みなさんは睡眠がなぜ大事なのか説明できますか?
よくある回答としては、寝不足だと仕事の効率が落ちるとか、風邪をひきやすくなる、等でしょう。
実はもっと根本的に重要な理由があるのです。
それは、睡眠は「うつ病」や「適応障害」などのメンタルの病気に密接に関わっている点です。
心が健康であることは、昨今のストレスフルな社会環境を生き抜く上で非常に重要な要素であり、それを支えているのは、睡眠、なのです。
この記事では、なぜ睡眠が大事なのか、という点を科学的な根拠も交えながら解説していきたいと思います。
そして、明日からの皆さんの仕事や人生に役立ててもらえれば幸いです。
では、行きましょう。
【筆者の事例】ストレス下で睡眠時間を削ると、何が起きるのか?
私は仕事で病みかけた時期があります。会社に入って3から4年目の頃だったと思います。
社内異動でプロジェクトマネジメントオフィスという部署に変わった時のことです。
今まで現場の一兵卒だった人間が、経験も知識もない状態で、部門のリーダークラス同士の部門横断的な調整や交渉をしないといけなくなったのです。
そんな大変な環境であったとしても、上司が部下に対して全面的にバックアップしてくれる体制であれば大丈夫だったかもしれませんが、、、
当時の先輩や上司は、「こんなことも分からないのか?」と詰めてきたり、教えてくれたとしても、やや呆れ顔で説明してくるような環境でした。
そして、他部門との会議の前で、叱責されることもありました。(いわゆる、ハシゴを外すとか、後ろから刺される、という状況)
当時の私は、どこにも味方がおらず「常に周りから危険に晒されている状況」と感じていました。
そんな環境下におかれたら、みなさんはどんな行動をとるでしょうか?
私は、もっともマズイ方法をとりました。
それは、自分の仕事の出来なさに嘆くあまり、このままでは今の仕事はクビになるだろうと思い詰め、会社を辞める覚悟で副業ビジネスを新しく始めたのです。
会社から帰ったら深夜3時まで副業ビジネスをやるという寝不足の生活を始めてから、3ヶ月ほど経ったころ、私にはうつ病の一部の症状が出ていました。
例えば、以下のようなものです。
- 人前でうまく話せない
- 人前で注目されるとパニックになる
- 滑舌が回らなくて、吃ってしまう
- 頻繁に動悸がして、心臓が痛くなる
- 人に興味や関心を持てなくなる
- 頭の中に霧がかかった状況になり、判断が遅い
- 食事にも興味が持てない。
つまり、私は多大なストレスに晒された時に、睡眠時間をギリギリまで削ってしまうという最もマズイ手段をとったのでした。
【科学的な根拠】睡眠とうつ病の関係性とは?
少し古いですが、2013年の研究で、国立精神・神経医療研究センターが睡眠不足で不安・抑うつが強まる神経基盤を解明したという報告があります。(参考リンク)
14名の健康な男性に5日間ずつ、熟眠セッションと寝不足セッションを行ったところ、睡眠不足時に不快な感情ストレスを受けると、熟眠時よりも扁桃体の活動が活性化し、不安や抑うつが高まるというものです。
我々の脳の中には扁桃体という感情を司る場所があるのですが、特に不安や恐怖という感情に深く関係しています。
そして、うつ病やその他の精神疾患では、この扁桃体の機能異常が報告されているのです。
睡眠時間をしっかり確保できていれば、この扁桃体が活性化しようとしても、それを止めるような自己コントロール機能が我々には備わっているのですが(免疫のような自己修復機能です)、睡眠不足の時には、この自己コントロール機能が弱くなるのです。
そして、うつ症状や不安症状が出やすくなってしまいます。
これは健康な人でも、寝不足が続くことで、こういったメンタルに影響のある症状が出てしまうということを示唆しています。
うつ病になった方は、その前に不眠障害が発生している事例も多く報告されており、睡眠が我々のメンタルヘルスに大きな関係があることは、もはや間違いありません。
睡眠の質と量は、高いストレスに対抗する自衛手段である
ストレスに対抗するために、どのように睡眠時間の質と量を確保していけばよいのでしょうか?
