせるフィールドとしてファイナンスを選び、そこに活躍の場を見出したわけです。
その結果、彼はファイナンスの中の ITという分野で、ナンバーワン・オンリーワンになり、その実績のまま海外に行きました。
自分で考えて、敢えて2番目の分野に飛び込んで行ったのだから、すごいものだなと思います。
まとめ:あなたのセカンド能力を活かせる職種は何?
このように、他の人と圧倒的な差別化を図ろうと考えると、そこそこできるセカンド能力を軸に自分の職種を選び、そこでファースト能力を最大限に活用する、というのは、実はとても理にかなっているキャリアパス戦略であると思うのです。
特に、その道十数年のエキスパートと真っ向から戦おうとして苦戦している若手の方には、このように敢えて戦うフィールドをずらしてみる、という戦略を考えて見ると良いのではないでしょうか。
あなたのセカンド能力を活かせる職種は何でしょうか?
そこで、ファースト能力をフル活用できそうでしょうか?
この質問の答えが見つかったのならば、飛び込むチャンスかもしれません。
(ご参考)キャリア関連は以下でも考察しているので、併せてご覧ください。