この記事は、仕事で突き抜けた成果を出せずに悩んでいる方や、仕事でなんとなくモヤモヤしているけれどそれが何かわからず悩んでいる方に向けて書いています。
筆者は現在(執筆時2021年9月)、グローバル企業の駐在員として、アメリカの会社に赴任しており、約400億円の研究開発予算を管理するファイナンス・ポートフォリオ・リードとして、日々、シニアマネジメントやプロダクトリーダーと働いています。
2年ほど前からアメリカ人の部下を育成しているのですが、「あれ、またその質問? この前教えたじゃない、、」ということを何度も経験しています。一方で、一度教えたら一回で理解して、自分なりに改良を加えてくる若手アメリカ人もいます。
何回も同じことを聞いてしまう人と、一度聞いたことを理解してさらにもう一歩進める人、彼らの何が違うのでしょうか?
私はその理由は、1つのことを “妥協せずに” 突き詰めるコミット(覚悟)を持っているか、だと思います。
この記事では、仕事で突き抜けた結果を出すために非常に重要な「突き詰めるマインド」についてお話していきます。
仕事で突き抜けた結果を出す人は、どんなマインドセットを持っている?
みなさんはクリント・イーストウッドをご存知ですか?
ハリウッド俳優に留まらず、映画監督としても素晴らしい結果を残している彼の言葉にこんなものがあります。
腕のいいバーテンダーの仕事はアートだけど、下手なヤツのはそうじゃない。
クリント・イーストウッド
つまり、腕のいいバーテンダーの仕事は、カクテルの作り方はもちろん、そのプロセスまでも突き詰めた結果、一連の所作も全部ひっくるめて芸術のように美しく昇華されている、ということです。
我々はつい「まあ、このぐらいで十分だろう」と思って、そこで手を止めてしまいがちですが、大事なのはそこからどこまで突き詰めていけるか、ということを気づかせてくれる言葉です。
さて、冒頭の私の部下の話に戻るのですが、彼女がなぜ何回も同じことを聞いてしまうのかを分析して見ると、一つの行動に帰着します。
それは、一定の結果が出たらそこで行動を止め、自分で理解するまで突き詰めない、ということです。
我々の職種はFinance Planning & Analysis といって、将来の予算を計画することが仕事の大きな部分を占めるのですが、その時にシステムを使って、将来予測を行います。
その将来予測のロジックがかなり複雑で、理解できるようになるまで時間がかかるものなのですが、その理解速度がいつまでたっても上がってこないのです。
毎月、月次実績に応じて、その将来予測をアップデートしていく仕事を任せているのですが、その分析結果のところで、毎回同じミスをして、毎回同じ指摘をしているのです。
その指摘をした際に、答えをすぐには言わずに、彼女が自分で答えを出せるようにコーチングはするものの、その場で解決してしまったら忘れてしまうようで、また翌月に同じミスが起きてしまうのです。
これは上司としての私自身の育成力不足の点もあるのですが、一方で、一回教えたら自分で理解を突き詰めていく若手もいるので、仕事における成長速度は、仕事に対するマインドの持ち方の方に大きな理由があるというのが私の考察です。
ちなみに、この将来予測のロジックに関して、私自身がどのようにアプローチしたかというと、ファイナンスという職種に異動になった時、ロジックの計算式だけが書いてある資料(英語)を元に、自分でExcelを使って、システムのロジックを再現しました。
日本でもアメリカでも、Excelでロジックを再現できた人はいませんでしたが、ひたすら没頭して何度も試行錯誤を繰り返した結果、1週間でロジックを再現し、さらにそれを外部監査法人に提出できるレベルまでブラッシュアップしました。
では、私がExcelの天才かというと、真逆でして、ファイナンスに来た時はVlookUPすら知らないど素人の状態でした。わからないことはすべてGoogle検索です。
たとえ誰もが諦めていたことでも、覚悟を持って突き詰めていけば結果は出せるものです。
もちろん、そこには度重なる失敗と試行錯誤、そして、時間がかかります。
でも、そこを乗り越えた時にこそ、突き抜けた結果を得られるのではないでしょうか。
事例:成果物のクオリティに一切の妥協を許さなかった同僚
私の仕事の事例だと逆に分かりにくいかもしれないので、一般的な事例を紹介したいと思います。
私が若手社員だった頃、とんでもないなと思った同僚(日本人)がいます。
