たとえ話や比喩をうまく使えると、スピーチやプレゼンテーションの説得力を飛躍的に高めることができる、という話を以下の記事で書きました。
とはいえ、たとえ話や比喩を考え出すのは、ちょっと面倒だと感じてしまう人も多いのではないでしょうか?
確かに最初は面倒だと思うかもしれませんが、コツさえ分かってしまえば、案外簡単に作れてしまうものです。
また、一度、作り方・コツを習得してしまえば、普段の日常会話から無意識にたとえ話や比喩が頭に浮かんで来たりします。
ということで、この記事では、たとえ話や比喩の作り方やコツを紹介していきたいと思います。(なお、本記事は私の経験則に基づく作り方・コツである点、ご承知置きください)。
たとえ話や比喩の作り方・コツ:ビットコインを事例に。
我々がたとえ話や比喩を作るとき、どのようなことを意識すればよいでしょうか?
とてもシンプルです。
以下の3つのステップを意識してください。
- 【具体化】より具体的に特徴を洗い出す
- 【抽象化】前面に出したい特徴を抽象化する
- 【検索】 同じ特徴を持つ別のモノを検索する
各ステップはのちほど詳しく説明するとして、まずは、ビットコインの事例のたとえ話を見てみましょう。何事もゴールイメージを持つのが先決です。
<たとえ話を使わない普通の説明>
<たとえ話を使った説明>
ビットコインとは例えると、金や銀といった貴金属のようなものです。金や銀はもともと誰のモノでもありません。掘り起こした人が所有者になります。そして、その埋蔵量も最大値が決まっています。だからこそ、希少性があります。
たとえ話を作るステップ1:より具体的に特徴を洗い出す
まず、ビットコインが持つ特徴を一つ一つ挙げていきます。このとき、なるべく専門用語は使わずに、一般的な言葉に置き換えておくのがとても重要です。
こうすると、次のステップで他のものとの共通点を探すときに楽になります。
さて、ビットコインを分解した結果、以下の特徴が出てきます。
- 日本銀行のような発行責任者がいない。
- ネット上で全取引の帳簿がつけられている。
- その帳簿は、大勢のボランティアプログラマーによって管理されている。(ブロックチェーンと言う)
- 帳簿管理を手伝うと新しいビットコインをもらえる。(マイニングと言う)
- ビットコインは、ネットワーク上でゼロから生み出される。(上のマイニングのとき)
- 発行量の最大値が決まっている。
- 現金に両替できる。
- 投機対象になっている。
- 対現金の価値が急上昇している。
- 現金よりも格安で送金できる。
- 送金は個人同士。銀行や証券会社は介さない。
- 日本人によって作られた仕組み。
ここまでがステップ1です。
たとえ話を作るステップ2:前面に出したい特徴を抽象化する
ステップ1で洗い出した特徴から、特に自分が前面に出して説明したい特徴を決めます。
幾つの特徴をピックアップするかはケースバイケースですが、多すぎると、それらと一致する他のモノが見つからなくなります。
迷ったら、まずは3つほど選んでおけばよいでしょう。
さて、ビットコインでは以下の3つにフォーカスすることにします。
- 日本銀行のような発行責任者がいない。
- ビットコインは、ネットワーク上でゼロから生み出される。(上のマイニングのとき)
- 発行量の最大値が決まっている。
この3つの特徴を持つモノを次のステップで検索していくのですが、このままではヒットしません。ですので、もっと抽象度をあげて、検索ヒット率をあげていきます。
例えば、以下のように。
- 誰にも管理されていないもの。
- 新しく生み出されるもの。
- 最大量が決まっているもの。
この特徴の抽象化までがステップ2です。
たとえ話を作るステップ3:同じ特徴を持つ別のモノを検索する
最後は、ステップ2で決めた特徴と似たような特徴を持つモノを探していきます。ここが一番試行錯誤するステップだと思います。
先ほど抽象化した特徴ですぐに見つかればよいですが、多くの場合、そんなにうまくいきません。ですので、少しずつ言葉を変えながら、検索を続けます。
例えば、以下のように、少しずつ言葉を変えていくと、どこかで自分の頭のデータベースにある “他のモノ” とヒットするようになります。
- 誰にも管理されていないもの。
- 新しく見つけられるもの。見つけた人の所有物になる。
- その数が限られている。
いかがでしょうか? ここまで抽象化すると、何か思い浮かんで来ませんか?