いくつかポイントがあります。
寝る時間帯と睡眠の質の関係
睡眠時間も大事ですが、それに加えて、寝る時間帯にも注意が必要です。
深夜4時に寝て、朝11時に起きても、なぜか寝不足で、体調も悪く、やる気も出ないという経験をしたことはないでしょうか?
これは深い睡眠をもたらしてくれるメラトニンというホルモンが関係しています。
メラトニンは朝起きて14~15時間経ってから分泌がはじまり、2~3時間後にピークを迎えます。
朝7時に起きたとすると夜12時ごろに眠気を誘導してくれるので、このリズムにそのまま乗れば、質の高い睡眠をもたらしてくれます。
つまり、普段7時に起きている人が深夜2時や3時まで起きていると、睡眠の質という意味でも大きな損失を出しているということになります。
光とメラトニンの関係
メラトニンは、光によって分泌が止まってしまいます。朝日を浴びるとメラトニンが止まり、スッキリ目覚められるのはよいのですが、夜にスマホのブルーライトを浴びたり、コンビニの光量を長時間浴びると、メラトニンの分泌に影響が出てしまい、睡眠の質が下がってしまいます。
私はしばしば、電気をつけっぱなしでソファーで朝まで寝てしまうことがあるのですが、睡眠時間は足りているのに、圧倒的に寝不足を感じることがあります。
これはまさに、メラトニンが影響していると言えます。
つまり、質の良い睡眠をとるには、寝る前や睡眠中は、なるべく光を浴びないようにすることが大事ということです。
以下の参考記事にも書いていますが、アイマスクもかなり効果的ですので、試してみてください。
音と睡眠の質の関係
睡眠中はなるべく静かな環境にすることが理想的です。
人間は寝ていても、脳の一部機能は起きていて、常に周りの情報を収集して、危険に備えています。
我々が大きい音を聞いたり、大きな揺れを感じたら、すぐに覚醒できるのは、この無意識下の脳の働きのおかげです。
できる限り脳を休ませてあげるのが、質の高い睡眠には重要ですので、周りがうるさい環境下であれば、耳栓などをして、騒音を遮断するのもよい方法です。
お酒は睡眠の質を下げる
懸命なビジネスパーソンの皆さんであればご存知とは思いますが、寝る前のお酒は控えた方がよいです。
お酒を飲めば眠りに入りやすくなるのは確かなのですが、睡眠は中断されます。
これは、アルコールが体内で分解されるときに発生するアセトアルデヒドが原因です。
アセトアルデヒドは、深い睡眠であるレム睡眠を阻害し、浅いノンレム睡眠状態を長くしてしまうからです。
アルコールは、睡眠全体の質を改善する役には立たないという点に注意が必要なのです。
自力で眠れなかったら、睡眠薬も一つの手段
どれだけ頑張っても眠れないという方は、睡眠薬を使うのも一つの手段です。
あまり薬に頼りたくないという方もいるかもしれませんが、放っておくと、うつ病などのメンタルヘルスに影響してくるので、早めに手を打った方が得策です。
睡眠薬の中にも、効き目が短時間のものがあるので、それらを使えば、朝寝坊することもありません。
むしろ、寝不足で、仕事中に眠くなってしまうほうが困ります。
最後に:ストレスを感じた時こそ、良い睡眠をとろう
いかがでしたでしょうか。
今回は意外と長めの記事になってしまいましたが、それだけ、睡眠が科学的な観点から我々にとても重要であることもわかって欲しかったので、まとめさせていただきました。
我々ビジネスパーソンが過酷な環境で生き抜いていくには、物理的な健康面に加えて、精神面のケアも非常に大事です。
そのためのキーポイントが、睡眠なのです。
余談ですが、私はこの記事執筆時点で、アメリカに赴任してきて2ヵ月が経った頃です。
慣れない人や環境、言語に文化、そして、日本にいた頃よりもハイプレッシャーな仕事と、かなりのストレスに晒されてきましたが、それでも病まずに生き抜けているのは、この2ヵ月間は、睡眠の量と質にこだわってきたからと言えます。
他にも、瞑想などの新たなメンタルケアの方法も使いました。
ぜひ、皆さんも、ストレス環境に晒された時には、まずは睡眠の量と質に気を使ってみてください。
きっと今までよりも楽になるはずです。