みなさんは、スプツニ子! (尾崎マリサ優美)さんをご存知ですか?
私がスプツニ子!さんを知ったきっかけは、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボのことを調べている時に、助教として日本人がいることを知った時でした。
スプツニ子!さんは、数学とコンピューター・サイエンスをバックグランドにし、現在はアート、デザイン、映像、音楽と幅広い芸術分野で活躍されている方です。
それらの活躍が認められ、2017年には、世界経済フォーラム(ダボス会議)の若手リーダー代表「ヤング・グローバル・リーダー(Young Global Leaders)」に選出されるなど、輝かしい受賞歴の持ち主です。
しかし、色々と調べて見ると、そこに至るまでには、大変な思いや挫折をされてきた方だとわかり、とても共感しました。
この記事では、スプツニ子!さんの高校時代や大学時代によりフォーカスして、我々ビジネスパーソンが学ぶべきところを考察したいと思います。
スプツニ子! さんの作品、受賞歴

主な受賞歴
- 2009年:アルス・エレクトロニカ[the next idea] 受賞 《Open_sailing》
- 2010年:第14回文化庁メディア芸術祭[審査委員会推薦作品]受賞 《カラスボット☆ジェニー》
- 2011年:米Advertising Age誌「2011年の最もクリエイティブな50人」
- 2012年:アルス・エレクトロニカ Interactive Art [Honorary Mention] 受賞 《生理マシーン、タカシの場合。》
- 2013年:VOGUE JAPAN ウーマン・オブ・ザ・イヤー 2013 受賞
- 2014年:FORBES JAPAN 「未来を創る日本の女性10人」
- 2015年:仏Le Figaro誌「世界の才能ある30歳以下の女性30人」
- 2016年:DSA日本空間デザイン銀賞
- 2018年:「Pomellato for Women Award」 受2013
2015 Tranceflora – Amy’s Glowing Silk / エイミの光るシルク
2013 The Moonwalk Machine – Selena’s Step / ムーンウォーク マシン、セレナの一歩
2011 Crowbot Jenny / カラスボット☆ジェニー
スプツニ子! さんの小学校〜高校時代
スプツニ子! さんは、イギリス人の母親と日本人の父親をもつハーフで、両親共に数学者という生粋の理系家系です。
父親がUKのマンチェスターの研究室に赴任したとき、そこで研究していた母親と出会って結婚し、その後日本に移り住んで生まれたのが、スプツニ子! さんです。
小学校は普通に公立の小学校に通っていたそうですが、『宿題を忘れたら校庭でうさぎ跳び』『給食の牛乳を飲めなかったら飲み終えるまでクラス全員が立たされる』など、当時としては珍しい“昭和”な教育を受けたようです。(私も同時期を “昭和” が残る公立小学校で過ごしていますが、スプツニ子!さんの通った小学校は度が過ぎていますね。。。)
その後に通ったアメリカンスクールでは浮いたりしていてイジメにもあったそうです。そんな日本での青年期について、著書 “はみだす力(宝島社)(2013)” にて以下のように書かれています。
「枠に収まれずはみだしつづける自分を、いつも、もてあましてきた」。
そんな、スプツニ子!さんは、高校時代はコンプユーターギークで、髪型を角刈りにしていて、趣味の合う親友がツルツルの坊主頭の女の子だったそうです。(とても独自性のある高校時代を送られていると思います)
そんなスプツニ子!さんは、ご両親に負けじと、数学の才能を高校時代からすでに発揮し、日本のインターナショナルスクール選抜の数学大会で3度優勝をしています。
中学の代数で、XとYがでてきて劇的に面白くなったんです。小学校の算数は「タカシくんはみんなより15分遅れて出発しましたが……」とか、何か設定がややこしいじゃないですか(笑)。でも代数が出てきて「仮にXってことにしとこうぜ?」とすれば色んな世界が解けるのが刺激的でした。「仮に円周率はπ、虚数もiにしようよ」って展開していく広がりが、一気に楽しくなっちゃって。
アート界の異端児・スプツニ子!インタビュー。自由な生き方から学ぶ自分らしい未来の描き方
