上司に、『指示を待たずに自分で動け』と言われたと思ったら、『勝手に自分の判断で仕事を進めるな』と叱られたことはありませんか?
言っていることが矛盾しているじゃないか、とぼやきつつ、どうしたらいいのか自分でわからなくなったりしませんでしたか?
私がどうしようもなくダメ社員だった頃、上司にこの両方の叱責を毎日受けていました。
もし、あなたが今、私と同じような経験をしているのであれば、きっとこの記事が役立つはずです。
この記事では、「なぜなのか?」という理由と、「どうしたらいいのか?」という解決方法をお伝えしていきます。
では、早速始めましょう。
【共通点】指示待ち人間と自己判断で勝手に仕事を進めてしまう人

意外に思うかもしれませんが、真逆のように思える以下の2つのタイプの社員には共通点があります。
- 指示を仰がないと動けない社員
- 自分の勝手な判断で仕事を進めてしまう社員
その共通点とは、自分に割り当てられた仕事の責任範囲が理解できていない、ということです。
では、より具体的に特徴をあげながら比較していきましょう。
<指示待ち人間の特徴>
- マニュアルに沿った作業や仕事はできるが、前例がない仕事ではどうしたらいいかわからなくなってしまう
- 自分の意見や判断に自信が持てないので、上司や先輩の意見や判断をまず聞こうとする
- 自分の行動で何か失敗やトラブルが起きたことを恐れて、一歩を踏み出せない
- そもそも、何から手をつけていいのかわからない
<勝手に自分の判断で仕事を進めてしまう人>
- マニュアルや前例がない仕事に遭遇したとき、大丈夫だろうと思って、自分で考えたやり方で仕事を進めてしまう
- 自分の意見や判断に確証は持てなかったとしても、楽観的に大丈夫だろうと考えて、そのまま自分で進めてしまう
- 自分の行動で失敗やトラブルが起きることを想定していないので、とりあえず一歩を踏み出してしまう
- 仕事の全体像は見えないが、とりあえず、自分なりのやり方で前に進めてみる
簡単に図で表すと、こんな感じになります。

いかがでしょうか。わかりましたか?
指示待ちタイプも、勝手に仕事を進めてしまうタイプも、「自分の意見や判断」に根拠や確証がないというところまでは同じなのです。
そこから先の行動として、指示待ちタイプは怖くなってストップしてしまうのに対し、勝手に仕事を進めてしまうタイプは、楽観的に前に行ってしまうというだけなのです。
つまり、両者とも、問題点は同じで、自分の仕事の責任範囲を理解してないということです。
なので、指示待ち人間に、『もっと自分で考えて動け!』なんて怒ってしまうと、その人は「自分の判断で勝手に進めてしまう人」になって、結局、なんの改善にもならないという事態になります。(これ、私がそうでしたので、笑)
もちろん、逆もしかりです。『お前は自分の判断で勝手に動くな!』という指示を出そうものなら、すぐに「指示待ち社員」に変貌してしまうので、上司やマネジャーのみなさんはご留意された方がよいです。
では、解決策は何か?と言われば、それは、仕事の責任範囲を理解すること。これに尽きると私は思います。
仕事の責任範囲って一体なにを意味するの?

それでは、仕事の責任範囲って一体なにを意味しているのでしょうか?
仕事には、そもそも依頼する人がいます。社内であれば、上司かもしれないし、社外であれば、取引先かもしれません。
その依頼主から、何を、いつまでに、どんな基準で、どれぐらいのリソースを使って完了させて欲しいというリクエストがあるはずです。
つまり、こういうことです。
- 誰からの仕事の依頼か?(仕事の発注者・スポンサー)
- 仕事の最終成果物は?(アウトプット)
- その成果物の達成基準は何か?(クオリティ)
- 成果物を作るための社内工数は?(リソース)
- 成果物を作るための予算は?(リソース)
- 成果物の納期は?(タイムライン)
プロジェクトにアサインされた経験がある方はすぐにイメージがつくと思います。
もちろん、日常の上司・先輩から依頼されたタスクでも全く同じです。例えば、こんな感じです。
上司から(発注者)、○○までを納期として(タイムライン)、部長会で説明するためのプレゼン資料を作成して(成果物)、部長の合意を得て欲しい(クオリティ)とお願いされたケースです。
上司から、□□さんに手伝ってもらってくれと指示されれば、それは自分以外の社内リソースも使ってよいということです。
自分の責任範囲が理解できると、劇的に仕事が視えるようになる

