みなさんの仕事のモチベーションはどこから来ていますか?
仕事のモチベーションは「やりがいだ」とか、いや「お給料だ」とか、または、「いい役職について周りから認められたいからだ」とか、色々な方がいると思います。
実際に、仕事のモチベーションに関するアンケート結果では、どの年代も、一番の理由は「給料」という報告もあります。(まあ、リアルな意見ということかもしれません)
でも、仕事のモチベーションを、そういった、給料や役職、周りからの評価など、目に見えるモノや即物的なモノに求めていくのは、かなり危うく、そして、我々の人生にとって非常にもったいないことだと私は思います。
そこでこの記事では、どういったものを仕事のモチベーションにしていくと人生にとってプラスなのか、という点を考察していきたいと思います。
仕事のモチベーションをお金に求めたり、周りからの評価に求めたりするのはとても危うい

仕事のモチベーションを何に求めるか?というのは、各所で議論されています。そして、よくあるのが、以下の3つです。
- 給料を上げたいから
- 上司に褒められたいから
- 周りに認められたいから
もちろん、誰しもこういった気持ちは少なからず持っているとは思いますし、これも一つの側面だと思います。ですので、これ自体を否定するつもりはありません。
ただ、給料や評価に対する思いが強すぎるあまり、それが裏目に出てしまっていた先輩や同僚をたくさん見てきたので、「仕事のモチベーションをこういった報酬系に求めるのは、危ういなあ」と感じてしまうわけです。
実際に身近であった例として、入社5年目の時の先輩Kさん。
Kさんは、特に報酬や他人からの評価に対して敏感な方で、上司を飛び越して、さらに上の上司に、「自分の年度末評価はもっと高いはずだ! 昇給してくれないとおかしい!」と直談判したことがあり、逆に悪い噂になっていました。
また、その先輩の言葉でよく覚えているのが、ほとんど部下の私がやった仕事だったにも関わらず、「俺の名前も入れておけよ」というありがたいアドバイス(苦笑)。
また、その先輩の指示で動いたにも関わらず、それで失敗して叱責を受けているときは、全部私の責任になっていたことなどです。
結局、その先輩Kさんは、会社や上司からの評価に納得できず、モチベーションが下がり、会社をやめていきました。(転職先の会社で、うまくいっているといいのですが)
また昔はモチベーションが高かった同期や、ギラギラしていた先輩方が年齢とともに落ち着いていってしまうのを見て、なんだか寂しい思いになることがあります。
その理由の多くは、ある一定以上まで昇給し、それなりの年収ももらえるようになり、家庭もできたので、仕事は現状維持でいいかなと感じているとのことでした。こちらは、報酬に満足しているパターンです。
つまり、仕事へのモチベーションを、報酬系に求めてしまうと、
- 報酬が低いと、そこへの不満からモチベーションが下がってしまうし、
- 報酬が高くても、それに満足して結局モチベーションが下がってしまう、
という同じ結果に行き着いてしまうことが難点なのです。
だから、そういう人を見ると、危ういなと感じてしまいます。
ちなみに、私の事例は残念ながら、これに当てはまりません。というのも、入社6年目ぐらいまでは使い物にならないダメ社員だったので、自分の人生に絶望するあまり、モチベーションがマイナスになっていたのでした(苦笑)。
もうテンプレは通用しない。右脳的な問題解決が求められる現代で必要なものとは?
かつて、アル・ゴア副大統領のスピーチライターを務めたダニエル・ピンクの名著『モチベーション3.0』をご存知でしょうか?
ダニエル氏の主張はこうです。
- 現代社会ではルーチン的な仕事やマニュアル適用型の仕事はIT・ソフトに代行されるか、より低価格の業者・地域に外注されるようになった
- そして、残った仕事はよりクリエイティブ、コンセプチュアルなもの。
- その中で求められる能力は、前例のないところから、新しいものを作り出す創造的かつ柔軟な問題解決力だ。
では、その右脳的な問題解決力は、どうやったら磨けるのか?という話なのですが、
ダニエル氏は、それは『報酬などによる外部からのモチベーションではなく、もっと自分の内面から湧き出てくる気持ちによって、成長していくものだ』と言っています。
要するに、今現在はもちろん、これから先の何十年間も、仕事で成果を出していくためには、報酬に目を向けていてはダメだということです。
上記にリンクを貼っておいたダニエル・ピンクさんのTEDトークも非常に面白いので興味がある方はぜひ観てみてください。
高い報酬を提示されると、パフォーマンスが下がるという研究報告