スプツニ子! さんの大学時代
スプツニ子!さんは、その数学の才能を武器に、高校を1年飛び級し、2003年に超名門の英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンに進学します。
飛び級した理由は、2年飛び級していた坊主の親友が高校を辞めてしまったことと、授業の内容が簡単すぎたからのようです。
私の中では、10分で分かるこの内容の授業に、何で1時間座ってなきゃいけないんだろうって気持ちもあって。
アート界の異端児・スプツニ子!インタビュー。自由な生き方から学ぶ自分らしい未来の描き方
インペリアル・カレッジ・ロンドンを卒業後は、プログラマーなどをしながら、音楽活動をしていたそうですが、その後、本格的にアートを学ぶために、英国王立芸術学院(RCA)へ。
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)は、修士号(M.A., M.Phil.)と博士号(Ph.D.)を授与する美術系大学院大学としては世界で唯一の学校で、全世界のアートの天才たちが集まる場所です。
にも関わらず、スプツニ子!さんは、デッサンの勉強などしたことはなかったので(数学とコンピュータ・サイエンスが専門ですから)、独自のアイデアをA4の紙5枚にまとめたものを提出して合格を勝ち取ったようです。
のちに、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートは、当時の学年で一番冒険をして合格を出した生徒だと言っています。
そんなRCAに合格したスプツニ子!さんを待っていたのは、決して楽ではない現実でした。
「周囲は美大卒の優等生ばかり。最初の1年は本当に苦戦して、何度も辞めようかと思っていました」
~人と違うことを強みにして~ スプツニ子さんインタビュー
全くの異分野に入って、ベテランたちの中に混じって、ゼロから積み上げる経験は簡単なものではなかったはずです。
私も自身の会社経験の中で、プロダクト・マネジャーから、ファイナンス/アカウンティングに異動した時は、全く違うフィールド、必要スキルの違い、周りの専門性とのギャップなどに苦労したことがあるので、少しは理解できるつもりです。
スプツニ子! さんの自分を信じ抜く力
スプツニ子!さんのすごい所は、自分を信じて、やる続ける力ではないでしょうか。
ロンドンで音楽活動をしていた際、YouTubeにミュージックビデオをアップしても、閲覧数は数百にとどまったり、など最初から成功していたわけではありませんでした。
しかし、両親の背中をみて育まれた「自分を信じ抜く力」が、のちの華々しい実績に結びついて行きます。
父親は数学の研究者なんですけど、10年以上、自分の研究を誰にもわかってもらえない時期があったらしいんです。それでも諦めずにひたすら研究を続けていたところ、ある日、キューバの脳科学者のおじさんからメールが舞い込んできた。それが、彼にとってはじめて自分の研究をわかってもらった瞬間だったみたいで、父はその日から現在までずっとキューバの研究者達と楽しそうにコラボして論文を書いてます。そんな姿を見ていたので、誰にも認められなくても、自分はおもしろいことをしているんだ、と信じてやりつづける気持ちが大事なんだなって思うようになりました。
スプツニ子!が伝える「人の発想が変われば、世界は変わる」
この自分を信じ抜いて、陽の当たらない時でもコツコツと努力を続けていくというマインドセットは、このiBizmanを立ち上げた当初から伝えてきたメッセージの一つです。
かの有名なスティーブ・ジョブズもこう言っています。
*訳
スティーブジョブズ: 2005年 スタンフォード大学 卒業式スピーチ
先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何らかの形で点がつながると信じることだ。何かを信じ続けることだ。直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。この手法が私を裏切ったことは一度もなく、そして私の人生に大きな違いをもたらした。
*原文
スティーブジョブズ: 2005年 スタンフォード大学 卒業式スピーチ
you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.