彼の何が凄かったのかというと、友人の結婚式の時のサプライズビデオのクオリティーです。
私も友人からサプライズビデオの依頼を受けることがあり、Macのソフトを使ってそれなりの高品質の動画を作ったことがありますし、私が作成したビデオを見た結婚式場の担当者から、彼女が結婚する際に、同じような構成でプロフィールビデオを作って欲しいと、逆オファーを頼まれたこともあります。
私もクオリティにはそれなりのこだわりを持っていたつもりでしたが、上には上がいるのだなと痛感させられたのが私の同僚です。
彼は、尋常ではないほど結婚式のプロフィールビデオにコミットしていたのです。
具体的に言うと、
- 動画となる素材について突き詰めるあまり、撮りたい映像から逆算して、事前にロケハンしてどこでどんな映像をとるのか下調べをする。
- 入社同期を数十人集め、撮影当日のスケジュール表を作って、分刻みで、何十人もの人を動かして撮影する。
- 撮影中も、監督として、カメラマンとして、立ち位置や動き方について細かく指示を出し、何回もテイクを重ねます。
- 撮影した後は、本業が終わった後の深夜11時から朝5時まで、毎日、編集作業をするのです。
そんな彼の家に行き、一緒に編集作業に付き合った時のことです。
『嘘だろ?』と思いました。彼はテレビ局の編集マンでもなく、単なる会社勤めのビジネスマンです。そして、編集技術をどこかで習ったこともない素人だった人間です。
ところが彼は、いつの間にかテレビ番組を作るプロが使うような動画編集ソフトを購入しており、動画の中にテロップを入れ、ワイプを入れ、2つの動画を左右両方に出したり、などプロ顔負けの編集作業をしていたのです。
私から見たら、満足いくクオリティーじゃないか、、と思ったところも、彼はコマ送りでチェックし、動画と動画のトランジションの修正を続けるのでした。
残念ながら、彼の本業の仕事ぶりを見ることはできませんでしたが、彼の動画作成・編集への徹底的なコミットメントに関しては、とても感銘を受けたことを今でも覚えています。
一心不乱に、ひたすら画面に向かう彼を見て、とことん極めようとする人間とは、こういう人のことなのだと思い知りました。
そんな彼の物事を極めようとする姿勢は、仕事で突き抜けた成果をあげるために非常に重要なものだと今でも思うのです。
仕事効率化を、物事を突き詰めることの言い訳にしない
ここまで、物事に覚悟を持って突き詰めていくことを述べてきましたが、おそらく、読者の皆さんは、以下の懸念点が浮かんでいると思います。
- 細部まで突き詰めようとすると、時間がかかってしょうがなくないか?
- もっと、効率よく、仕事をこなすことを上司から言われているんだけど?
- それは最近の働き方改革に逆行しているのではないか?
などなど。
確かに、細部まで突き詰めて理解しようとすると、時間はかかります。
そこだけ切り取ると、他の人よりも時間はかかっているでしょう。私自身もモデル再現に1週間かかっていて、その1週間は通常業務に加えて、モデル再現作業をしていたので、毎日、終電近くまで残業していました。
ただし、その1週間のおかげで、その後の3年間での日本での予算・実績分析、そして、その後のアメリカでの予算・実績分析が、驚くほど効率化できていたことにも目を向けるべきです。
周りの同僚から、「数字がおかしいんだけど見てくれない?」という質問に対しても、今でもすぐに解決策を提示できるのです。
そして、アメリカでの外部監査対応でも、アメリカのビジネスのデータに合わせて、2時間でロジック再現モデルを作り、それを部下に継承できたので、そういった長期的観点で見ると、驚くほど、業務時間を効率化できています。
昨今の日本の状況では、つい短期的な業務効率に目がとらわれがちですが、もう少し長期的視点で業務効率を考えてもいいように思います。
そして、何よりも、物事を突き詰めて理解していくことは、あなたの成長にとっても最も大事なことだと思います。
上司からの「仕事の効率化」というキラーワードをそのまま鵜呑みにせず、「長期的視点での業務効率化」と「自身の成長」という2つの観点から、仕事のやり方を考えてみることも大事なのではないでしょうか。
いきなり全部ではなく、まずは1つの事柄について突き詰めて理解する時間をとってみると、今までのモヤモヤをスカッと解決できて、突き抜けた感覚を持てるようになると思います。
私は物事をとことん突き詰めるのが好きなんだ。そうすれば、たいてい良い結果が出るから。
ビル・ゲイツ