ダニエル氏のTEDトークに、面白い研究報告がありました。
ダン・アリエリーという経済学者が、3人の仲間と共に、アメリカのMIT学生を対象にした実験です。
クリエイティビティ、集中力、運動能力が求められるたくさんのゲームと、3段階の報酬(高い報酬、中くらいの報酬、低い報酬)を用意し、報酬とパフォーマンスの相関関係を調べたのでした。
その結果、面白いことがわかりました。
- タスクが作業的にできるものである限りは、報酬が大きいほど、成績が良くなりました。
- しかし、少しでも認知スキルが要求されるタスクになると、より大きな報酬は、より低い成績をもたらしたのです。
この実験はアメリカのMIT学生を対象にしていたことから、文化的なバイアスが結果に紛れ込んだのかもしれないと考えたダンたちは、インドの低所得帯の地域で同じ実験を行いました。ところが、結果は同じで、高い報酬を提示したグループの成績がもっとも低かったのです。
この研究結果の面白いところは、作業的な、つまり、頭を使わないような仕事においては、高いインセンティブは有効であるという点です。
例えば、体力系の仕事や単純作業など、重労働をリピートするような仕事には、報酬によるモチベーションアップは効果的なのです。
しかし、現代の仕事はますます複雑性を増してきていて、ただ作業していればOKというものは、ほとんどありません。
つまり、今求められている、より右脳的な問題解決が求められる仕事では、高いインセンティブは逆効果になりうるということです。
あなたの仕事のモチベーションは? 自分の中から湧き出る気持ちを見つめ直してみる。

では、仕事のモチベーションはどこに求めるのがいいのか?
ダニエル氏は、我々の心の中から自然に湧き出る気持ちが大事なのだ、と問います。
例えば、
- 好きだからやる
- 面白いからやる
- 重要だからやる
Googleの新製品・サービスの多くは、20%ルール(担当業務以外の好きなことに20%の業務時間を使って良い)から生まれていますし、マイクロソフトが多額の投資をして作った電子百科事典は、Wikipediaに大敗を喫しています。
より創造性の高いものや価値のあるものは、高いインセンティブではなく、我々の心の中から溢れ出る気持ちから生み出されてきたのです。
上記に加えて、以下のような人のためにという気落ちも、よい成果を出す秘訣になると私は考えています。
- ○○さんが喜んだ顔を見たいからやる
- ○○さんが驚いた顔が見たいからやる
新しいサービスや商品は、上記のような『誰かのために!』という強い思いから生まれることも多いことはもはや説明の必要がないでしょう。
不思議なことですが、そうやって自分の中から湧き上がってくる気持ちを見つめ直して、それをまっすぐに(周りの目を気にせず、圧力に屈しずに)打ち出して行けば、自ずと結果はついてきて、後から報酬も追いかけるように上がっていくものだったりするな、というのが私の実感です。
万年ダメ社員だった私が、なぜ今、アメリカ駐在をしているのかというと、自分の心の中の湧き水を見つめ直して、それを汲み出して、周りに配るようになったのがきっかけでした。
さて、あなたの今の仕事に対して、あなたの心の底にある気持ちはどんなものでしょうか?
心の中からふつふつと湧き上がってくる気持ちこそ、あなたの強力な推進力になり、人生を彩り豊かにしてくれる源だと私は思います。