今、その時にうまく行っていない時でも、腐らずに、もがいて、あがいて、動き続けることで、あとになってから、それが布石となって繋がって来るものです。
それが何年後になるのかはわかりませんし、もしかしたら、死後の話かもしれません。
でも、それをやらないと、成功する可能性はゼロパーセントです。
そのためには、自分を信じ続ける力が非常に重要なのです。そして、成功している人は皆、この自分を信じる力を持っています。
我々ビジネスパーソンこそ、この自分を信じてやり抜く力が大事なのだと思います。
スプツニ子!さんの、コンセプト思考と人を巻き込む力
スプツニ子さんは、自身の強みを、「ジェネラリスト」「つなげるスペシャリスト」と表現されていますが、これは現在の複雑化した社会・経済下で、大きな課題を解決する時には、必須と言ってよい能力だと私は考えています。
一人の力ではできることは限られますが、複数の専門家を巻き込んで、その英知をつなげることができると、大きなムーブメントを起こすことができます。
最も大切なのはコンセプトであり、最初から「次はどんな映像にしよう」「どんな音楽にしよう」という手段ありきでは考えない。そしてコンセプトが決まったら、それを実現するために、その手段のスペシャリストたちとコラボレーションして、ベストな方法でつくり上げる。私は美大を出ていないから絵が描けないし、映像も素人、音楽もプロとはいえない。何か1つの分野のスペシャリストではない。でも、それぞれのどこが面白いのか、ジェネラルに知っていて、つなげることができる。つなげることに関してはスペシャリストだ。
スプツニ子!的、「盛大な失敗」のススメ
注目するべきは、色々な分野の専門家を巻き込んで、同じ方向に動かしていくには、強烈なビジョン、人間性、そしてリーダーシップが必要な点です。
私も、プロダクト・マネジャーをやっている時に痛烈に感じたのは、色々な専門家たちの意見を理解し、そして、数十人の専門家たちを同じ方向に向かわせるマネジメント・リーダーシップの重要性でした。
そして、これを実現する前提として必要なのは、色々な分野を理解し、それらを組み立てるコンセプト思考でした。
何かの記事に、スプツニ子!さんは、映画監督みたいだ、という表現がありましたが、色々な専門家たちを集めて、同じ作品を作っていくという意味で、的を射ていると思いました。(プロダクト・マネジャーも監督とか指揮者とか言われますしね)
これは、スプツニ子さんのようなアーティストに限らず、企業で働くビジネスパーソンにとっても、大事な考え方・能力だと確信しています。
逆に言えば、このコンセプト思考と、人を巻き込む力がなければ、大きな付加価値を生むことができないので、企業の中で出世していくことはできません。(実際に、私の会社では、ここ最近、こういう力のない年功序列で上がってきたマネジメント層は、退職を余儀なくされています。)
スプツニ子!さんの独自性と差別化
スプツニ子さんは、2013年からマサチューセッツ工科大学(MIT)の助教に着任し、自身の研究室を持っておられましたが、この実績を成し遂げた理由を「人と違うこと」だと分析しています。
日本の古い組織は、自分と同じ方向性を持つ人材を求めますが、MITでは、『同じことをやる研究室は2ついらない』と考えるんです。恐らくMITの人は、『この若くて奇妙でエネルギッシュな、日本とイギリスのハーフの女性は、自分たちに想像できないことをやってくれるかも』と、私を採用してくれたんだと思います。
~人と違うことを強みにして~ スプツニ子さんインタビュー
日本の学校教育では、人と同じことが尊重され、あらかじめ答えが決まっているテストを受けさせられ、多くの場面で、”画一的な” 結果を求められます。
にも関わらず、ビジネスの現場に足を踏み入れた途端、「自分のオリジナリティーを出せ!」といういきなりの方針転換に出くわします。
それならそうと、義務教育時代からオリジナリティーにもっと重点を置いておけばよいのに、とつい思ってしまいますが、、(私は昔から人と違ったことが好きでしたが、無理して画一的なものに合わせていたので、損した気分です)
なにはともあれ、我々ビジネスパーソンも、人と違った経験、スキル、発想力、発信力、人脈、考え方、などなど、なんでも良いので、人との差別化を意識して、自分のブランディングをしていく必要があるのではないでしょうか。
人との差別化はすなわち、希少性に繋がり、希少性は価値に繋がって行きます。この辺りは、以下のキャリアパスでも触れていますので、興味がある方は読んでみてください。
まとめ:ビジネスパーソンにとって大事な3つのこと
いかがでしたでしょうか?
最後に、私が思う、スプツニ子!さんの凄い所を3つにまとめます。
- 自分を信じ抜いて、やり続ける力
- コンセプト思考と人を巻き込む力
- 自分の差別化ポイントの発信とブランディング
いずれも、我々ビジネスパーソンが企業の中で、付加価値を生み出し、成果を上げていくために必要な点だと思いませんか?