自分の責任範囲が分かるようになると、何かトラブルや不明点が発生した時に、自分が取るべき判断に迷いが無くなります。
例えば、
- 自分の責任範囲内のトラブルであれば、自信を持って自分でトラブルを処理できます。
- 自分以外の誰かの責任範囲にも影響がある場合は、自信を持ってその人に話を持っていくことができます。
- 自分の責任範囲を超えている場合は、迷わずに、上司にトラブルをエスカレートして、上司に処理してもらうよう要請できます。

上記は、自分の責任範囲が明確にわかっているからできたことでした。
では、自分の責任範囲がわからない人はどうなるのでしょうか?
そもそも、トラブルが自分の仕事のどこに影響するのか想像できなくなりますよね?

もうわかっていただけたと思います。
その次の行動は、すでに述べた通りです。
- 怖くなって思考停止して、上司の指示待ちになるか、
- 後先考えずに、闇雲に前に進んで、あとで問題になるか、です。
だからこそ、自分に任されている仕事の責任範囲を明確に理解しておけるかどうかが非常に重要なのです。
最終的に、社内の意思決定プロセス・ガバナンスに行き着く

ここまで、自分に割り当てられた仕事の責任範囲という表現をしてきましたが、
これを広げていくと、上司の責任範囲、課長の責任範囲、部長の責任範囲、事業部長の責任範囲、社長の責任範囲、というように視野が拡張されていきます。

つまるところ、これは会社の意思決定プロセスに他ならないのです。ガバナンス(governance)とも言ったりします。
上場企業であれば、必ず、なんらかの意思決定プロセス・ガバナンスが取り決められているはずです。つまり、どの案件には、誰が、どこまでの意思決定ができるか?ということです。
わかりやすい例で言えば、お金です。
私の会社では、社長は○○億円までなら独自決済できる、取締役なら、事業部長なら、部長なら、、、という形で、役職にしたがって自分の判断で意思決定できる内容が決まっています。
そして、プロダクトマネジャーやファイナンスの職種は、このガバナンスプロセスについて熟知していなければ、話になりません。
両者とも、シニアマネジメントに意思決定を仰ぎにいく仕事が多いため、自分がどこまで意思決定できて、自分ができない場合は、誰にどんな承認をもらいに行くのかということに敏感にならないといけないためです。
もちろん、これは部員一人一人における、仕事の責任範囲にも当てはまります。
たとえば、上司から、『キミに、○○の仕事を任せたい。100万円までなら外注コストをかけてもOKだ』という指示を受けたとしたら、これは紛れもなく、あなたに100万円までの権限が移譲されたということです。
もし、100万円を超過する契約なのであれば、自分の権限で判断できませんから、必ず上司に指示を仰ぐ必要があります。
これをちゃんと理解できずに、”勝手に” 外注コストをオーバーしてしまったりすると、「勝手に仕事を進めてしまう社員」になってしまいます。
一方で、100万円まで使ってよいにも関わらず、その理解が足りていなく、外注できずに仕事が進まずに上司に『どうしたらいいでしょうか?』と聞いてしまうと、「指示待ち社員」になってしまいます。
もう言わずもがなですが、正しく、自分の仕事の責任範囲を理解することがもっとも基本かつ重要なのです。
まとめ:自分の仕事の責任範囲を明確に理解しよう!
ちょっと長くなったので、簡単にまとめます。
- 指示待ち社員も、勝手な判断で仕事を進めてしまう社員も、根本的には一緒。
- 根本的な原因は、自分の仕事の責任範囲を明確に理解できていないから。
- 自分の仕事の責任範囲を理解できていれば、どんなトラブルに対しても、誰に何をどうするかが見える。
- 責任範囲の考え方は、会社の意思決定プロセスやガバナンスと同じ。
以上です。
言われてみれば当たり前のように感じるかもしれませんが、頭と体の両方で理解できるようになると、驚くほど仕事が視えるようになります。
そして何か問題が起きたとしても、瞬時に、自分で解決してよいものか、もっと上にエスカレーションすべき内容かを判断できるようになります。
この記事があなたの明日からの仕事の役に立てば幸いです。