ここまで来ると、先ほどの金や銀のような貴金属という比喩が私の頭の中にヒットしてきました。
また、貴金属以外にも、「貴重な遺伝子を持つ生物」という生物資源や、未開拓の土地なども候補かもしれません。
他には、誰にも管理されていないという点では、深海にいる海洋生物なども使えますね。どこの国のものでもなく、見つけたもの勝ちの世界ですから。
これらの候補が見つかってきたら、あとは、スピーチやプレゼンの観衆に合わせて使い分けです。
例えば、生物学者が集まる学会やフォーラムなどで講演する場面であれば、
『ビットコインは、みなさんご存知の、貴重な遺伝子を持つ生物のようなものです。なぜなら・・・』
と言った方がより説得力が増すでしょう。貴金属という比喩よりも、「貴重な遺伝子」の方が生物学者の興味・関心を引けますから。
(図解)同じものでも例えるストーリーはいくらでもある
先ほどのステップ2では、ビットコインの以下の特徴に注目して、貴金属や生物資源にたとえました。
- 日本銀行のような発行責任者がいない。
- ビットコインは、ネットワーク上でゼロから生み出される。(上のマイニングのとき)
- 発行量の最大値が決まっている。
当然ですが、前面に出して説明したい特徴が変われば、使うたとえ話・比喩は変わります。
例えば、以下の3つの特徴を選んだら、どうでしょうか?
- 現金に両替できる。
- 現金よりも格安で送金できる。
- 送金は個人同士。銀行や証券会社は介さない。
ここに着目することで、ビットコインは「電子マネー」のように便利な使い方ができます、という全く違うメッセージを届けることもできます。
要するに、希少性という特徴に着目して貴金属/生物資源という比喩もできるし、
利便性という特徴に着目して電子マネーという比喩もできる、ということです。
図解すると以下のようなイメージです。
ビットコイン(赤)と貴金属(黄色)の共通点に着目すれば、『希少性』が言えるし、
ビットコイン(赤)と電子マネー(緑)の共通点に重点を置くと、『利便性』が言えるわけです。

いかがでしょうか。
ビットコインには様々な特徴があり、どのような角度から見たいかによって、見えてくるカタチは変わります。
要するに、ビットコインの何を伝えたいか? によって、見せたい姿は変わる(使う比喩は変わる)ということです。
これ、実は私たちのプレゼンテーションにも同じく当てはまると思いませんか?
一つの事実に対して、どういった角度から、どのように説明するかによって、そのストーリーは大きく変わります。
つまり、大事なのは、そのモノについて、私たちが何を伝えたいのか? ということです。
これなくしては、よいたとえ話・比喩を作れないことに注意してくださいね。
まとめ:明日のスピーチ・プレゼンでたとえ話を。
ここまでの内容をまとめます。
- たとえ話や比喩の作り方は3ステップ(【具体化】、【抽象化】、【検索】)。
- 【具体化】は、その対象の特徴を具体的に一つ一つ洗い出す作業。専門用語を使わずに、できるだけ一般的な言葉に置き換えることがコツ。
- 【抽象化】は、説明したい特徴を選んで抽象化する作業。あとで検索しやすいように、なるべく抽象度を上げた言葉にしておくのがコツ。
- 【検索】は、自分のデータベースの中で同じ特徴を持つモノを見つける作業。少しずつ言葉を変えながら、検索ヒット率を上げるのがコツ。
- 同じ対象でも、伝えたい内容が変われば、たとえ話や比喩は変わる。プレゼンと同じ。
- 何を伝えたいか?という軸がないと、たとえ話・比喩をうまく作れない点に注意。
いかがでしたでしょうか。
たとえ話や比喩の作り方・コツって、意外に書店にも並んでいませんし、センスのように捉えられがちですが、ロジカルに考えれば、それなりのものはできると思います。(私のような凡人センスでも作れていますから)
幸いなことに、我々はたとえツッコミを生業にしている芸人とは違います(笑)。瞬発力も、独創的なたとえも不要です。
シンプルかつ相手に伝わりやすいたとえ話や比喩ができれば、それだけで十分ビジネスで戦えます。
下手なフレームワークを使うよりも、たとえ話・比喩を使った方が、説得力が増すこともあります。
みなさんも、明日から、このたとえ話・比喩をビジネスに使ってみてはいかがでしょうか?
ビットコインとはインターネット上に存在する仮想通貨です。ビットコインは特定の誰かに管理されたものではなく、複数のIT技術を持ったプログラマーが管理し、価値・正当性を保証しあっているものです。ビットコインはネットワーク上でゼロから生み出されるもので、生み出した人が手に入れることができます。また、生み出せる最大値(2100万ビットコイン)が決まっています。