今、アメリカ人の若手社員を育成しているのですが、日々の仕事で小さな違和感を持ったときに、それをしっかりと調べきる探求心を持って欲しいなと思うことがあります。
もちろん、若手社員だけに限らず、中堅社員においても、仕事で何かちょっとした違和感を感じた時に、それを放置せずに、そこに時間を投入していくマインドセットは非常に重要だと思うのです。
日々の仕事で感じる小さな違和感の正体とは?

仕事での「違和感」を言語化するのはなかなか難しいですが、言うなれば、自分の知識や想定から外れた動きをした「事実・データ」のようなものです。
我々が「あれ?」と疑問に思うのは、自分の想定と違うことが起きているからです。
したがって、「小さな違和感」とは、いま進めている業務には支障がなさそうで、ほうっておいても、誰からも何も言われないような違和感、ということになります。
そして、その違和感に時間を割いて調べるのはそれなりの時間がかかるので、大体の人は業務が忙しくなると、放置することがほとんどだと思います。
例えばですが、身近な例でいくと、トマトスパゲティを作ろうと思い、トマト缶を開けた時に、「そういえば、缶詰の中身ってずっと腐らないよなあ」という違和感を持ったとします。
でも今は、トマトスパゲティを早く作ってお腹を満たすことが最優先ですので(笑)、正直、こんな疑問は放っておいてもなんの支障もないわけでして、小さな違和感にすぎないのです。
ただ、こういう小さな違和感を放置しない人は、腐らない理由は、そのトマト缶の製造工程にあり、その背景には、細菌・微生物による腐敗(発酵)という大原則に辿りつくことができます。
そして、こういった細菌・微生物の知識は、缶詰製品以外にも、他の乳製品や加工食品、医薬品の製造工程、病院の無菌室などの話にも繋がっていると理解でき、学びをより一層深めることができます。
この小さな違和感を放置しないというのは、ビジネスシーンでも、とても大事なことだと思いませんか?
小さな違和感は、自分が成長するための貴重な機会である

私のファイナンスという職種では、各部門と協働して、年間予算計画・中期計画を策定し、それが計画通りに遂行されているのかを、実際の業務の進捗報告と、会計システムから上がってくる費用データでトラックしています。
その時に、「あれ、費用は小さいけれど、この部門で費用が出ているのはおかしいな。特に、業務計画はなかったはずなのに」
というような “小さな違和感” を見つけることが頻繁にあります。
この時、どんなことを考えるかで、大きく2つのタイプに分かれます。
- 金額は小さいし、誰にも言われないから、今は放置しておこう。忙しいし。
- 業務上は報告を求められないが、個人的に気になるから調べてみたい。
さて、あなたはどちらのタイプでしょうか?
この問いに正解があるわけではありません。前者の判断が必要な時も多いですし、効率的な場面も多いです。ただもし、あなたが若手社員なのであったなら、後者の意識をぜひ持って欲しいというのが私の考えです。
それは、もっともっとビジネスについて深く理解していって欲しいからです。
仕事を通じて成長していく人は、目の前にあるデータ・事実だけではなく、その裏に「一体なにが起きているのだろう?」ということを知ろうとします。
この「何が起きているのだろう?」という疑問は、ビジネスを進めていく上で、とても大事なのです。
今のファイナンスの職種にいて感じるのは、数字しかみていない人が多いということです。
- その数字が指し示している意味は何なのか?
- 数字から現場で何が起きているかを想像できるか?
- 想像できなければ、現場の担当者と話して、調査できるのかどうか?
これがファイナンスの職種に真に求められる役割です。
もちろん、これはファイナンスに限った話ではありません。
私はビジネスの現場を経験して、数十人規模のプロダクトマネジャーを経験してきましたが、その時でも同じです。
現場の担当者であれば、業務の委託先から上がってくるレポートをみて、小さな違和感に気づいたら、それを突き詰めていけるのかどうか?
プロダクトマネジャーであれば、プロジェクトメンバーから上がってくる報告を鵜呑みにせずに、プロダクトを潰してしまう重大なリスクを先んじて特定できるか?
つまるところ、自分で、自発的に、物事を深めていけるのどうか?
という仕事の取り組み方に繋がっていくのです。
若手社員の方に限らず、ビジネスパーソンたるもの、小さな違和感をきっかけに、物事を追求して深めていける「探究心」を持ち続けていきたいものです。
まとめ: 育つ人材は、ちょっとした違和感を知識・経験に変えて行く

いかがでしたでしょうか。以下に、簡単にまとめます。
- 違和感とは、自分の知識や想定から外れた動きをした「事実・データ」のようなもの
- 小さな違和感とは、いま進めている業務には支障がなさそうで、ほうっておいても、誰からかも何も言われないような違和感のこと
- 仕事を通じて成長する人は、目の前にあるデータ・事実だけではなく、その裏に「一体なにが起きているのだろう?」ということを知ろうとする
- ビジネスパーソンには、小さな違和感をきっかけに、自分で、自発的に、物事を深めていくことが求められる
もし、明日の仕事で、小さな違和感を感じたら、ぜひそれを探求してみてください。時に、無駄骨になることもありますが、そうやって日々汗をかいたことは必ずあとで生きてきます。