ストーリーテリングとビジネス、一見すると繋がりが見えにくいかもしれませんが、ストーリーテリングは、我々の仕事を強力に後押ししてくれます。
私がビジネスにおけるストーリーテリングに興味を持った理由は、プロマネをやっていた時の上司の言葉です。
『プロジェクトマネジャーたるもの、ストーリーテラーであれ』
何十人というプロジェクトメンバーを1つの方向に動かすのは簡単ではありません。
いくらロジカルに話しても、『言いたいことは分かるんだけどね、でも実際には私たちも私たちの都合があるし、、』という反応を受けることも少なくはありません。
そんな場面を多く経験してきた上司は、人の心を動かすには、ストーリーが大切だということを痛感していたのです。
その上司と仕事をして以来、私もストーリーの持つ力に関心を抱くようになりました。
そんな折、先日たまたまストーリーテリングのメリットを分かりやすく解説した記事(英語)を見つけたので、適宜抜粋しつつ紹介したいと思います。
ビジネスにおけるストーリーテリングの4つの効果とは?
ストーリーテリングのメリットとはなんでしょうか?
ストーリーを使うことで、我々は以下の4つのパワフルな効果を得ることがでぎます。
それは、
- 感情に訴えやすいこと
- 注意を引きやすいこと
- 信じてもらいやすいこと
- 記憶に残りやすいこと
です。
私の過去の苦い経験ですが、ロジカル思考が強い人に、真っ向からロジカルで訴えた時、『それは本当なの? エビデンスは?』 というやり取りでかなり消耗した記憶があります。
もちろん、ロジック自体は必要なのですが、人を動かしたいという目的を達成することを考えた時、打ち手は複数あった方がよいのです。
では、本題に戻って、1つずつ説明していきたいと思います。
1. ストーリーは感情に訴えやすい
みなさんは映画を見ている時に、緊迫感のあるアクションシーンで、手に汗を握った経験はありませんか?
または、ロマンチックなシーンに胸が高まったり、ホラー映画で怖くなったり、、、
私は感情移入しがちなタイプなので、こんな経験はしょっちゅうあります。(特に友情モノは弱いです)
映画などのストーリーを見たり聞いたりした時、実は、我々の脳はそれをリアルなものとして認識しています。
つまり、自分の体験として生理的な反応(ドキドキ、ワクワクなど)をするようになっているのです。
この生理的な反応というのは、言わずもがな、「感情」のことです。
考えてみると、感情は我々の日々の意思決定に大きく関わっています。
例えば、私たちが何かを買う時は、論理的に買っているようにみえて、本当のところは感情的な決断でモノを買っているということが数多くの脳スキャン画像で報告されています。
あまり認めたくはない事実ですが、我々は感情で何かを買った後に、後付けで論理的な理由を付け足していることが多いのです。
つまり、人の心を動かすためには感情に訴える必要があり、
その感情を動かす1つのパワフルなツールがストーリーテリングということです。
2. ストーリーは注意を引きやすい
ストーリーは、人の注意を引くのに適したフォーマットです。
というのも、ストーリーは我々の感情の中に「緊張」と「緩和」という濃淡を作り出すことができるからです。
例えば、数字と事実だけを淡々と見せられるよりも、ストーリーを伴って数字と事実を話された方が、濃淡があって、理解しやすくなるように。
では、なぜストーリーは我々の中に感情の濃淡を生み出すのでしょうか?
実は、ストーリーはオキシトシンやコルチゾールといった神経伝達物質を放出するトリガーになっていることが知られています。
オキシトシンは共感を司る物質です。我々がストーリーにどっぷり浸かるほど、物語の主人公に共感していくのは、このオキシトシンが関係しています。
コルチゾールはストレスを感じた時に放出される物質で、手に汗握るような緊張した場面で脳内に放出されます。
つまり、ストーリーテリングが人の注意を引きやすいのは、オキシトシンやコルチゾールなどの脳内の神経伝達物質の放出のきっかけを作り、人の感情を動かすからなのです。
3. ストーリーは信じてもらいやすい
私たちが子供に道徳を教える時に、昔話や童話を使うのはなぜでしょうか?
それは昔話や童話を使った方が、道徳や教訓を子供たちに移しやすいからです。
ストーリーの中のキャラクターが、何かを体験し、挫折し、または感動している時、実は我々も擬似的にそのキャラクターと同じ体験をしているのをご存知ですが?
例えば、新しいパソコンを買いに行った時、営業マンからそのパソコンの機能やスペックだけを教えられるよりも、『実は私も購入して使っているのですが、〇〇の機能などがとても役立っていますよ』というその人のストーリーを教えてもらった方が購買意欲が増しますよね?
これは、相手のストーリーを聞いている時、我々も自分の心の中で、自分が買った後に〇〇の機能が役に立っている状況を想像し体験してしまっているからです。
つまり、営業であれプレゼンであれ、相手を動かしたい時は、ロジカルに売り込みをかけるよりも、あなたの知識や体験をストーリーとして届けた方が、何倍も相手の心に届くし、相手もそのストーリーを信じてくれやすいということです。
4. ストーリーは記憶に残りやすい
みなさんは、「桓武天皇が平安京に移った794年」をどうやって覚えましたか?
私はウグイスが鳴いている平安京に桓武天皇が引っ越してしていく様を思い浮かべながら『鳴くよウグイス平安京』という語呂合わせで覚えました。
極論を言ってしまえば、語呂合わせもストーリーの一種とも言えるのではないでしょうか。(一連の流れを語呂という音感も加えて覚えやすくしている)
実際の報告として、「事実」だけよりも「ストーリー」として届けられた方が22倍も記憶に残りやすいと言われています。
つまり、ロジックと事実でガチガチに固めたものを左脳に届けるよりも、ストーリーで感情を司る右脳に届けた方がより我々の脳に残るということです。
興味深い事例として、記憶の達人の例があります。
20秒以内で52枚のカードの順番を覚えろと言われたとき、記憶の達人はなんと「ストーリー」を作って覚えるようです。
彼らはカードの順番に基づいてストーリーを組み上げ、そして、そのストーリーを記憶のとっかかりにするのです。
まとめ:ストーリーテリングは強力なメッセージ伝達ツール

いかがでしょうか?
もう一度まとめると、ストーリーテリングを使う最大のメリットは、以下の4つです。
- 感情に訴えやすいこと
- 注意を引きやすいこと
- 信じてもらいやすいこと
- 記憶に残りやすいこと
考えてみれば、今のように紙と印刷技術がなかった時代は、知識や情報はストーリーという形で、世代から世代へと受け継がれていました。
そう考えると、我々の知識や経験をストーリーとして伝達していくというのは、実はとても自然なことのように思いませんか?